9 / 16
【カジノの貴賓室】・2
しおりを挟む
その日からわたし達は、同じ目標を持つ同志になりました。
そこから先は、ご存じの通りです。
わたしと殿下は、あちこちでイチャイチャと恋人同士のように振舞いました。
キスやスキンシップはなく、ひたすらバカップルになりきった会話を繰り返しました。
“ルリエ! 今日も一段と可愛いねぇ~”
“やだ殿下ってば! 本当の事をぉ~”
“君は誰よりも輝いてるよ♪宝石一億個並べても足りない位だ”
“やんやん♪ルリエ、困っちゃう~”
精神年齢幼児並なわたし達のやりとりに、周りの視線は痛かったけどそれも計画通り。
わたしはボンズ男爵達に“王子様と仲良くなりました”とだけ伝えた。
―――喜んでましたよ男爵。
“少しは役に立ったな。これからも役に立つように! 殿下のご機嫌を損ねるな”なんて言ってた。あまりの能天気っぷりに内心笑っちゃいました。
どの王子かは訊いてないけど、それでいいの?
多分アイツらの言う“気に入られた”のは愛人としてとか即妃としてって範囲って思っているわよね。でも実際は大きく違うの。
アンタなんて雑魚扱い同然の、リシェンヌ公爵令嬢の婚約者の第3王子よ?
そもそも王子って言った時点でどうして警戒しないのか? おかしいですよね。
あの男その時、娼館のお花達と揉めててそれで悩んでいたんです。それどうして知った? 調べましたからね。
そんなお馬鹿を相手にしているわたしと違って、ジ、いえ殿下は大変だったと思うわ。だって貴方と公爵が相手だったのですもの。
下位貴族のわたしとイチャイチャしているジ、殿下にあなた方は当然、釘を刺してきた。いわく
―――あのような下賤の者と懇意にしているお考えをお聞かせ願いたい
でしたか?
要約すると“娘と言う婚約者がいる貴様が他の雌に現を抜かす様を見せつけるとはどういうつもりだ?”ってカーンジ?
公爵、威圧感バリバリだったってジ、殿下言ってた!
でも殿下もだてに長年ペコペコしていた訳じゃないから、
“彼女は男爵令嬢です。本気で相手にする訳ないでしょう? 無下にしたら却って厄介だから当たり障りなく相手にしているだけです。……それとも公爵は、あの者より娘であるリシェンヌ嬢が魅力がないとでも?”
って言い返す事でやり過ごしたそうですね?
うん、殿下ってすごい!
え? そんな連絡いつしていたのか? そうですね……。
バカップルが顔をくっつけ合うようにして開かれた本に挟んであったり。
捨てたゴミの中に紛らせて、時間を決めて入れていたのとか、ですかね。
一応、貴方方が暗部を入れている危険も考えて、そうしていました。以前
『公爵家の暗部が張り付いている可能性は?』
と訊いた時、聞いてましたから。
『僕は舐められているし、危険な目に遭っても死ななきゃいいや程度だからね。大丈夫だよ』
……複雑な気持ちになりました。
どれも内容は経過報告だったけど……それだけじゃありませんでした。
でもそれは何てことも無い日常話。今日あんな事があったとかこんな事が面白かったとか。
わたしもそれに返す。あんなことやこんなことを。
お互い窮屈な場所に帰るまでの時間つぶし。でもわたしにとっては何よりも大事な、貴重な時間だった。
きっと結果がどうなろうと、悔いはしない。
そうやって励まし合い、あらゆる下準備を整えていきました。
そこから先は、ご存じの通りです。
わたしと殿下は、あちこちでイチャイチャと恋人同士のように振舞いました。
キスやスキンシップはなく、ひたすらバカップルになりきった会話を繰り返しました。
“ルリエ! 今日も一段と可愛いねぇ~”
“やだ殿下ってば! 本当の事をぉ~”
“君は誰よりも輝いてるよ♪宝石一億個並べても足りない位だ”
“やんやん♪ルリエ、困っちゃう~”
精神年齢幼児並なわたし達のやりとりに、周りの視線は痛かったけどそれも計画通り。
わたしはボンズ男爵達に“王子様と仲良くなりました”とだけ伝えた。
―――喜んでましたよ男爵。
“少しは役に立ったな。これからも役に立つように! 殿下のご機嫌を損ねるな”なんて言ってた。あまりの能天気っぷりに内心笑っちゃいました。
どの王子かは訊いてないけど、それでいいの?
多分アイツらの言う“気に入られた”のは愛人としてとか即妃としてって範囲って思っているわよね。でも実際は大きく違うの。
アンタなんて雑魚扱い同然の、リシェンヌ公爵令嬢の婚約者の第3王子よ?
そもそも王子って言った時点でどうして警戒しないのか? おかしいですよね。
あの男その時、娼館のお花達と揉めててそれで悩んでいたんです。それどうして知った? 調べましたからね。
そんなお馬鹿を相手にしているわたしと違って、ジ、いえ殿下は大変だったと思うわ。だって貴方と公爵が相手だったのですもの。
下位貴族のわたしとイチャイチャしているジ、殿下にあなた方は当然、釘を刺してきた。いわく
―――あのような下賤の者と懇意にしているお考えをお聞かせ願いたい
でしたか?
要約すると“娘と言う婚約者がいる貴様が他の雌に現を抜かす様を見せつけるとはどういうつもりだ?”ってカーンジ?
公爵、威圧感バリバリだったってジ、殿下言ってた!
でも殿下もだてに長年ペコペコしていた訳じゃないから、
“彼女は男爵令嬢です。本気で相手にする訳ないでしょう? 無下にしたら却って厄介だから当たり障りなく相手にしているだけです。……それとも公爵は、あの者より娘であるリシェンヌ嬢が魅力がないとでも?”
って言い返す事でやり過ごしたそうですね?
うん、殿下ってすごい!
え? そんな連絡いつしていたのか? そうですね……。
バカップルが顔をくっつけ合うようにして開かれた本に挟んであったり。
捨てたゴミの中に紛らせて、時間を決めて入れていたのとか、ですかね。
一応、貴方方が暗部を入れている危険も考えて、そうしていました。以前
『公爵家の暗部が張り付いている可能性は?』
と訊いた時、聞いてましたから。
『僕は舐められているし、危険な目に遭っても死ななきゃいいや程度だからね。大丈夫だよ』
……複雑な気持ちになりました。
どれも内容は経過報告だったけど……それだけじゃありませんでした。
でもそれは何てことも無い日常話。今日あんな事があったとかこんな事が面白かったとか。
わたしもそれに返す。あんなことやこんなことを。
お互い窮屈な場所に帰るまでの時間つぶし。でもわたしにとっては何よりも大事な、貴重な時間だった。
きっと結果がどうなろうと、悔いはしない。
そうやって励まし合い、あらゆる下準備を整えていきました。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ
青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人
世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。
デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女
小国は栄え、大国は滅びる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【短編】ショボい癒やし魔法の使い方
犬野きらり
恋愛
悪役令嬢のその後、それぞれある一つの話
アリスは悪役令嬢として断罪→国外追放
何もできない令嬢だけどショボい地味な癒し魔法は使えます。
平民ならヒロイン扱い?
今更、お願いされても…私、国を出て行けって言われたので、私の物もそちらの国には入れられません。
ごめんなさい、元婚約者に普通の聖女
『頑張って』ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活
ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。
「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」
そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢!
そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。
「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」
しかも相手は名門貴族の旦那様。
「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。
◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用!
◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化!
◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!?
「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」
そんな中、旦那様から突然の告白――
「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」
えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!?
「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、
「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。
お互いの本当の気持ちに気づいたとき、
気づけば 最強夫婦 になっていました――!
のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
いつもわたくしから奪うお姉様。仕方ないので差し上げます。……え、後悔している? 泣いてももう遅いですよ
夜桜
恋愛
幼少の頃からローザは、恋した男性をケレスお姉様に奪われていた。年頃になって婚約しても奪われた。何度も何度も奪われ、うんざりしていたローザはある計画を立てた。姉への復讐を誓い、そして……ケレスは意外な事実を知る――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる