【完結】王都のカジノから

みけの

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【カジノの貴賓室】・2

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 その日からわたし達は、同じ目標を持つ同志になりました。

 そこから先は、ご存じの通りです。
わたしと殿下は、あちこちでイチャイチャと恋人同士のように振舞いました。
 キスやスキンシップはなく、ひたすらバカップルになりきった会話を繰り返しました。

“ルリエ! 今日も一段と可愛いねぇ~”
“やだ殿下ってば! 本当の事をぉ~”
“君は誰よりも輝いてるよ♪宝石一億個並べても足りない位だ”
“やんやん♪ルリエ、困っちゃう~”

 精神年齢幼児並なわたし達のやりとりに、周りの視線は痛かったけどそれも計画通り。
 わたしはボンズ男爵達に“王子様と仲良くなりました”とだけ伝えた。
―――喜んでましたよ男爵。
“少しは役に立ったな。これからも役に立つように! 殿下のご機嫌を損ねるな”なんて言ってた。あまりの能天気っぷりに内心笑っちゃいました。

 どの王子かは訊いてないけど、それでいいの? 
多分アイツらの言う“気に入られた”のは愛人としてとか即妃としてって範囲って思っているわよね。でも実際は大きく違うの。

 アンタなんて雑魚扱い同然の、リシェンヌ公爵令嬢の婚約者の第3王子よ?
 
 そもそも王子って言った時点でどうして警戒しないのか? おかしいですよね。
 あの男その時、娼館のお花達と揉めててそれで悩んでいたんです。それどうして知った? 調べましたからね。
 そんなお馬鹿を相手にしているわたしと違って、ジ、いえ殿下は大変だったと思うわ。だって貴方と公爵が相手だったのですもの。
 下位貴族のわたしとイチャイチャしているジ、殿下にあなた方は当然、釘を刺してきた。いわく

―――あのような下賤の者と懇意にしているお考えをお聞かせ願いたい

でしたか?

 要約すると“娘と言う婚約者がいる貴様が他の雌に現を抜かす様を見せつけるとはどういうつもりだ?”ってカーンジ?
 公爵、威圧感バリバリだったってジ、殿下言ってた!
でも殿下もだてに長年ペコペコしていた訳じゃないから、

“彼女は男爵令嬢です。本気で相手にする訳ないでしょう? 無下にしたら却って厄介だから当たり障りなく相手にしているだけです。……それとも公爵は、あの者より娘であるリシェンヌ嬢が魅力がないとでも?”

って言い返す事でやり過ごしたそうですね?

 うん、殿下ってすごい!

 え? そんな連絡いつしていたのか? そうですね……。

 バカップルが顔をくっつけ合うようにして開かれた本に挟んであったり。
 捨てたゴミの中に紛らせて、時間を決めて入れていたのとか、ですかね。

 一応、貴方方が暗部を入れている危険も考えて、そうしていました。以前
『公爵家の暗部が張り付いている可能性は?』
 と訊いた時、聞いてましたから。
『僕は舐められているし、危険な目に遭っても死ななきゃいいや程度だからね。大丈夫だよ』

 ……複雑な気持ちになりました。


 どれも内容は経過報告だったけど……それだけじゃありませんでした。
 でもそれは何てことも無い日常話。今日あんな事があったとかこんな事が面白かったとか。
 わたしもそれに返す。あんなことやこんなことを。

お互い窮屈な場所に帰るまでの時間つぶし。でもわたしにとっては何よりも大事な、貴重な時間だった。
きっと結果がどうなろうと、悔いはしない。

 そうやって励まし合い、あらゆる下準備を整えていきました。
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