この世界のスキル・アイテム“オリガミ”の秘密は僕だけが知っている

みけの

文字の大きさ
上 下
10 / 27

前兆①

しおりを挟む
 鏡の前で、何度目かの身だしなみ点検をする。
一張羅のスーツに埃も汚れも、ない。髪型は、綺麗に整ってる。花束と招待状、持った。プレゼントのブレスレットは、キチンとラッピングされている。リボンの処にオリガミで作った花も添えた。
「アンタって、本当にマメよねぇ」
 いつの間に来たのか、姉さんが僕に呆れたような目を向けていた。
「それにその花、また持って行くの?」
姉さんの言う“花”は花束じゃなく、オリガミの花のことだろう。
「だってこれ、今までで保って1年だったろ? 前のはもう、ないだろうし」
替えが必要だと思うんだけど。
 僕が言うと、姉さんはなぜか不服そうに口をへの字に曲げ、
「……どうだかね……」
独り言のように呟いた。


 姉さんはどうもマリアが気に入らないようで。……マリアも姉さんが苦手だ、って言っていた。
 物怖じしないコミュ強のマリアと、学者肌で交際範囲の狭い姉さんは正反対だからだろう。僕たちが結婚する頃までには、多少でも緩和されていて欲しいと思っている。
っとと、いけない。こんな事をしていたら遅れてしまう。
今日はマリアの誕生日パーティだ。婚約者の僕が遅れるわけにいかない。
 「じゃあ、行ってくるよ姉さん」
「いってらっしゃい。……私の誕生日には、百合をよろしく」
 ちゃっかりリクエストされてガク、とずっこける。
百合、かぁ……。難しいんだよなー。

 オリガミで作ったものの中で、僕には最も必要のない効果だったのが花だ。
 取りあえず前世で作った覚えのあるので薔薇や水仙、百合等と作ってみた。
すると……。
“所有者の手により“華やぎ(小)”が具現化しました”
“所有者の手により“潤い(小)”が具現化しました”
“所有者の手により“清楚さ(小)”が具現化しました”
 という、メッセージ。……イメージを変えられる、って事だろうか? なら潤い、って言うのは……?
僕は男だし、俳優を目指す程の美形でもないからどれもあってもいらないものだ。そう言ったら母さんが『なら、私にちょうだい』と言ったので、取りあえず水仙をあげてみる。すると翌朝、母さんが興奮して僕の部屋に飛び込んできた。
 僕も驚いたよ。まさかあんな事が出来るなんて。
 でも、その時はまだスキル1だったので、直ぐに効果は無くなってしまった。
女性が喜ぶんなら、とマリアにも、誕生日の度にあげている。――効能については言わないで。
何故か母さんや姉さんが『マリア(ちゃん)にスキルの詳しい話はしない方が良い。結婚するまでで良いから』と言われているからだ。
 確かにこのスキルは謎ばかりだ。僕自身、研究はしているけどまだ底知れない部分はある。
 下手な事は、言わない方が良いだろう。だから……罪悪感はあるけれど、マリアにはスキルについては話していない。


 「カヤラ! よく来てくれたな」
「おじさん、お久しぶりです」
 伯爵邸に着いた僕を、真っ先に迎えてくれたのはナルシト伯爵だった。
マイク・ナルシト伯。マリアのお父さんで、父さんの友達。おばさんが派手好きなのに対し、おじさんは地味だけど品のあるスーツを着ている。
 邸内はお祝い仕様の飾り付けがされていて、パーティ会場の広間には招待客がチラホラと見える。僕はキョロキョロしながら、
「マリアはどこですか?」
と訊いた。
「そ……それが……」
 と、急におじさんは、何故か決まり悪そうに目をそらし、言葉を濁す。
その時……。
「ふふっ、イヤだわ~ユーリったら、冗談ばっかり!」
「冗談じゃないぞ、マリアは誰よりも美しい」
「……殿下、マリアを困らせてはいけませんよ」
「そうだぞユリアス! 臆面も無くそんなセリフを言うな。……でも、まぁ……マリアならしゃあネェか……」
楽しそうな声が聞こえる。と思ってそちらを見てみたら


 そこにはマリアと、マリアを囲む3人の少年達がいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転移したよ!

八田若忠
ファンタジー
日々鉄工所で働く中年男が地球の神様が企てた事故であっけなく死亡する。 主人公の死の真相は「軟弱者が嫌いだから」と神様が明かすが、地球の神様はパンチパーマで恐ろしい顔つきだったので、あっさりと了承する主人公。 「軟弱者」と罵られた原因である魔法を自由に行使する事が出来る世界にリストラされた主人公が、ここぞとばかりに魔法を使いまくるかと思えば、そこそこ平和でお人好しばかりが住むエンガルの町に流れ着いたばかりに、温泉を掘る程度でしか活躍出来ないばかりか、腕力に物を言わせる事に長けたドワーフの三姉妹が押しかけ女房になってしまったので、益々活躍の場が無くなりさあ大変。 基本三人の奥さんが荒事を片付けている間、後ろから主人公が応援する御近所大冒険物語。 この度アルファポリス様主催の第8回ファンタジー小説大賞にて特別賞を頂き、アルファポリス様から書籍化しました。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

実験施設から抜け出した俺が伝説を超えるまでの革命記! 〜Light Fallen Angels〜

朝日 翔龍
ファンタジー
 それはある世界の、今よりずっと未来のこと。いくつもの分岐点が存在し、それによって分岐された世界線、いわゆるパラレルワールド。これは、そ無限と存在するパラレルワールドの中のひとつの物語。  その宇宙に危機を及ぼす脅威や魔族と呼ばれる存在が、何度も世界を消滅させようと襲撃した。そのたびに、最強無血と謳われるレジェンド世代と称されたデ・ロアーの8人集が全てを解決していった。やがては脅威や魔族を封印し、これ以上は世界の危機もないだろうと誰もが信じていた。  しかし、そんな彼らの伝説の幕を閉ざす事件が起き、封印されていたはずの脅威が蘇った。瞬く間に不安が見え隠れする世界。そこは、異世界線へと繋がるゲートが一般的に存在し、異世界人を流れ込ませたり、例の脅威をも出してしまう。  そんな世界の日本で、実験体としてとある施設にいた主人公ドンボ。ある日、施設から神の力を人工的に得られる薬を盗んだ上で脱走に成功し、外の世界へと飛び出した。  そして街中に出た彼は恐怖と寂しさを覆い隠すために不良となり、その日凌ぎの生き方をしていた。  そんな日々を過ごしていたら、世界から脅威を封印したファイター企業、“デ・ロアー”に属すると自称する男、フラットの強引な手段で険しい旅をすることに。  狭い視野となんの知識もないドンボは、道中でフラットに教えられた生きる意味を活かし、この世界から再び脅威を取り除くことができるのであろうか。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...