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とある梅雨の日、彼との約束に遅刻してしまった
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雨の日は、ネガティブな日になることが多い。
スマホを取り出し、ロックを解除して、SNSを開く。新しい通知がないことを確認して、アプリを閉じて、スマホをしまう。
そんな動作を何回も何回も繰り返す。
待ち合わせの時間からもう30分。アイツは、まだやってこない。
「久しぶりに、会えるはずだったんだけどな……」
その呟きは、雨の中に消えていった。
またスマホを取り出して、ロックを解除して、SNSを開いて、今度は過去のログを遡る。
その約束は、1週間前にしたものだ。日時も、場所も、今日、この時間、この場所で合っている。
この確認も、ここに来てから5回はした。
何度見直しても、事実は変わらない。
アイツは、ここにいない。
(何か、あったのかな……)
俺の疑問に反ってくるのは、雨の音だけだった
世界の音が、雨で染まる。
雨の音に飲み込まれ、余計な音が消えていく。だから、より孤独が深くなる。
スマホを見て、うつむいて、そのせいか、思考がネガティブに寄っていく。その思考の流れを、雨が変えることを許さない。
もしかしたら、俺が愛想つかされたのだろうか。
思えば、俺はアイツに何かしてやれた記憶がない。いつも貰ってばっかりで、今日のおでかけも向こうからの誘いだった。飽きられてても仕方がない。
「ハハ……だからって、ドタキャンはないだろ……」
まあでも、俺に連絡を入れる価値もないと思ったら、そういうこともあるのだろうか。
そういえば、今日の約束をしてからの1週間、まともに連絡をとっていない。気の効いた雑談のひとつでも振れば良かっただろうかと、今さら後悔してくる。
俺はいつもそうだ。
人ととの会話が苦手だから、極力話さないように尽くしてしまう。だから、人間関係が長く続かない。
だから、アイツが俺のそばにいたのが不思議だったんだ。
このご時世で会う機会が減ったせいで、俺の本性がバレたのだろう。つまらない人間だとバレてしまった。
つまらない人間と、一緒にいる理由はないだろう。
「……ハハ」
苦し紛れに漏れた笑い声すらも、雨は全てを飲み込んでしまう。
雨は、全てを染めていく。
俺の心すら、陰鬱に。
「……帰ろう」
アイツが来ないなら、ここにいる理由はない。
雨の中、独りでいる必要なんてない。帰って暖まろう。思考がネガティブなのはきっと、雨で手先が冷えてるせいだ。
そう思って、傘をさそうとした。
その、瞬間。だった
……アイツだ。
アイツが、走ってこっちにやって来ている。
雨に濡れるのもお構い無しに、こちらに向かって走ってくるのが見える。
そして。
おーい、と、俺の名前を叫ぶ声が、アイツの声が、聞こえてきた。
全てを染めていた雨の中、何にも染まらないアイツの声が、しっかりと聞こえてくる。
(なんつーかな。俺ってこんな単純な男だったかな)
心が晴れていくのがわかる。
アイツが近づいてくるほどに、まるで、太陽が昇ってきたかのように、心の陰鬱さが消えていく。
また、アイツから貰ってしまった。
俺の目の前まで来て、肩で息をしながら膝に手をつく彼女の上で、手に持った傘を広げた。
雨の日は、ネガティブな日になることが多いけれど。
「おいおい、ずぶ濡れじゃないか。どうしたんだよいったい?」
今日は幸せな1日になりそうだ。
スマホを取り出し、ロックを解除して、SNSを開く。新しい通知がないことを確認して、アプリを閉じて、スマホをしまう。
そんな動作を何回も何回も繰り返す。
待ち合わせの時間からもう30分。アイツは、まだやってこない。
「久しぶりに、会えるはずだったんだけどな……」
その呟きは、雨の中に消えていった。
またスマホを取り出して、ロックを解除して、SNSを開いて、今度は過去のログを遡る。
その約束は、1週間前にしたものだ。日時も、場所も、今日、この時間、この場所で合っている。
この確認も、ここに来てから5回はした。
何度見直しても、事実は変わらない。
アイツは、ここにいない。
(何か、あったのかな……)
俺の疑問に反ってくるのは、雨の音だけだった
世界の音が、雨で染まる。
雨の音に飲み込まれ、余計な音が消えていく。だから、より孤独が深くなる。
スマホを見て、うつむいて、そのせいか、思考がネガティブに寄っていく。その思考の流れを、雨が変えることを許さない。
もしかしたら、俺が愛想つかされたのだろうか。
思えば、俺はアイツに何かしてやれた記憶がない。いつも貰ってばっかりで、今日のおでかけも向こうからの誘いだった。飽きられてても仕方がない。
「ハハ……だからって、ドタキャンはないだろ……」
まあでも、俺に連絡を入れる価値もないと思ったら、そういうこともあるのだろうか。
そういえば、今日の約束をしてからの1週間、まともに連絡をとっていない。気の効いた雑談のひとつでも振れば良かっただろうかと、今さら後悔してくる。
俺はいつもそうだ。
人ととの会話が苦手だから、極力話さないように尽くしてしまう。だから、人間関係が長く続かない。
だから、アイツが俺のそばにいたのが不思議だったんだ。
このご時世で会う機会が減ったせいで、俺の本性がバレたのだろう。つまらない人間だとバレてしまった。
つまらない人間と、一緒にいる理由はないだろう。
「……ハハ」
苦し紛れに漏れた笑い声すらも、雨は全てを飲み込んでしまう。
雨は、全てを染めていく。
俺の心すら、陰鬱に。
「……帰ろう」
アイツが来ないなら、ここにいる理由はない。
雨の中、独りでいる必要なんてない。帰って暖まろう。思考がネガティブなのはきっと、雨で手先が冷えてるせいだ。
そう思って、傘をさそうとした。
その、瞬間。だった
……アイツだ。
アイツが、走ってこっちにやって来ている。
雨に濡れるのもお構い無しに、こちらに向かって走ってくるのが見える。
そして。
おーい、と、俺の名前を叫ぶ声が、アイツの声が、聞こえてきた。
全てを染めていた雨の中、何にも染まらないアイツの声が、しっかりと聞こえてくる。
(なんつーかな。俺ってこんな単純な男だったかな)
心が晴れていくのがわかる。
アイツが近づいてくるほどに、まるで、太陽が昇ってきたかのように、心の陰鬱さが消えていく。
また、アイツから貰ってしまった。
俺の目の前まで来て、肩で息をしながら膝に手をつく彼女の上で、手に持った傘を広げた。
雨の日は、ネガティブな日になることが多いけれど。
「おいおい、ずぶ濡れじゃないか。どうしたんだよいったい?」
今日は幸せな1日になりそうだ。
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