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第1部 新しい世界

第7話 嘘

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「イルゼ、あなたは今からタケシ様の付き人よ」

 私の名はイルゼ。
 幼いころから戦闘訓練や躾を受け、王族をお側でお守りする仕事をしている。

  私はビッチェ王女様の部屋を出て、タケシ様の部屋に向かって歩いている。

 ビッチェ王女様はタケシ様をどうしたいのでしょう?
 巻き込まれて召喚され、戻すこともできない。

 そして何の伝手つてもないままこの世界で1人、生きて行かないといけないなんて。
 私なら耐えられるだろうか?

「イルゼ、あなたはタケシ様を呼びに行き、聖女様の部屋まで連れてきてちょうだい」
 ビッチェ王女様は聖女様を、落ち着かせるためにタケシ様に合わせるのね。

 トンッ!トンッ!

「失礼いたします」
 私はドアを開け部屋に入った。

「イルゼさん、どうしましたか?」
「実はタケシ様、タケシ様の側付きに私がなりました」
「それは良かった。イルゼさんなら大歓迎ですよ」
 ま、大歓迎だなんて。

「どうかしましたか?顔が赤いようですが、熱でも」
「い、いえ。大丈夫です。それとビッチェ王女様が聖女様の部屋に来るようにと」
「わかりました。行きましょう」

 私達は部屋を出て聖女様の部屋に向かった。

 部屋の前に着いた。
 トンッ!トンッ!

 部屋の中に入るとテーブルを挟み片方のソファに聖女様とビッチェ王女様。
 向かいのソファにはオバダリア様。
 そして聖女付きの侍女レーナが居た。
 レーナはまだ13歳。
 見習い戦闘メイドだけど、聖女様と年齢が近いからと側付きになった。

「タケシ様をお連れ致しました」
「ご苦労様、イルゼ。さあタケシ様お掛けください」
「はい、ありがとうございます」
 タケシ様はうながされ、オバダリア様の横に座った。




「さあ、聖女様。同郷のタケシ様が来ましたよ。お話しをされてはいかがですか」
「えぇ、確かに同じ国の人だわ。こんな場所に召喚されて心細かったの」
 聖女と呼ばれた中学生くらいの少女が話し出す。
 そして俺を見てニッコリ笑った。

「ビッチェ王女様、お聞きしたいことがあります」
「なんでしょう、タケシ様」
「聖女様を召喚して、どうしてほしいのでしょう?」
「お話をしたと思いますが、魔物を滅ぼしこの国を救ってほしいのです」
「では、そんな広範囲に広がった魔物を一人の人間が倒せるのでしょうか?」
「えっ」
 ビッチェ王女は驚いた顔をする。


 俺は聖女を見た。
 正確には聖女と呼ばれている女の子をだ。
 召喚された時は俺も気が動転しており、周りの状況が分からなかった。

 中学生の女の子、くらいの印象しかない。
 気が付いた時には、俺は別の部屋に連れて行かれたから。

 髪は肩に付かないくらいで、左から右に分け右目が隠れるくらい前髪が長い。

 だけど、どう見ても同郷ではない。
 なぜなら日本人に銀髪はいない。
 そして染めているようにも見えないからだ。
 では、この子は?


「あの、すみません。聖女様のお名前を教えてもらえませんか?」
 ビッチェ王女が慌てて、付け加える。
「タケシ様、こちらは聖女イルマ ・グライナー様。そして聖女様と一緒に召喚された本郷 武様です」

 イルマ・グライナーなんて日本人の名前ではない。
 ではどうしてこの子は、同郷なんて嘘をつくんだ。
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