【完結】聖女戦記物語。結局、誰が聖女役?-魔法より武力と丈夫な体に自信があります-

ジェルミ

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第1部 新しい世界

第19話 夢見る少女

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「…シ様、…ケシ様、……タケシ様」

 う~~~ん。

 誰かが呼ぶ声がする。
 ふと目を開けると、何かを抱きしめている。
 そして甘い香りが…。

 またやってしまった!

 この世界は日の出と共に朝となり、暗くなったら一日が終わる。

 しかし日照時間が長い、春の今や夏の時期は一日が長いのだ。
 朝の四時前から明るくなり、その頃からみんな仕事に起きだす。

 そして俺もその頃に起こされ、11時くらいになるとお腹が減り昼食を摂る。
 だがこの世界の厨房事情は大変らしい。

 ガスコンロがないから、薪で火を起こす。
 だがら出来上がるまで時間が掛かる。
 作ってもらっているから文句も言えないけど。
 かと言ってTVやスマフォも無いから、ボ~としていると眠くなる。

 そして昼食を持ってきてくれるメイドのイルゼさんは、毎回寝ている俺を起こし寝ぼけた俺に抱き着かれている。

 分かっているなら、なぜ毎回抱き着かれているのだろう?
 悪いな、とは思うけど寝ている俺にはわからないからね。



「大丈夫ですか?」
「えぇ、すみません。なんだかボ~としてしまって」
「こちらこそ、毎回すみません。わざとではありませんから、許してくださいね」
 そしてしばらく沈黙が続く。

「イルゼさん、お願いがあります」
「あ、はい!」
 あぁ、ついにここで私は、押し倒されてしまうのね。
 香水の方?それともリアルな、私の匂いの方が良かったのかしら?

「騎士団の方の訓練を見たいのですが」
「え、え~、訓練ですか?」
「そうです。見るだけでも戦い方を、学べるかもしれないと思いまして」
 見るのと、やるのでは違いますよ。

「それにもう1本、剣も小ぶりな物をもらっておこうかと思いまして」
「えぇ、そうされた方がいいと思います。あの大きさではいざと言う時に、使いずらいと思いますから」
「つい持てるからと言って、見栄を張って大剣にしてしまいました。お恥ずかしい」

 昼食を食べた後、俺とイルゼさんは騎士団の訓練所に行った。
 ガスターさんに事情を話し、鞘付きのバスターソードを1本もらった。
 見栄を張るからだと笑われた。

 そしてしばらく騎士団の訓練を見て戻った。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   

 あっ、また振りほどけなかった。
 この私が。

 私達は極秘裏に国が運営する、『Hole of a tiger』という秘密組織に属している。
 
 小さい頃に捨て子を拾い礼儀や作法は勿論、戦闘や暗殺技術も仕込まれる。
 そして男は執事に女はメイドとして、各要人の側に仕えるようになる。
 特に私は戦闘力が高く、戦闘メイドや暗殺者アサシンとして鍛えられたのに。

 タケシ様の前では私は子ども扱い。

 そして無意識なのか毎回、私を抱きしめ首筋当たりの臭いを嗅いでいる。

 側付きになってから何度かこんなことがあり、同じ組織の年上の先輩に相談した。
 すると彼女は私に香水をくれたの。
 避けられないなら嫌われない様にしないと、と言って。

 そして他の狼獣人の先輩からも言われた。
 匂いは大事な物だと。
 
 同じ人の匂いでも、臭いと思えば相性が悪い。
 嫌いな人には特にそう思う。

 逆に興味のある人の匂いだったら、嗅ぎたいと思う。
 良い匂いだと思うのがさがだと。

 匂いは異性を引きつけるフェロモンだと。
 そして良い女はフェロモン香水が、無意識に出ているとも言われた。

 私はどうなんだろう?
 今日は香水を左肩だけに付けてみました。
 そして右肩はノーマルです。
 どちらの匂いが、あなたはお好きでしょうか?

 
 幼い頃から隔離された世界で育ったイルゼには、男性に対しての免疫がなかった。
 それが空想の世界へといざなう。

 そして今が絶頂の時期。
 
 だが、それも長くは続かない。
 
 いつまでも夢見る少女じゃいられない。
 
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 読んで頂いてありがとうございます。
 組織名を『寅さんの穴』から『Hole of a tiger』に変更いたしました。
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