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第5話 群雄割拠
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「ダリーナ様達はこれからどちらへ?」
「はい、南のサルベリア領で行われた領会議に家族で出席し、領に帰るところだったのです」
「どうして襲われたのですか?」
「政治的な事かもしれませんが、私には分かりません」
「そうですか」
女性はいつも政治面では蚊帳の外てことね。
ぐぅわ~!!
ぎゃあ!!
馬車の外で大きな声がする。
ドイアを開けてみると、襲った賊が護衛に殺されて行く。
まあ、そうなるでしょうね。
襲ったんだから。
そして何人かは自白させるためなのか、縛られている者もいる。
「うぅ~~~ん」
「あなた、気が付かれましたか?しっかりしてください」
どうやら男性が気付いたようだ。
私は後ろを振り向き馬車をドアを閉める。
「私はいったいどうしたんだ?!」
「あなた!気づかれたのですね!」
「おとう様ぁ~~!!」
「旦那様!」
「私は確か刺されたはずだ」
「えぇ、そうです、あなた。その血だまりがそうです」
馬車の椅子には血だまりが残っている。
向かいの席に男性を寝かせ、私達は馬車の中で立っている状態だ。
さすがに4人で立っているの辛い。
「ではどうして生きているのだ?!」
「この方が、ビッチェ様に助けて頂いたのです」
「ビッチェ様?」
「わき腹を刺されたあなたは瀕死で…。この方が魔法で治してくださったのです」
「な、なに、魔法だと?!」
「はい、そうです、あなた」
男性は私の前に跪く。
「こ、これは、私はダラクア領領主ダニロ ・ダイゲルト・ダームブルック公爵です。この度は命を救って頂きありがとうございました」
「なに、ほんの気まぐれです」
「き、気まぐれですか?」
「えぇ、そうです。たまたま居合わせ、あなた達側の味方をしただけです」
「それは、どう言う…」
「襲う側もなにかしらの理由と正義があるからです。私が味方をしたのは、ダリダ様の父を思う叫び声を聞いたからです。それがなければ傍観していたかもしれません」
「どうしてでしょうか?」
ダリダ様が聞いてくる。
「貴族だから誰かが助けてくれるとは、思ってはいけません。人は自分とは関係ない者のために命はかけませんから」
「それはそうですが…」
「庶民が頭を下げているのはあなたではなく、貴族と言う肩書にです。そしてその肩書が通用しない環境なら、貴族などただの人でしかありません」
「そんな…」
「お屋敷の中でしか、貴族間でしか肩書の効果なんてないのですよ。屋敷から一歩出たら何の力も無いただの人が貴族です」
「随分、貴族をお嫌いのようですな」
ダニロ公爵が聞いてくる。
「そうではありません。貴族とは国を導くものだと言いたいだけです」
「これは手厳しい。それでビッチェ様は、これからどうされるのでしょうか?」
「そうですね、まずは街に行こうと思います」
「街ですか、それなら我々と参りませんか?」
「そうですね。街までどのくらいでしょうか?」
「馬車で2時間くらいでしょうか?」
行くだけなら1人で行った方が早いな。
でもこの国の、いいえ世界の情報が欲しいわ。
「分かました。お願い致します」
「こちらこそ、ビッチェ様」
「ですがこの馬車で行くのはちょっと…」
「そうですな、では少し狭くなりますが、他の馬車に移りましょう」
そう言うと私達は馬車を降りた。
護衛の騎士の1人がダニロ様に近付く。
「旦那様、ご無事でしたか?!てっきり私は駄目かと…」
「あぁハビエル、私は無事だよ。このビッチェ様に命を救われたよ」
「戦士様にでしょうか?」
「戦士様?それはどう言う意味だ?」
「はい、恥ずかしながら私達が、弓兵に襲われている時に助けて頂きました」
「それは本当か?!」
「はい旦那様。何か光る攻撃が飛び、その後に物凄い剣技で…」
「そんなにか?」
「あれは噂に聞いた、魔法と言う物ではないでしょうか?」
「そのことは他言無用だ。他の者にも伝えるのだ」
「はっ、畏まりました」
「ビッチェ様は攻撃魔法もお使いになるのですか?」
「えぇ、ダニロ様。最初は魔法で動けなくしようとしましたが、接近戦になると魔法は不便で…」
「と、言いますと」
「辺り一面吹き飛ばすなら魔法は便利ですが、乱戦には向きません」
「だから剣もお使いになるのですか?」
「はい、多少ですが」
「多少ではありません。戦士様はまるで疾風のような動きでした」
私の名はダニロ ・ダイゲルト・ダームブルック。
レイトン国ダラクア領の領主だ。
数年に一度、叔母が嫁いでいる南のサルベリア領に家族で赴き、親交を深める行事がある。
その会議の帰り道、賊に襲われた。
私は馬車ごと、わき腹を刺され死を覚悟した。
そして気が付くと肩まである藍色の髪の少女がいた。
この少女が私を回復魔法で治したと言う。
だが数千年前に魔法は廃れ、使える人はほとんどいなくなっている。
まして回復魔法などと、あり得ない。
魔法で傷を治すなど夢物語だ。
だがあれ程、深かった傷が治りそして今まで以上に調子がいい。
まるで生まれ変ったように体が軽く力強さを感じる。
これが魔法と言うものか。
そして護衛に聞けば攻撃魔法も使え、剣の腕も良いと言う。
馬車を降りると賊が捕らえられている。
そして証人として数人だけ残し、後は連れて行くことは出来なので始末していく。
だがこれはどうだ?
馬車の左側に居た賊は生存率が高く、右側はひどい。
森が破壊しつくされている。
これはいったい?
戦いの状況を私はビッチェ様に聞いた。
どちらが正義なのかわからず、馬車の左側は手加減して1人づつ対峙したらしい。
だが右側は面倒になり、いっきに魔法で倒したそうだ。
意外とビッチェ様は大雑把なのかもしれない。
そして外見とは違い年齢よりも、落ち着いているように見える。
そしてこの国は今、群雄割拠の時代。
同じ国の内部同士で、そして他の国とも覇権を競い合っている。
このままでは我が国も飲み込まれる。
今回のこともサルベリア領と我がダラクア領の友好を反対する勢力なのか。
それともサルベリア公自身の手の者なのか…。
どこにも味方はいない。
そんな時だった、私が聖女ビッチェ様に出会ったのは。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
読んで頂いてありがとうございます。
「はい、南のサルベリア領で行われた領会議に家族で出席し、領に帰るところだったのです」
「どうして襲われたのですか?」
「政治的な事かもしれませんが、私には分かりません」
「そうですか」
女性はいつも政治面では蚊帳の外てことね。
ぐぅわ~!!
ぎゃあ!!
馬車の外で大きな声がする。
ドイアを開けてみると、襲った賊が護衛に殺されて行く。
まあ、そうなるでしょうね。
襲ったんだから。
そして何人かは自白させるためなのか、縛られている者もいる。
「うぅ~~~ん」
「あなた、気が付かれましたか?しっかりしてください」
どうやら男性が気付いたようだ。
私は後ろを振り向き馬車をドアを閉める。
「私はいったいどうしたんだ?!」
「あなた!気づかれたのですね!」
「おとう様ぁ~~!!」
「旦那様!」
「私は確か刺されたはずだ」
「えぇ、そうです、あなた。その血だまりがそうです」
馬車の椅子には血だまりが残っている。
向かいの席に男性を寝かせ、私達は馬車の中で立っている状態だ。
さすがに4人で立っているの辛い。
「ではどうして生きているのだ?!」
「この方が、ビッチェ様に助けて頂いたのです」
「ビッチェ様?」
「わき腹を刺されたあなたは瀕死で…。この方が魔法で治してくださったのです」
「な、なに、魔法だと?!」
「はい、そうです、あなた」
男性は私の前に跪く。
「こ、これは、私はダラクア領領主ダニロ ・ダイゲルト・ダームブルック公爵です。この度は命を救って頂きありがとうございました」
「なに、ほんの気まぐれです」
「き、気まぐれですか?」
「えぇ、そうです。たまたま居合わせ、あなた達側の味方をしただけです」
「それは、どう言う…」
「襲う側もなにかしらの理由と正義があるからです。私が味方をしたのは、ダリダ様の父を思う叫び声を聞いたからです。それがなければ傍観していたかもしれません」
「どうしてでしょうか?」
ダリダ様が聞いてくる。
「貴族だから誰かが助けてくれるとは、思ってはいけません。人は自分とは関係ない者のために命はかけませんから」
「それはそうですが…」
「庶民が頭を下げているのはあなたではなく、貴族と言う肩書にです。そしてその肩書が通用しない環境なら、貴族などただの人でしかありません」
「そんな…」
「お屋敷の中でしか、貴族間でしか肩書の効果なんてないのですよ。屋敷から一歩出たら何の力も無いただの人が貴族です」
「随分、貴族をお嫌いのようですな」
ダニロ公爵が聞いてくる。
「そうではありません。貴族とは国を導くものだと言いたいだけです」
「これは手厳しい。それでビッチェ様は、これからどうされるのでしょうか?」
「そうですね、まずは街に行こうと思います」
「街ですか、それなら我々と参りませんか?」
「そうですね。街までどのくらいでしょうか?」
「馬車で2時間くらいでしょうか?」
行くだけなら1人で行った方が早いな。
でもこの国の、いいえ世界の情報が欲しいわ。
「分かました。お願い致します」
「こちらこそ、ビッチェ様」
「ですがこの馬車で行くのはちょっと…」
「そうですな、では少し狭くなりますが、他の馬車に移りましょう」
そう言うと私達は馬車を降りた。
護衛の騎士の1人がダニロ様に近付く。
「旦那様、ご無事でしたか?!てっきり私は駄目かと…」
「あぁハビエル、私は無事だよ。このビッチェ様に命を救われたよ」
「戦士様にでしょうか?」
「戦士様?それはどう言う意味だ?」
「はい、恥ずかしながら私達が、弓兵に襲われている時に助けて頂きました」
「それは本当か?!」
「はい旦那様。何か光る攻撃が飛び、その後に物凄い剣技で…」
「そんなにか?」
「あれは噂に聞いた、魔法と言う物ではないでしょうか?」
「そのことは他言無用だ。他の者にも伝えるのだ」
「はっ、畏まりました」
「ビッチェ様は攻撃魔法もお使いになるのですか?」
「えぇ、ダニロ様。最初は魔法で動けなくしようとしましたが、接近戦になると魔法は不便で…」
「と、言いますと」
「辺り一面吹き飛ばすなら魔法は便利ですが、乱戦には向きません」
「だから剣もお使いになるのですか?」
「はい、多少ですが」
「多少ではありません。戦士様はまるで疾風のような動きでした」
私の名はダニロ ・ダイゲルト・ダームブルック。
レイトン国ダラクア領の領主だ。
数年に一度、叔母が嫁いでいる南のサルベリア領に家族で赴き、親交を深める行事がある。
その会議の帰り道、賊に襲われた。
私は馬車ごと、わき腹を刺され死を覚悟した。
そして気が付くと肩まである藍色の髪の少女がいた。
この少女が私を回復魔法で治したと言う。
だが数千年前に魔法は廃れ、使える人はほとんどいなくなっている。
まして回復魔法などと、あり得ない。
魔法で傷を治すなど夢物語だ。
だがあれ程、深かった傷が治りそして今まで以上に調子がいい。
まるで生まれ変ったように体が軽く力強さを感じる。
これが魔法と言うものか。
そして護衛に聞けば攻撃魔法も使え、剣の腕も良いと言う。
馬車を降りると賊が捕らえられている。
そして証人として数人だけ残し、後は連れて行くことは出来なので始末していく。
だがこれはどうだ?
馬車の左側に居た賊は生存率が高く、右側はひどい。
森が破壊しつくされている。
これはいったい?
戦いの状況を私はビッチェ様に聞いた。
どちらが正義なのかわからず、馬車の左側は手加減して1人づつ対峙したらしい。
だが右側は面倒になり、いっきに魔法で倒したそうだ。
意外とビッチェ様は大雑把なのかもしれない。
そして外見とは違い年齢よりも、落ち着いているように見える。
そしてこの国は今、群雄割拠の時代。
同じ国の内部同士で、そして他の国とも覇権を競い合っている。
このままでは我が国も飲み込まれる。
今回のこともサルベリア領と我がダラクア領の友好を反対する勢力なのか。
それともサルベリア公自身の手の者なのか…。
どこにも味方はいない。
そんな時だった、私が聖女ビッチェ様に出会ったのは。
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読んで頂いてありがとうございます。
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