【完結】ご都合主義で生きてます。奥様は魔女(中二病)だったのです。-北の森の怠惰な魔女-

ジェルミ

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第7話 お約束

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 フェイが部屋を出て行った。
 私は考えた。
 私より小さい華奢な女が、サーベルウルフを素手で倒せるのか。
 しかも13匹。
 1匹でも無理だ。
 なぜなら骨は硬く、素手では簡単には折れないものだからだ。
 
 彼女以外の人が倒した可能性もある。
 でも素手ではやはり考えられない。
 鈍器で叩いたなら、潰れた痕が残るはず。
 でもそれがない。
 単純に全身の体中の骨が折れている。
 何かをぶつけたような倒し方だ。
 どんな倒し方なら可能なのか。

 そして自分の事を魔女とは。
 いや待って。

 そう言えば聞いたことがある。
 ジリヤ国東側のアスケル山脈を越えた、北東の大陸に魔族が住むという。
 魔族は人と変わらない外見を持ち、力が強く魔法に長けているという。

 それに彼女の持っていた大きな魔石が付いたロッド。
 それだけでどれだけの価値があるのだろう。
 今までに見たことも無いくらい、奇麗で大きな魔石だった。

 我々とは大きな山脈に阻まれ、行き来も難しく争いは無いと聞いているが。
 それなら自分の事を『魔女』と呼ぶのも分かるわ。
 魔族の女、と言う事よ。

 魔族なら、なぜこちらの大陸に?
 山脈を超えるのは、大変な事のはず。

 しばらく様子を見るしかないわ。
 刺激しないようにしないと。

 それが彼女の実力なら、私達では勝てない。



 まだかな~。
 3時間て何もしないと長いのよね~。

 私は市場を歩いている。
 冷蔵庫なんて便利な物は無いから、生の魚は少ない。
 そして干物が多いわね。

 海辺の街だから塩も豊富に使え保存食としても使えるわね。
 他の街に輸出している魚は日持ちが良い様に、塩分が高くて水分をできる限り飛ばした堅い干物ね。

 でも赤身の魚がないわ。
 刺身文化がないのね~。
 
 私は店の人に聞いてみることにした。
「おじさん、赤身の魚はないの?」
「赤身の魚かい?お嬢ちゃん、あんな脂っこい魚を食べる人なんて、ここら辺じゃあいないよ」
「でも捕れたらどうしてるの?」
「持って帰っても、買う人はいないから海に捨ててるみたいだね」
「もったいないわ、せっかく捕れたのに」
「仕方ないさ、買う人が居ないからね」
「そうなんだ、これはなに?」 
「それは干し肉みたいに赤身の魚を燻製にしたものさ。でも美味しくないがな」
「これ、ちょうだい」
「こんな不味いものを食べるのかい?長旅でも行くのかい」
「いいから、ちょうだい」



 私は市場をぶらつき、時間前に猟師組合に戻って来た。
 壁の掲示板には、狩猟依頼が貼りだしてある。

 魔物より魔獣が多いわね。
 素材よりお肉、食料が欲しいという事ね。

 
「おい、ねえちゃん。何やってるんだ?」
 でも見つけようと思っても、見つかるものではないから難しいわよね。
「おい、聞いてるのかよ!」
 罠を仕掛ける、て手もあるわね。
「無視してんじゃねえよ」

 パンッ!!

 パメラの尖がり帽子が跳ね飛ばされた。

 銀色の髪の毛が宙を舞う。

「なにかしら?」
 キタ~~!!
 お約束よ、テンプレ。
 私は帽子を拾いながら、思わずニヤけた。

「なに、嬉しそうな顔をしてるんだよ。この女は」

 そこには筋肉ダルマ1人と、後ろに連れの男達が2人いた。
 そして受付のフェイさんが、慌てるように二階に上がって行く姿が見えた。
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