2 / 16
2
しおりを挟む
あの時のあんたの……やば、貴方様の浮かべたお顔を、わたしは今でも覚えています。
“殿下が最もお分かりでしょう”
そう言う貴方様は、表情では“お願いどうか信じて下さい!”みたいな必死さを装ってました。
周りのお貴族様達も、貴方に憐憫の視線を向けていた。“なんて不遇”“なんて理不尽”“長年王家に尽くしていた公爵家に不遜な態度”“第3王子程度では、そんなものかしらね……”
貴方に同情するみたいな事をコソコソと。
まぁその大半は、下位貴族やその取り巻きの平民でしたけどね。
そう、高位の方々の反応は違いました。わたし達、会場のステージから見下ろしてましたから、よく見えました。
“何この人、別人?”ってお顔、してましたよ?
だって耳聡い方々は知っているはず。
実際は貴方、王子妃教育なんて一切受けていないってことをね!
と言うか、サボってたのよね。『面倒ごとは全て王子と王家にやらせろ。奴らは私達に決して逆らえん』ってお父様である前公爵に言われていたそうですもの。
知りませんでしたけど王家の財政って年中、火の車なんですって?
何でも先代が遊び好きの女好きであちこちに子種やら借金やら作りまくって、その返済や賠償の支払いが今も続いているって話じゃないですか。
で、貴方様と殿下の婚約も、貴方のお父様が裏で王家を牛耳る事が目的だったのですよね?
リシェンヌ公爵はやり手だったから、お金とそれに繋がる人脈を豊富にお持ちだった。王家としてはどうしてもその力に縋る必要があった。
その為の縁として出来たのが、貴方と殿下との婚約だった。ジョーがした借金でもないのに、子供でしかない彼と貴方は婚約を結ぶことになった。
で、そこにさっき言ったアンタの、こほん、失礼貴方様に公爵閣下が仰った言葉がくる。
『奴らは私達に決して逆らえん』
子供にとってみれば、“やりたい放題してもいいオモチャ”がもらえたってなもんよ。
ねえ、そう思ったんでしょ? 子供だったアン、いや貴方様は自分の不満やストレスを全部、婚約者であるジョー、いえ殿下にぶつけだした。
ちっちゃい彼に馬の役をやらせて、動けなくなったらそこらの物で叩いたり。
『窓から落とした指輪を探してください』って、雪が積もる寒い日に、地面を素手で掘らせたんですって?
聞いた時はビックリよ。何? その残酷で最悪で悪趣味なクソガキの悪ガキでお母さんのお腹にいる時に悪魔に憑依されたの? って感じぃ。
やだ、何ワナワナ体震わせて、もしかして怒ってます!?
ウソ、信じられなーい!
貴方様のような高貴なご身分のお方からすれば、しがない目にとめる価値もない平民の戯言じゃないですか。
雑魚の歯ぎしりなんて、不快どころかご褒美でしょう? 多少正鵠を獲ていても、そこはただの偶然とか鼻で笑うだけな場面でしょう?
……まあ……今はそれどころじゃあないのか。
あそこにいる、貴方の愛しのご伴侶。彼の生死を握っているのは実質、わたしですからね。……ああ、ビビんなくて良いです。言葉の綾です、殺しませんよ。
貴方でも、好きな人が絡めばそんなに青い顔をするんですね。
――何でさっきから色々な事、知ってるのかって?
調べたんですよ。公爵家から解雇された元使用人や、出入りしていた商人やらにね。
高圧的、かつ独裁的だった前公爵様、相当恨みを買っていたようで、皆、ペラペラと喋ってくれました。
まあ、一番大きかったのはお金をチラつかせたからですけど。
そんな金、たかだか男爵家の元平民風情が何故持ってる!? って……。
はあーーっ。……急死された前公爵閣下、今の貴方を見たらどう思うのかなぁ……。
貴方、油断し過ぎ。敵の情報位、しっかり把握しておくもんでしょう……。
前公爵閣下、草葉の陰で泣いてたりして? そうだったらざまぁですね。あの人がいらない事言ったから、ジョーが貴方に苛め抜かれる羽目になったんだから。
実際、貴方が爵位を継いでから、公爵家傾きだしてますもんねぇ? あんなに億万長者だったのに、貴方が継いで以降では落ちぶれ続きなんてさぁ……。
王子妃教育以前に、淑女教育すらも怪しいですねぇ。
で、さっきの質問に戻りますね。
『そんな金、たかだか男爵家の元平民風情が何故持ってる?』でしたか。
“殿下が最もお分かりでしょう”
そう言う貴方様は、表情では“お願いどうか信じて下さい!”みたいな必死さを装ってました。
周りのお貴族様達も、貴方に憐憫の視線を向けていた。“なんて不遇”“なんて理不尽”“長年王家に尽くしていた公爵家に不遜な態度”“第3王子程度では、そんなものかしらね……”
貴方に同情するみたいな事をコソコソと。
まぁその大半は、下位貴族やその取り巻きの平民でしたけどね。
そう、高位の方々の反応は違いました。わたし達、会場のステージから見下ろしてましたから、よく見えました。
“何この人、別人?”ってお顔、してましたよ?
だって耳聡い方々は知っているはず。
実際は貴方、王子妃教育なんて一切受けていないってことをね!
と言うか、サボってたのよね。『面倒ごとは全て王子と王家にやらせろ。奴らは私達に決して逆らえん』ってお父様である前公爵に言われていたそうですもの。
知りませんでしたけど王家の財政って年中、火の車なんですって?
何でも先代が遊び好きの女好きであちこちに子種やら借金やら作りまくって、その返済や賠償の支払いが今も続いているって話じゃないですか。
で、貴方様と殿下の婚約も、貴方のお父様が裏で王家を牛耳る事が目的だったのですよね?
リシェンヌ公爵はやり手だったから、お金とそれに繋がる人脈を豊富にお持ちだった。王家としてはどうしてもその力に縋る必要があった。
その為の縁として出来たのが、貴方と殿下との婚約だった。ジョーがした借金でもないのに、子供でしかない彼と貴方は婚約を結ぶことになった。
で、そこにさっき言ったアンタの、こほん、失礼貴方様に公爵閣下が仰った言葉がくる。
『奴らは私達に決して逆らえん』
子供にとってみれば、“やりたい放題してもいいオモチャ”がもらえたってなもんよ。
ねえ、そう思ったんでしょ? 子供だったアン、いや貴方様は自分の不満やストレスを全部、婚約者であるジョー、いえ殿下にぶつけだした。
ちっちゃい彼に馬の役をやらせて、動けなくなったらそこらの物で叩いたり。
『窓から落とした指輪を探してください』って、雪が積もる寒い日に、地面を素手で掘らせたんですって?
聞いた時はビックリよ。何? その残酷で最悪で悪趣味なクソガキの悪ガキでお母さんのお腹にいる時に悪魔に憑依されたの? って感じぃ。
やだ、何ワナワナ体震わせて、もしかして怒ってます!?
ウソ、信じられなーい!
貴方様のような高貴なご身分のお方からすれば、しがない目にとめる価値もない平民の戯言じゃないですか。
雑魚の歯ぎしりなんて、不快どころかご褒美でしょう? 多少正鵠を獲ていても、そこはただの偶然とか鼻で笑うだけな場面でしょう?
……まあ……今はそれどころじゃあないのか。
あそこにいる、貴方の愛しのご伴侶。彼の生死を握っているのは実質、わたしですからね。……ああ、ビビんなくて良いです。言葉の綾です、殺しませんよ。
貴方でも、好きな人が絡めばそんなに青い顔をするんですね。
――何でさっきから色々な事、知ってるのかって?
調べたんですよ。公爵家から解雇された元使用人や、出入りしていた商人やらにね。
高圧的、かつ独裁的だった前公爵様、相当恨みを買っていたようで、皆、ペラペラと喋ってくれました。
まあ、一番大きかったのはお金をチラつかせたからですけど。
そんな金、たかだか男爵家の元平民風情が何故持ってる!? って……。
はあーーっ。……急死された前公爵閣下、今の貴方を見たらどう思うのかなぁ……。
貴方、油断し過ぎ。敵の情報位、しっかり把握しておくもんでしょう……。
前公爵閣下、草葉の陰で泣いてたりして? そうだったらざまぁですね。あの人がいらない事言ったから、ジョーが貴方に苛め抜かれる羽目になったんだから。
実際、貴方が爵位を継いでから、公爵家傾きだしてますもんねぇ? あんなに億万長者だったのに、貴方が継いで以降では落ちぶれ続きなんてさぁ……。
王子妃教育以前に、淑女教育すらも怪しいですねぇ。
で、さっきの質問に戻りますね。
『そんな金、たかだか男爵家の元平民風情が何故持ってる?』でしたか。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

私、ウェルネリア。婚約者の家へ行った時、彼が他の女といちゃついているのを目撃してしまいました。……これはもう駄目ですね。
四季
恋愛
その日はありふれた日だった。
しかし、婚約者トマスの家へ行ったウェルネリアは、不運にも目撃してしまう。
ーーそう、それは、トマスが他の女と親しくしている光景。
すべてを知ったウェルネリアはトマスとの関係を終わらせることを決意する。
それは彼女の新たな一歩だった。

美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ
青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人
世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。
デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女
小国は栄え、大国は滅びる。

【短編】ショボい癒やし魔法の使い方
犬野きらり
恋愛
悪役令嬢のその後、それぞれある一つの話
アリスは悪役令嬢として断罪→国外追放
何もできない令嬢だけどショボい地味な癒し魔法は使えます。
平民ならヒロイン扱い?
今更、お願いされても…私、国を出て行けって言われたので、私の物もそちらの国には入れられません。
ごめんなさい、元婚約者に普通の聖女
『頑張って』ください。

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活
ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。
「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」
そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢!
そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。
「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」
しかも相手は名門貴族の旦那様。
「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。
◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用!
◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化!
◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!?
「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」
そんな中、旦那様から突然の告白――
「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」
えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!?
「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、
「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。
お互いの本当の気持ちに気づいたとき、
気づけば 最強夫婦 になっていました――!
のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!

いつもわたくしから奪うお姉様。仕方ないので差し上げます。……え、後悔している? 泣いてももう遅いですよ
夜桜
恋愛
幼少の頃からローザは、恋した男性をケレスお姉様に奪われていた。年頃になって婚約しても奪われた。何度も何度も奪われ、うんざりしていたローザはある計画を立てた。姉への復讐を誓い、そして……ケレスは意外な事実を知る――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる