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第二章 15歳、学術学院魅惑のイッチ年生時代

忘れて仕舞えば楽になる? んな訳あるか。

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『親不孝と地獄に落ちるも、「星」となった愛娘。
 然しそんな彼女だって、嘗ては"普通"であれたのに』

生まれ環境や育ちの違い。失わなければ、人は気づかないと言うけれど。
マァ、誰しも自分の世界カチ観を持ってるからね。
……ただそれでも、少なくとも、『私』は。


『だから? だから、なんです……??』

———仮にも"先達"として、何事もハッキリ仰ってくださいませんと。

「生まれながらの蛮族、田舎生れの田舎育ち、『たかが小娘』風情でごめんあそばせ?」

ただ、それでも思うに。

「……あの、先ほどからどこを見てらっしゃるのです?」

至極当然かの様な鈴の音が、こてん、と小首を傾げた。

「ああ、そうでした」

今思い出したかのように、歌いながら。
然し、いくら"あなた方"から見たわたくしが。と、口遊む。
彼女は。

「北に構える屋敷や領から出てこれないような醜女しこめ。でなくとも 態々 大勢集う"このような場"に呼び出した。お互い、向かい席ですのに……」
「——————」

いや、は二度と、「当たり前」を永遠と履き違えたくないだけ。
私自身の為に。
……そして、今となってはどれほど『星』に願えど、もう二度と会えない「   」の為に。

死人に口なし。

例えそれが意図せずも。
若しくは、"ただ運が悪かった"だけであろうと。

「ですから、いくら私が公爵家の娘とは言え、たかが、このような小娘相手。少なくとも『私』は問題視いたしません。……折角このような場をご準備なさったのだから、おっしゃりたいことは、"言える時"に言わなければ———ねぇ、そうでしょう、伯爵?」

でしたっけ。

「あなたの爵位くらいは」

……考えたところで、どうしようもない。やり場に困る感情は、『放置』に限る。
何処かワザとらしくも、見るから申し訳なさそうなに眉を下げて、オフィーリアは続けた。

「ごめんなさい。ご存知のように、なんせわたくし、今まで一度も都に赴いたことのない、生粋の引き籠りですから」

なので、多少の無礼を働いても、ご愛嬌。

「どうか、寛大な心で目こぼし、してくださいましね?」

———というのも。
だって、

「だって、いくら互いの、があるとは言え。まさか伯爵も、ご自身の娘と同い年の 小娘 相手に一々腹を立てたりしませんよね? たかが成人したばかりの世間知らず、子ども相手に、大の大人であろう方が、まさか……」

まさかもクソも、そのようなこと……(੭ ᐕ))??

「貴族である以前に、人として、それも自身の子を持つ親として、ない。と、信じてます」

ね?
少なくとも、わたくし側、は。

「ですが、実際、先ほどまでのご発言を聞いていると……その辺りどうなのでしょう、伯爵? だって伯爵……そして、はただ『此度のダンジョンの件』でわたくしと"お話合い"したくて、呼び出した」

だのに、まさか。

「……まさか、いくら北の星とされる公爵家アストライヤの娘とは言え、国法で成人したばかりの15歳。先日起きた 子ども同士 の一寸した誤解ならいざ知らず。まさか———」

まさか。

態々、

この様な場まで設けて、

たかが小娘に恥をかかせようと、

「大の大人である方、方々が」

そんな現場。
そんな集い。

そんな中、とりあえず、今言えるのは。現場の玉座からストップがかからないのを良いことに、オフィーリアは不思議そうに……。
また、すぐさま少し可笑しそうにおどけるも、変わらぬ理路整然とした口ぶり、目を細めた。

そうやって、本日の「わたくし」は此度の対戦相手に向かって、可能の限り幼い表情を作り、微笑みかけながら。

「……伯爵方が、まさかその様なこと。本来子供を守るべき立場、大人が幾人、それも殿方がこうも寄ってたかって、ご自身の娘と同い年の女の子を『いびる』」
「ッ、」
「だなんて、まさか……その様なこと。で、ございませんか? 、普通の娘なら怖がって当然となる場。そう怖がってるのを良いことに、例えダンジョンでなくとも、譲渡に対する対価の提示もなく、ないまま『搾取する』、しようとする」

しようとした。

「そんな倫理観も生産性もないことをするために。二重謹慎最中、待機中のわたくしを、呼び出した」

だなんてこと、いや、まさか。
まさか、流石に……(੭ ᐕ))??

「ない。———と、信じておりますから」

だって、何しても許される、許せる、許すしかない。

「その様な愛らしい、赤子時代でもあるまいに……。少なくとも、『私』はそう信じたいです。ね、ですから、伯爵?」

これ以上、お貴族様以上の"大人として"問題あり、笑えない「笑い話」が起きてしまう前に!

「此度のダンジョン攻略に対し、"本来すべきお話"、続けても? 確かに此度わたくしが踏破したダンジョンは中央の地に属する。なので、伯爵、あなた方が、ご自分たちの権利を主張するのは、ご自由にどうぞ」

ですが。

「ただでさえ四季の中でも随一と言っていいほど、各方面で忙しくなる春。このような時期に、こんな場まで設けて、こんな場だからこそ———伯爵が"我々中央"と名乗る」

だなんて。
………………('ω')

「……まぁ、これが生れながらの環境、土地柄の違い。というモノでしょうか、ご教授ありがとうございます。なら、今も失礼あれば、ごめんなさい?」
「…………」
「わたくしも戦いに明け暮れる、教養に乏しい、野蛮は蛮族なりに、もう少し"あなた方の謳う中央の作法"とやらを学んでから、お呼ばれされるべきでしたのに」

もう少しで本日の"戦装束"が、"本当の戦装束"になって仕舞うところでした。
後は、この手の話にうちの野郎どもは、まるで使えないと判明しただけ。
それこそ、何せ『山』を越えた先に新たな山ができている。公女という席であろうと日々仕事三昧、時間がまるで取れなくて……(´•ω•`)

「ですから正直、羨ましいです。わたくしも趣味に費やす、読書の時間くらい確保したいのに、それすら叶わない。だからこう、余計な仕事や集会を増やされると……」

ですが、まぁ。

「こうして、またとない機会、お呼ばれされたからには、致し方ありません。その辺りはですから……皆様には関係のない失言おはなしでしたね。失礼いたしました」

なので、今のはどうか、お忘れくださいな。

「折角、ただでさえこの様な場ですのに。一家門を背負う、当主である伯爵に向かって、お恥ずかしい。『たかが小娘』から零れた情けない愚痴だと思って、聞かなかったことにしてくださる?」
「…………」

そして、ある意味"本題"かもしれないお話。こうして折角整えていただいた、このような場をお借りして……。

「その辺りに付きましては、以前の夜会でのコトも含め、本当に申し訳ないと思ってます」
「…………」

けれど、それはそれで、これは今。

「とも、思って仕舞って。……ただ、大の大人。それも 伯 爵 ともあろう 殿 方 が、」

たかがの理由で、

「まるで幼子の癇癪のよう。ご自身の娘と同い年の小娘の戯言なぞに、一々腹を立てる」

なーんて。

「まさか。そんな、まさか、どちらが子供なのか分からなくなる、稚拙なこと……他でもない国の顔、心臓みやたる中央、伯爵ともあろう方が」

ないですよね。
万が一にも、その様な考え 御 座 い ま せ ん よ ね (੭ ᐕ))??

「なんせわたくしは世間知らず、この地の方々あなたがたからすれば、余所者です。ですから、そのまま、受け取った言葉・態度のまま信じますよ? だって、例えて言えば、いくらわたくしが目の上のたん瘤、出る杭」

とは言え、

「流石に……ね」
「…………っ、」

と、本日。
とりあえずこうして温まる、この勢いBig waveのまま、オフィーリアは。

———が、然し。

そう此度の『オフィーリア・アストライヤ公爵令嬢』。
実に今生の身からすれば、本来の役職である公爵令嬢というフラグポジまでが名の一部である、本日の「わたくし」が殊勝な柳眉から一変。
今度は前世愛用していた某メンダコスタンプの様な、それこそ浮世の汚れを知らない、赤子の様な無垢で無駄にきらきらした瞳を象れば。

が、然し、現実世界での視界に白旗が見えないので、試合続行。
……だって、コレでもからして、思うに。

(死ぬか生き延びるか、明確な勝敗イロが決まるまでが決闘)

これぞ、正しくファンタジーあるある、剣の代わりに言葉を用いる、御前試合なるものである。

(からして……そもそも、そっちからいちゃもん付けて、こんな場面に呼び出したクセに……)

だいぶ前から、眼すら合わせてくれない。そんな本日の現場に———実はオフィーリアも困惑していたりする。
もうほとんど覚えていない記憶もやの中、恐らく今真正面に座すオジサンの娘である、先日の夜会で出くわした"お嬢さん"に引き続く、此度の『対戦相手』。
先ほどからどれだけ討てど、うんともすんともしない、向かい席の輩どもに対し。

(こちとら念には念をと、考え得る全ての対話シミュレーションをしてきたというのに、つれないことだ)

凡そ3日前となるあの時も、一度述べたことがあるが。"この手の場"であろうと、こうもだんまりされると、逆に困る。

(このような現場から、まだまだお送りいたします)

というか、お送りすることとなりそうです……。
呼び出しておいて、こんなコトあっていいのか、この世界では。
先ほどから黙秘権を行使する相手に、かの有名な「鳴かぬなら」がまるでよくあるゲーム選択肢のように三句共々頭に並ぶ、違法滞在させていただいてる人。

ではあるが。

(少なくとも、そんなアタイであろうと)

今もこうして、迷惑行為ばかり繰り返す。そんな向かい席のオジサン達に更なる無礼講追い討ちを見せつけるべく、蘇れあの日失いし純粋無垢。オフィーリアはメンダコベイビーの瞳を向けた。

———それこそ、


「ですから、ね? 伯爵? そもそも、あなたや、あなた方は仮想す、んむぅ……」

る敵を……と、突如遮られた言の葉。

何度も言うが益を上げる分だけ、害も被ることとなる。
ある意味今生からの業であり、生きていく上での弊害でもある。
それこそ、本人からしても…

『…もし、万が一。私が勢い余って、"本当に不味い"ことを口走りそうになりましたら、殴ってでも止めてください。自覚があろうとなかろうと、ハンムラビの精神に基づき、倍返しに痺れ、時折りリメンバー、若しくは9……兎に角"その手の"テロ染みた思考回路になる。 自 爆 時の自分を、私は止めれた試しがありません』

と述べ、言わしめるほど。
このような場、相手であろうと「私、知ってる」から来るアドバイスを、オフィーリア違法滞在ナウ。
……うちのちまいのが、おポロリ申し上げそうになった、途端。

所かまわず、周囲の空気も気にせず、今日も無礼講。アタイの独壇場であるヤツの口を、横から伸ばされた手が優しく覆った。

「公女。いくら全て反論のしようもない『真実』だとしても、世の中にはえぐり返していい話と、繰り返し過ぎると凶器でしかない言葉があります。……もうやめて差し上げてください、このままでは死人……は、もう大分出てますが」
「…………」
「これ以上、収集付かなくなる。出さないためにも、もうこの辺りで一度終止符を、どうか此度の本題に」

とどのつまり、例え"その様な方針"でこの戦場ステージへ赴いた。

とは言え、ただでさえ鳴る前に挫かれた向かい席ゴング相手に、かっ飛ばし過ぎる姿勢を見せつける我らが姫を誇らしく思う反面。
いい加減にしなさい、屍を弄ぶような、殺人は犯罪なんだぞ! とも思う。

それこそ、先ほどからこの度の多重戦犯当人の口から幾度も出てきた、この世を生きる 大の大人 として……。

(これだから、うちの『通り魔おホシさま』は……)

思わぬ幸運に激やば息子を押し付けれた代わりに、運悪く? 本日の立場上最も近い席に座していた、旦那のパパ。
あのレオくんに遺伝子提供したパパですら、いくら敵対勢力の自業自得であろうと、余りにもの仕打ち~過剰追い討ちに同じ大人以上の男、雄として看過できなくなった。

———何より、今日も今も頭に過っておりはる。

『もし、俺の娘に……(以下省略)』

誰かの声。保護者たちの祈りも虚しく……まぁ、初めから諦めていたけれど、より一層。

「………?」

確実に厄介な輩共に目を付けられちまったであろう、うちのちまいの。
此度の現場について。

『……………』
『公爵様?』
『何だか嫌な予感が、あの子供うちのちまいのがまたヤラカシている気がする……』
『ああ、今日ですからね、例の会議。……そんなにご心配でしたら———』

実は、だいぶ初めの方から向かい席だけでなく、会場中に座ったままの屍が散布していたけれど。

(ああ、なるほど。これが予々かねがね聞きしに及ぶ、血を見ない拷問、人の精神が崩壊する瞬間か……)

ここまで来れば、こちらも逆に冷静になってきた。
……でも、思わずそう現実逃避したくなるほど、惨たらしい。声にならないほど傷つけられた、いじめっ子たちの末路。
息子嫁の口を塞いだまま、レオパパは ニコ… と微笑んだ。

雪国じもとの女はこうでなくちゃと思う腹の裏、余所様の領土では問題しか残らない。
(海を越えるどころか、今や向こうが)異世界からの問答無用。
現代的に表現するなら、これが生れてはじめてコロンブスおじさんを見たインディアンの気持ちに近しい感情なのかもしれない。

(……毎度の事ながら、これは、ひどい)

それだけ昔から、このちまいヤツの「普通ワンポイントスパイス」は、世の原住民共にとって猛毒でしかないのである。
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