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もう、未来の義弟ではありません(1)

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 「3,2,1――!」
カウントダウンの後、ぽんぽん、と空に巨大な色とりどりの花が開き、広場に歓声が上がる。
「女王陛下!!  おめでとうございますー!!」
そう、これはカルティ王国現女王陛下が、過去この日時に生まれたという、合図の花火。
 そして、国を挙げての――女王誕生祭の幕開けだった。


 大広場には競うように出店が並び、あちこちで威勢の良い呼び込みをかけられる。
「そこのあんちゃん! これは上物だぜ! 絶対損はしねぇよ!」
「焼きたてのフランクフルト! 1本200オンだ!」
活気のある場所でいるのは好きだ。それだけ国が平和なのだと感じるから。
 あちこちから良い匂いが漂う中、俺は雰囲気を楽しんでいた。
本日、バレンシア劇場はお休み。祭りだし稼ぎ時なのだから劇場でも何かしよう、と提案してみたのだが、
「せっかくの祭りだ、お前も羽根伸ばして来いよ」
と支配人に言われ、ミーシャさんにも
「私もミヤと出店を回るの!」
と笑顔だ。仲良し姉妹同志で過ごせるのが、よほど嬉しいのだろう。と、微笑ましい気持でいたら、
「レオン君も誰か誘ってみたら?」
くふふ……と俺に、意味深な笑みを浮かべてくる。ど、どうしたんだ、ミーシャさん。
「バンドのみんなは、それぞれ用事があるらしいので……」
意図が汲みきれず、取りあえず答えると、何故かミーシャさんはきょとんとしている。
「?いや、あの子爵家のお坊ちゃまとか」
どうしてそこで出るのがジュエルなのかな? と疑問には思うけど、実際彼が劇場に来る事は出来ない。どうしてかと言えば、つまり、
「……休みの日まで、変装したくないです。それに彼はきっと、女王陛下に祝辞を延べに登城してますよ」
こういう事なのだ。


ジュエルは子爵令息で跡取りだ。
普段素っ気ないところがあるけどあの通りの美貌だから、人の多い場所に行ったらあちこちで捕まってしまうだろう。学園にいてた頃もそうだったし。
 下心のある奴は辛辣に撥ね付けていたけど、だからって平気ではなかった。キツい言葉を言ってはいても、瞳は不安げに揺れていたから。だからお節介だと、必ず後で睨まれるのが分かっていても、間に入らないでいられなかった。
――でも……もう、出来ないんだな。 
「それなのよねぇ!! “レオ”でなきゃジュエル様はダメなのよ! ……でも歯がゆいわぁ! あの子とレオン君が並んでたら、まさに美形同士で絵になるのに……」
 悔しそうなミーシャさんの声を遠くに感じながら、俺はここにいない彼の事を考えていた。
 ――ジュエル……大丈夫かな?
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