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主人公もまた、ゲームの登場人物に過ぎない・1

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“ギャルゲー主人公リベンジ作戦対策本部”
 シン殿下のお言葉に、その場が緊張に満ちる。
俺を含む平民でしかない彼らに、王命に逆らうなんて選択肢はある筈は無い。が、やはり不安や不満があるのは当たり前だ。何せ皆平民、なんだから。いくらこの国の教育水準が世界的に高い方でも――いや、だからこそ理解出来るんだ。

 この事態に自分達が関わる事で、どう状況が変化するか。
王家はどの位保証してくれるのか。
何かあれば尻尾切りされるという可能性は、ゼロではないのか――と。

 でも俺は、シン殿下やステラ王女の人となりを知っている。
だから、皆の安全と安心の為に、俺なりに交渉しよう。……と、思っていたのだが。
俺より早く動いた人が居た。
 「恐れながら、意見を述べさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
ミーシャさんだ。この劇場を支える影の黒幕。そして俺の上司でもある。彼女は王族であるお2人に、あくまで立場を弁えています、という姿勢を保ち、かつ言わねばならないという強い口調で支配人との間に割って入る。
 そんな彼女に、ステラ王女殿下は一瞬目を見開いたが、すぐに面白いものを見た、といった感じでその目を細めた。
 俺には分かる。あれは彼女が機嫌の良い証拠だ。
「許可しよう」
「恐れ入ります」
 椅子に座った王女の前に、床に跪くミーシャさん。それは根っからの平民でしかない彼女の、精一杯の礼節だ。
……その話の内容は、現実味しかなかったが。


「他ならない自国の為、ましてや王家のお方からの拝命とならば、喜んでお引き受けしたいです。……ですが……ご覧の通りうちはオンボロ劇場。とてもじゃありませんが、王家やお仕えされている皆様のご要望にスラスラお答え出来る環境じゃあありません。叶うならば、多少のご援助をお願いしたいのですが」


 直訳すると“引き受けるけど協力するための必要経費は頂戴”。
要するにおねだりだ。が、お2人共撥ね除けるどころかごもっとも、とばかりに頷いている。
「……確かに見た感じ、否定は出来ないな。言っては失礼とは思うが……」
「う~ん……これからいくつか、機材も導入したいしね。それを思っても、このままだと少しの刺激で倒壊するかも……」
歯に衣きせず現実を指摘され、支配人が小さくなっているが、ここで世話になってから、どれだけ俺の建築スキルが上がったかを思うとかばいようがない。……本当にこの建物、よく保ったよなぁ!? そこでステラ王女から許可が出た。
「分かった。叶えられる範囲でそちらの要求に答えよう」
“叶えられる範囲”という条件つきだが、それでもミーシャさんの口元が“やった!”という感じに上がった。
「恐れ入ります。……まずこの劇場を大幅にリフォームしたいのですが……。あ、あと他にも……」
中にはかなり無茶ぶりも含まれていたが、ステラ王女殿下はむしろそんな彼女の反応が面白いようだ。
――ああこの2人、似たもの同士だ。どんな状況でもとにかく得を取ろうとする。
アーリアにもそんな所はあったが、あっちはひたすら礼儀を知らないだけ。筋を通しつつ問題点を示し、交渉する分には無礼ではない。
 とまぁ、そんな感じで、シン殿下をリーダーとする“ギャルゲー主人公リベンジ作戦”は発動したのである。
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