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なんとツートップ、転生者でした

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 “ギャルゲー”は、アーリアが前世でいた世界の言葉だ。
それを知っていると言うことは、つまり……。
俺の言いたいことを理解して頂けたようで、シン殿下は頷く。
「そう。お二方もアーリアと同じ、転生者だったんだ」


 「わたくし達は前世で、オタ友だったの♪」
「よくコミケで顔を合わせていたな。君のブースの店番をしたこともあった」
 何やら意味の分からない単語を羅列しつつ、昔話で盛り上がる王国のツートップ。
 その子供世代達は、ただボーッと、彼らを見ているだけだ。
「貴男の原稿の手伝いをしたこともあったわ! 女にロリイラストの色塗りさせる男なんて貴男くらいよ! はぁー、あの頃はホンットーに私を、女扱いしてなかったわね……」
「いやいやあれは悪かったって! ……でもそのおかげで締め切りギリギリで搬入出来たんだから感謝したよホント!」
 砕けた様子で、思い出話に花を咲かせている国王夫妻。普段、威厳を漂わせている姿しか知らない分違和感がすごい。しかもその内容がほぼ、分からない単語ばかりだ。
そこでやっと、子供達の目が驚きで点になっているのに気づいた2人は素早く居住まいをただした。
「こほん! ご、ごめんなさい。つい昔話にハマってしまったわ。あれは……夏の暑い日だったかしら。突然出て来た男に、包丁で刺されて殺されたの。2人共」
「変質者だったんだろうな。私も君も知らない奴だったし我々だけではなかったから。……とにかく、そんな感じで私達はあの男のいた世界の事を多少知っている。“ギャルゲー”、“攻略対象”。程度の知識ならな。……しかし……」
そこで2人の顔が苦渋に歪む。
「……アーリアが主人公なら、強制力や補正やらで守られている可能性は予想出来た。……でも……侮っていた。そのせいでステラは……!」
 それを見ていた者達は即座に理解した。“強制力”や“補正”と呼ばれる力が、どれほど非常識に強いのか。
それでもそれらを、自分達は絶対に潰す必要があること、を。
沈黙の中、シンが2人の前に進み出た。そして胸に手を当てて、頭を下げる。
「女王陛下、王配殿下。
あの男の処分は、どうかこの、シン・ヤマトノにお任せ頂けませんでしょうか?
 あの者はこの国の女性達を、ただの駒扱いにして玩んでいます。彼女らの事情も考えずに。今以上に被害が増える前に処分しなくてはなりません」
「…………うむ」
 シンの言葉に王配は黙考する。その頭に浮かぶのは、前世でのゲームの知識だ。
 アーリアがプレイしていたギャルゲーの内容自体は知らない。が、他のゲームの知識を持っている。


その中には、攻略対象が、人間以外なものも……あった。
魔王とか精霊とか、それ以上の……神の眷属さえも。


…………冗談ではない。
 その考えに至って、王配も女王も頭の中で毒づいた。
何してくれてるんだゲーム制作会社! もしくは運営! ニーズに応えるのも限度があるぞ!! いや、楽しかったかと訊かれたら、ものすごく面白かったとしか応えようがないが……、まさかあの時、自分達がその世界に転生するなんて、思うはずないだろう!!
 ゲーム画面の長文に飽きてきた頃、スキップ機能を“わー便利”とほいほい使っていた前世の自分をぶん殴ってやりたい。ちゃんと覚えておけよ!! そしたら娘達を犠牲にしなくて良かっただろうに!!


「そして、それらよりもなお――ステラを傷付けた事、絶対に償わせたいのです」


 そして……娘をこれほど大事に思ってくれている青年に、迷惑をかけることも、無かっただろうに。
しかし……今の自分達には、彼の協力が不可欠だ。故にその言葉に甘えることにする。
「ありがたくお力をお借りする。我が国の不祥事に巻き込んでしまい、誠に申し訳ないが……。どうかあの主人公……いや、男爵令息アーリア・コーニーの暴走を止めて頂きたい。……よろしくお願いします」
「よろしくお願い致します」
女王と王配が、同時に頭を下げた。その光景に周りにいた侍女や侍従達も、ザワッと気色ばむ。
 第3王女もその1人だった。この国のトップである両親が……頭を下げる?
 “このカルティ王国の王族たるもの、威厳を示さなくては”
“誰彼ともなく低姿勢でいてはいけない”
 そう、教育されていたのに……?

 それだけ事態が深刻なのだと、彼女の立場からは想像も出来ないだろう。
彼女こそが“攻略対象”。……両親曰く“ゲームの駒”なのだから。


 そんな彼女らをよそに、王族達の話し合いは進んでいく。
「資金もいくらかかっても構わない。その都度申請して下さい」
「いえ……。資金面はこちらで都合出来ます。限度を超えればお願いするかも知れませんが……。それ以上に必要なのは人材です。
 僕は所詮他国の王子。この国の民の信頼を得るのは難しい」
 ヤマトノ国。
かつて異世界召喚された勇者達が王族の国。
 それが故に文明が発展している事に、評価する者もいれば反面、反発する者もいる。
どこでも裏もあれば表もあるのだ。例えシンが友好国の王子だと名乗っても、心からの信頼を得るのは難しい。
 とそこで彼は、1人の人物の名前を挙げた。


「そこで私は……レオン・マクガイヤに協力を要請しようと思っております」
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