上 下
1 / 17

第1話 転移?

しおりを挟む
『…チェ、…チェ、起きて…』 
『ねえ、起きてよ…』 

 誰かが私を呼んでいる。
 私は目を開け、身を起こして辺りを見渡す。
 長い穂が垂れる穀物畑の中の様だった。
 麦?
 では季節は夏?

 よく見ると私の顔の前に15cmくらいの、可愛い女の子が浮かんでいた。
 短めのベストを着て、赤色の長袖にショートパンツ。
 金色の長い髪と背中から上下左右2枚ずつ、4枚の透明な羽根を生やしている。

「ミリアちゃん、もう朝なの?」
『なにを寝ぼけているのよ!』 
「ここはどこ?」
『あぁ、もう』 




 仕方がないわね。
 私の名前は妖精フェアリーのミリア。
 半神の私は偉い神様になるため、日々、妖精の国フェアリーランドで勉強をしていた。

 そこで経験を積んで認められると、昇級試験と神様との面談がある。
 これが大変で受かると次の上位の神様に上がれる。
 それを何十万年も繰り返して、新しい世界を増やしていくのが私達の仕事。

 なぜなら終わる世界もあるから、新しい世界を創っていかないと。
 信仰する人が居なくなると、神様も存在理由が無くなるからね。

 そしてたくさんの世界を創造し、それを管理する人を育てる。
 それが妖精の国フェアリーランド

 そんなある日、美味しそうな膨大な魔力を感じた。
 私はつい、それに食いついてしまった。
 
 そして気が付いたら王女の国に召喚されていた。
 その国は魔物の数が増えて、国を挙げて討伐をしても倒しきれなくなっていた。
 おかげで国土間の流通が途絶え、食料も乏しくなる。

 瘴気しょうきと呼ばれる黒いものができ、そこから魔物が大量発生する。
 次元にほころびができていたのよ。
 その世界は比較的、魔素に満ち魔法が発達した世界だった。

 その世界の周りを包んでいた魔素がその世界に少しずつ浸透していた。
 それをその世界の人達が吸っている。
 だから魔法が使える人が居る。
 そしてそれが貯まると形を作り、魔石という核になり魔物になってた。

 ある日、今まで少なかった魔物が大量発生するようになった。
 世界のどこかに綻びができ、魔素が必要以上に入ってくるようになったから。


 王女の立場はその国では名ばかりだった。
 父親である第一王子には才がなかった。
 他に腹違いの2人の王子がいた。
 2人の王子には才能があり、王女の父親は凡人。
 そんな父親の後ろ盾になってくれる人は現れなかった。

 次の王になれなかった場合、今の王が亡くなったら愁いを断つために、残された王家の血を引く者は殺されるのが常だった。
 そして魔物を浄化するため、聖女召喚をして私が呼ばれた。
 父親を次の王にする実績欲しさのために。


 
 自国だけでも、と言う王女の頼みに私は条件を出した。
 私は半神なので特定の人だけに加担できない。
 やるなら全世界だと。

 王女は了承した。
 父親が次の王となり政権が安定すれば世界を周り、綻びを塞ぐ旅をすることを。
 そして王女は長い旅に備え、私の使徒として不老不死となった。
 何年もかかり私と王女は自国の次元のほころびを塞いだ。

 聖魔法でたくさんの人の病を治し、倒した魔物の肉を飢えた人達に配った。
 いつのまにか王女は聖女と呼ばれるようになった。

 その功績で父親も次の王となり、腹違いの2人の王子に忠誠を誓わせ補佐とした。
 それ以降から王になれなくても、王子は生き残ることが許された。
 そのため、次の王からは政権争いが少なくなった。

 王女の父親は確かに才はなかった。
 だが自分が出来ない分、人を信じ任せることで臣下は出世できる国になった。
 そして生まれや出は関係なく、才能があれば登用した。

 国には人が集まり、活気があり笑顔が溢れた。

 それを見届け王女は私と次元のほころびを塞ぐ旅に出た。
 そしてたくさんの街や国を回り、魔物を倒し肉を配った。

 時が経ち、どこの国も王が何度も代替わりした。
 その度に次元のほころびを塞は少なくなり、食べ物が豊富になり人々は幸せになっていった。


 しかし世界は広く何百年もかかってしまった。
 ようやく最後の1つとなった時、それは起こった。

 数多の魔物を倒した後、次元のほころびにやっと近づいた。
 すると瘴気しょうきがそこからあふれ出そうとしていた。
 まるで最後の出口から、早く出ようとするかように。

 私と王女で残った魔法を使い、最後のほころびを塞いだ。
 と、思った瞬間だった。

 ほころびが塞がる前に、強い力で弱っていた私達を飲み込んだのだ。
 逆らえない力だった。


 私達はほころびの中に閉じ込められた。
 王女はほころびの中では、魔素を浴び過ぎて死んでしまう。
 だから私の時空間魔法のストレージに、慌てて王女を収納した。

 ストレージはとても便利で、収納したものの時間を止めることができる。
 だから何万年経っていても、時間が経過していないから歳を取らないのよ。
 ここから出るまでしばらく眠っていてね。


 そこから何年、何百年、いいえ、もしかしたら何万、何十万年が経った。
 半神である私には大した時間ではなかった。

 そしてこの世界から脱出するために魔力を溜めた。
 次元を渡るほどの、魔力が必要だった。

 それから更に時は経ち、やっと魔力が溜まった。

『いくわよ~!!さん、に~、いち~、だぁ~~!!』
 私は何千年も掛けて溜めていた魔法を放った!!

 すると僅かに空間に裂け目が…。
 
 やった、今よ!!
 私は夢中になって、裂け目に飛び込んだ。




 そしてこの世界に転移してきたわけ。

 しかし私1人では…。
 王女とまた旅がしたい。

 どうやらここは、麦畑らしい。
 私はそこにストレージから王女を出した。

 フード付きの白いローブ。
 そして藍色の肩まである懐かしい髪。

 お帰りビッチェ。
 私は横たわるビッチェのおでこにキスをした。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 読んで頂いてありがとうございます。
 本作は『聖女戦記物語。結局、誰が聖女役?』または『【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-』のアナザーストーリーです。

 こちらから読んで頂いても、わかるように書いおります。
 よろしくお願いいたします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

異世界治癒術師(ヒーラー)は、こっちの世界で医者になる

卯月 三日
ファンタジー
ある診療所の院長である秦野悠馬は、ある日エルフの女と出会うこととなる。だが、その女の病気が現代医療じゃ治せない!? かつて治癒術師(ヒーラー)で今は医者である悠馬が、二つの世界の知識を活かしてエルフの病に挑み、そして……。 元治癒術師と元天使、エルフや勇者と異世界要素目白押しでおくる、ほのぼのたまにシリアス医療ストーリー。 某新人賞にて二次審査通過、三次審査落選した作品です。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

処理中です...