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見っけ☆~男爵令息アーリア・コーニー~
しおりを挟む王城ってやつは、どこまでも壮大で。
関係者――って言うか、普段働いている奴らが使う、狭い廊下でさえ町の大通り位の広さがある。ルナと初めて来た時にはたまげたもんだ。……もう、慣れたけどな。
今、俺がいるそこも、両側に装飾の施された柱や調度品が並ぶ。一つでも、俺の屋敷位は買える値打ちがあるだろう。
最初の頃こそ俺も権力者になったんだ! って思って浮かれていたが、こんな場所は、現実には観光目的程度に、たま~に来るから良いんだって事は1日目には分かった事だった。
――ったく、どうにかなんねぇのか、この長さ! ずっと歩き続けているのに、まるで果てが見えねぇぞ!!
「ああ、くそっ!!」
息が切れ、膝が笑うところまで来て、とうとう限界が来た。思わず悪態を吐き捨てる。こっちには魔法があるんだから前世の日本みたいに、動く廊下位設置出来るだろう!
しかし……この苦労を無駄にしたくない。その為に、“ステラお姉様が恐い”“お母様に処分される”と喚くルナをどうにか丸め込んで祝賀会に行かせて巻いてきたんだ。
――この先にいる“攻略対象(エモノ)”の為に。
いるだろう、という確信を持ってキョロキョロと辺りを見回すと。
そこに、女がいた。その鍛え上げた体を、それが分かるぴっちりした真紅のドレスに包んだ、気の強そうな美女が。
他の貴族令嬢とは一段違う。誰よりもこの場にしっくりと溶け込んでいる。
言わずとも分かる。第2王女・ステラだ。
「…………見っけ☆」
自然に口角が上がる。ゲームで体験した、あの女の痴態を思い出したからだ。
ストーリーは、こうだ。
第2王女であるステラには、友好国の王子という婚約者がいる。
プライドの高い彼女は、自分よりも力も知能も下の男と添い遂げる将来に苛立っていた。
そこに俺、主人公の登場だ。
女王の生誕記念の宴で、ステラは周りに婚約者を迎えに行くように強要される。苛立ちながらも、これも王族としての勤めと自分に言い聞かせて正門に向かう。
そこで、俺の登場だ。
何物にも縛られない、自由で野生のフェロモンがダダ漏れしている俺に、不本意にもときめきを覚え、心の奥で求めてしまうんだ。
そして――その夜、偶然にも顔を合わせた俺達は、一夜限りの関係を結ぶ。
ワンナイトラブ、ってところは物足りねぇが……。後腐れ無く遊べるならやらなきゃ損だよな。
“く……っ、こ、こんなのは、私じゃ無い!”
快楽と屈辱に頬を染めながらも、睨んでくるスチルが頭に浮かんで、思わず舌舐めずりしてしまった。アレを直に体験出来るなら、このだだ長い廊下をヤケクソ気味に進んだ甲斐もある。
「シン殿下、遅いな……」
何か呟いているようだが、そんなものはどうでもいい。ここから先は、シナリオ通りになるのだから。
さて、俺(主人公)のご登場だ。――待たせたな、ステラ!!
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