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申し訳ありません

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「お義姉さんが王子殿下と…親密にしている?」
呟いた私に、私以外の4人がこくりと頷く。はっきり言って、そんな馬鹿な、だ。
  ゲームのヒロイン、と自称するだけあり、義姉は人の懐に入るのがうまい。商売をしている家では武器として好評価だった。とはいえ分別がない訳でも空気が読めない訳でも無く、引かねばならない時は引ける人だ。
 そんな義姉が王子殿下に……ましてや公爵令嬢という婚約者がいる人と、誤解を招くような関係を築いている――? 
 考えられる理由は……やっぱり、“ゲーム”だろう。
かなり高い確率で王子殿下は、ゲームの攻略対象だ。自分が攻略出来る相手だから強気で攻めていると思う。でも……。
「義姉が申し訳ありません……」
私は深々とアンナお姉様に頭を下げる。
でも何故か、キョトンとした顔をされた。ご年齢より大人びたお顔なのに、表情だけは年相応に見える。
「なぜ、チヨちゃんが謝るの?」
「あの人がしたことなら、私も止められた筈ですから」
そう、即座に答えた私の耳に、
「――あの人、か」
という旦那様のお声が聞こえる。
その響きがどこか楽しげに聞こえたのか気のせいか。

 あの人―義姉が、他人様の婚約者に誤解されるような接し方をしたのには変わりない。
ゲームとやらがどんなものかは知らないけど、ここで肝心なのは“身内が他人様に迷惑をかけた”と言う事だ――と、私は思う。
 私にとって、ここはゲームの盤上じゃないし人間もそこで動くだけの駒じゃない。
男爵家の義両親、ジェシカ師匠やそのお仲間、旦那様にクラウディア公爵家の皆さん。そしてアンナマリー嬢達。みんな意思を持つ人間だ。
相手が公爵令嬢でも平民でも関係無い。仮にも身内が他人様に迷惑をかけたなら謝罪すべきだろう。でも見た感じだと彼ら――義両親――は、何もしていないようだ。 

 ならば私だけでも、と思った。



「――貴方がそんな、困った顔をしないで」
アンナお姉様は微笑んで、私の頭にフワッと触れてくださった。
 ああ、やっぱり気持ちいい。とウットリしていたら両肩に旦那様の手がかかり、ぐいっと引き離されてしまう。いや私、これ位離れていても、ちゃんとお守り出来ますよ? と顔を上げて言いかけた私が、目にしたのは……。

「あらら……独占欲がお強いのですね。貴方様程のお方でも、この子が関わると余裕がなくなるのかしら?」
どこか勝ち誇ったような笑みを浮かべるアンナお姉様と、
「……この子は私の侍女で懐刀です。当然でしょう」
と、渋いお顔で言い返す旦那様だった。
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