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クリスマス・バースデイ
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私は、自分の誕生日があんまり好きじゃない。
12月25日に生まれた私のお祝いは、いつもクリスマスといっしょくたにされていた。そのせいで、他の人より1年のお祝いごとがひとつ少ない。
別に、悪いことばかりでもない。印象に残りやすい日付のおかげで、誕生日を忘れられたことはないから、仲の良い友達から祝われないってことはない。
だから、あんまり好きではないけれど、その日の気分次第だと気にするほどのことでもないし、年によっては気分が良い誕生日もある。
でも今年は、少し悲しい誕生日だった。
「おーい。そろそろ起きないと流石に遅刻するぞ」
肩を揺さぶられて、私はまだ重い瞼を頑張ってあけた。
彼は、すでに身支度を終えている様子で、すでに生活のスイッチが入ってるのが容易に分かった。
「……眠い。……寒い」
「ホットコーヒーなら入ってるぞ。飲むか?」
「……コーヒーって、むしろ体冷えるんだって」
「じゃあホットミルクでも入れてくるか?」
「……いい。コーヒー飲む」
起きるために布団をどけて、あまりの寒さにブルっと体が震えた。それに耐えて、頑張って起き上がる。
彼からコーヒーを貰って、一口すする。あったかい。
「お前、そんなに朝弱かったっけ?」
---誰のせいだと思ってるのよ。
という言葉は、コーヒーと一緒に飲み込んだ。ちょっと苦い。
「コーヒーで暖まるのもほどほどにしとけ。世間はクリスマスでも休ませてくれねぇぞ」
彼はそう言うと、自分のカバンを手に取った。
「え、ちょっと……」
「じゃあ俺、コンビニで立ち読みでもして待ってるから」
「一緒に出ないの?」
「いくら付き合いの長い彼女でも、着替えてるところに一緒にいるのは気まずいんだよ」
それだけ言うと、彼は「んじゃ、また後で」と手を振って部屋から出ていってしまった。
---なんか、ズルいやつ。
身支度を終わらせて、部屋を出て、鍵を閉めようとして、鍵につけたキーホルダーが目に入った。
可愛らしい熊のキーホルダー。昨日、彼が私にくれた、クリスマスプレゼント。
そう、"クリスマス"プレゼント。
「はぁ」
さっさと鍵を閉めて、鍵をコートのポッケにしまう。
別に彼は悪くない。なんならプレゼントそのものはとても嬉しい。
「嬉しいはず、なんだけどなぁ」
私は、ちょっと重い足どりで、彼が待つコンビニへ向かった。
私がコンビニに付くのと、彼がコンビニから出たのは、ほとんど同じタイミングだった。
「お、ちょうど良いや。ほい、肉まん」
「あ。ありがと」
朝ごはんがまだだったから、ちょうど良い。私は彼から肉まんを受け取って、ついでに手のひらを暖めることにした。
「ああ、それと」
「?」
彼は、他にも色々買ってあったコンビニ袋をカバンにしまうと、カバンから手のひらサイズの箱を取り出した。
「なにそれ?」
「ちょっと、失礼」
「へ? ……きゃ」
箱からなにやら取り出すと、いきなり両腕を私の首の後ろに回してきた。
ち、近い。
彼との近さや彼の匂いに動揺していると、首筋に一筋のひんやりとした感覚がした。
その感覚はすぐに薄れて、薄れた頃には彼は私から離れていた。
「うん。やっぱり似合ってる」
首につけられたものを、手に取ってみる。
「これ……」
ネックレスだった。
しかも、ちょっと高そうで。
「私が、欲しいって言ってたやつ」
いつ言ってたかは、正直覚えてない。
というか、本当に適当に呟いた言葉だったはずだ。
いつか買いたいと思ってた訳でもないし、増して彼に買って欲しかった訳でもなくて。
「えっと、これ……」
心がすごく落ち着かなくて、うまく言葉が出なくって。
そんな私を見た彼は、ニッコリと微笑んで。
「誕生日、おめでとう」
ああ。
私は、自分の誕生日があんまり好きじゃない。
でも、それはそれとして。
どうしようもなく、彼のことが好きだった。
12月25日に生まれた私のお祝いは、いつもクリスマスといっしょくたにされていた。そのせいで、他の人より1年のお祝いごとがひとつ少ない。
別に、悪いことばかりでもない。印象に残りやすい日付のおかげで、誕生日を忘れられたことはないから、仲の良い友達から祝われないってことはない。
だから、あんまり好きではないけれど、その日の気分次第だと気にするほどのことでもないし、年によっては気分が良い誕生日もある。
でも今年は、少し悲しい誕生日だった。
「おーい。そろそろ起きないと流石に遅刻するぞ」
肩を揺さぶられて、私はまだ重い瞼を頑張ってあけた。
彼は、すでに身支度を終えている様子で、すでに生活のスイッチが入ってるのが容易に分かった。
「……眠い。……寒い」
「ホットコーヒーなら入ってるぞ。飲むか?」
「……コーヒーって、むしろ体冷えるんだって」
「じゃあホットミルクでも入れてくるか?」
「……いい。コーヒー飲む」
起きるために布団をどけて、あまりの寒さにブルっと体が震えた。それに耐えて、頑張って起き上がる。
彼からコーヒーを貰って、一口すする。あったかい。
「お前、そんなに朝弱かったっけ?」
---誰のせいだと思ってるのよ。
という言葉は、コーヒーと一緒に飲み込んだ。ちょっと苦い。
「コーヒーで暖まるのもほどほどにしとけ。世間はクリスマスでも休ませてくれねぇぞ」
彼はそう言うと、自分のカバンを手に取った。
「え、ちょっと……」
「じゃあ俺、コンビニで立ち読みでもして待ってるから」
「一緒に出ないの?」
「いくら付き合いの長い彼女でも、着替えてるところに一緒にいるのは気まずいんだよ」
それだけ言うと、彼は「んじゃ、また後で」と手を振って部屋から出ていってしまった。
---なんか、ズルいやつ。
身支度を終わらせて、部屋を出て、鍵を閉めようとして、鍵につけたキーホルダーが目に入った。
可愛らしい熊のキーホルダー。昨日、彼が私にくれた、クリスマスプレゼント。
そう、"クリスマス"プレゼント。
「はぁ」
さっさと鍵を閉めて、鍵をコートのポッケにしまう。
別に彼は悪くない。なんならプレゼントそのものはとても嬉しい。
「嬉しいはず、なんだけどなぁ」
私は、ちょっと重い足どりで、彼が待つコンビニへ向かった。
私がコンビニに付くのと、彼がコンビニから出たのは、ほとんど同じタイミングだった。
「お、ちょうど良いや。ほい、肉まん」
「あ。ありがと」
朝ごはんがまだだったから、ちょうど良い。私は彼から肉まんを受け取って、ついでに手のひらを暖めることにした。
「ああ、それと」
「?」
彼は、他にも色々買ってあったコンビニ袋をカバンにしまうと、カバンから手のひらサイズの箱を取り出した。
「なにそれ?」
「ちょっと、失礼」
「へ? ……きゃ」
箱からなにやら取り出すと、いきなり両腕を私の首の後ろに回してきた。
ち、近い。
彼との近さや彼の匂いに動揺していると、首筋に一筋のひんやりとした感覚がした。
その感覚はすぐに薄れて、薄れた頃には彼は私から離れていた。
「うん。やっぱり似合ってる」
首につけられたものを、手に取ってみる。
「これ……」
ネックレスだった。
しかも、ちょっと高そうで。
「私が、欲しいって言ってたやつ」
いつ言ってたかは、正直覚えてない。
というか、本当に適当に呟いた言葉だったはずだ。
いつか買いたいと思ってた訳でもないし、増して彼に買って欲しかった訳でもなくて。
「えっと、これ……」
心がすごく落ち着かなくて、うまく言葉が出なくって。
そんな私を見た彼は、ニッコリと微笑んで。
「誕生日、おめでとう」
ああ。
私は、自分の誕生日があんまり好きじゃない。
でも、それはそれとして。
どうしようもなく、彼のことが好きだった。
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