悪役令息な俺でもいいんですか?~歌声で人々を癒やします。でも元婚約者(第3王女)はお断りです~

みけの

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閑話~男爵令息アーリア・コーニー

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 あー! くそ、気分わりぃ!!
「どうされたのです、コーニー殿? まだ1時間も経っていないではありませんか。それとも既に、パーティの参加者全員を掌握されましたか? おお、それは素晴らしい」
「んなわきゃねぇだろ、嫌味かよ宰相!!」
 俺は今、王城で王配に与えられる執務室にいる。
そして目の前にいる宰相・アラン・スチュアートに仕事を押しつけられている最中だ。机の上には資料が山積みになっている。
 何でこんな七面倒くさい真似させるんだ? 俺はパーティに参加したい、って言っただけだ。王女の婚約者である俺が行けば、どんな女も俺を欲しがるに違いない。
やったー! 女食い放題だぜ!
 ……って喜んでいたら宰相の奴、『では最低限、これらの情報を頭に入れておいて下さい』って言って、分厚い本をドカドカと、俺の机に乗せやがった。参加する貴族達の顔と名前、各自持っている情報――。


 「ちゃあんと全ての課題をクリア出来たら参加して頂きますよ、王女のご婚約者様なのですから。
ご褒美があった方が張り切るでしょう? 期待していますからね」
 腹の立つセリフを残し、パタンとドアが閉じられた。堪えていたものがそこで切れ、俺は荒れた気分のまま、手近にあった分厚い資料をドアに投げつける。
 バン! って音を立て、資料は床に落ちるが沸々とした怒りは治まらなかった。
 あれ、絶対に出来ねぇって思っている顔だ。畜生あいつ、俺が王配になったら覚悟しとけよ!
 と思っていたら、トントンと扉がノックされ、向こうから宰相の声がしやがった。
「そうそう、言い忘れてました。もし逃げだそうとしたら、今度から騎士達に見晴らせますから」
「とっとと行きやがれ!!」


 ドカッと椅子に座り直してからニヤリと笑う。そしてドアを開けると、
「おい! 誰でも良いから早く来い!」
と言った。直ぐに侍従がやってくる。それに対し命令した。
「ジュエル・サイラスを呼んでこい」
「し、子爵邸へですか? しかし突然行ってもあちらにもご都合が――」
ビビってる癖にごちゃごちゃ言うから更に大声で言ってやる。
「良いから黙って呼んでこい!」
「は、はいぃ!」
 あたふたと走り去るのを見て、やっと気分が治ってきた。
 アイツ、最近俺が話しかけたら答えるようになったんだよな。やっと素直になってきたみたいだ。
城の中ではさすがに女は呼べねぇが、男なら良いだろう。
 さて、どんな顔をして来るだろうか? 楽しみだ。
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