苦い想いを吐き出して、幸せを夢みる

ある男、ハヤシの独白 ─ その一 ─

　第一印象？　あの人の？
　悪くなかったけど、良くもなかったかな。嫌いというのはなくて。
　はっきりモノ言うから、姐さんついていきます、って思わせる何かがあったかも。
　なんで会うようになったか？　それ、あの人言わなかった？
　気分転換でカラオケ行きたい女いるって、俺の知り合いから紹介されてさ。奢りだとかでラッキー！　って思って。あわよくばなんてのは、全くなかった。その時は年上は恋愛対象外だったし、それに、さ？知ってる？　あの人、人妻。うん。だから、ちゃんとわかって、距離もおいてたさ。
　意識したのはいつか？　それは、うん、いつだったかな。あの人が弱って、泣きそうになって。電話越しに。辛いって言うから、気分転換でドライブ誘ってさ。そしたら、肌寒いのに薄着で俺を待ってた。
　適当に車走らせて、どっかで車停めて、あの人の事情、全部聞いてた。強がって涙こらえるもんだから、つい、抱き寄せて、キスを。
　好きになっていたのか、よくわからないけど。なんとかしてあげたい、少しでも元気になってもらいたい、安らげる場所でありたい、って、そんな感じだったか……。
　深い関係になったのは、それから割と早くて、うーん。
　あの人、意外と照れ屋でさ。抱き寄せたら、顔真っ赤にして、すごく、そそる、やばいよ？
　会いたいときにすぐ会えない、遠出しないとそこらのラブホには行けない、いろんな不自由あるけどさ。良くないのわかるけど、先を考えなきゃとかより、今のあの人が壊れないように、俺がいてあげるしかないのかな。間違ってんだけどさ。
　今はそんな感じ。辛いよ。