俺、ニートじゃない。

Ri.1

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ハンター

予期せぬ出来事 4

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役所の内装は現実世界とそう変わらないが、窓口はとても少ない。

住民登録、職業案内・登録、住居案内・登録...のみ。役所で働いているのは全員CPUだ。とりあえず住民登録の窓口に行き、CPUのお姉さんに話しかける。

「住民登録しろって言われたんですけど」

「はい、ではこちらの用紙に必要事項の記入をお願い致します」

顔色一つ変えず淡々と仕事をこなすお姉さんは俺が現実世界でやっていたゲームのCPUより見た目は遥かに人間そっくりなのに言動はコンピューターそのものだ。

「よろしくお願いします」
一通り記入し終わった用紙を渡し、お姉さんが確認する。

「こちらも記入をお願いします」
先程の用紙をこちらに向け、お姉さんが指さす箇所には"無職の理由"と書かれている。

「あの、俺無職じゃないんです。休職して昨日職場復帰したんですけど、無職だと思われてここに連れてこられたんです」

この説明にはカバ蔵もウオ蔵も驚いていたが、お姉さんはそれでも表情を一切変えなかった。

「無記入ですと登録が出来ません。休職された理由をご記入下さい」

「あ、はい...」

お役所仕事という言葉はこのお姉さんの為にあるんじゃないか?

「ご記入ありがとうございます。それではこれで登録が完了致しましたので、ウオ蔵さんの指示に従い職業登録、住居登録をお願いします」

役所の窓口全部まわれってか。
事務手続きが苦手な俺は溜息をつきながらウオ蔵の元に向かった。

そんなことお構い無しなウオ蔵に連れ回され、職業案内・登録の窓口ではCPUのジジイにクソニート扱いされ、住居案内・登録窓口ではこの世界にも事故物件があると聞かされ驚きながらなんとか手続きを終えた。俺のHPはもう0だよ。

「よし!今日から君はこの世界の住人で、職業はバーテンダー。家はそこのアパートで家賃は7万円だね!頑張って!」

自分の仕事が終わって開放感に満ち溢れた声で話すウオ蔵。

「...一応貴方の仕事だと言うから手続きしましたけど、今日の会議で僕の事報告するの忘れてませんよね?」

「...あ」

「...忘れてませんよね?」

「も、もちろんだよ!言っとくから!すぐ帰して貰えると思うよ!」

絶対忘れてただろこいつ。報告し忘れたらどうしてやろうか。

そんなこんなで役所を出ると、街のスクリーンには16:30と表示されていた。現実世界とこの世界の時刻や時間の流れは同じらしい。登録したバーテンダーの仕事は17時からだったが、手違いでここに連れてこられているのに住人として仕事をするのも納得がいかないのでウオ蔵に抗議したところ、とりあえず今日は家で休んでいいという事になった。

登録した家に行き、元から設置してあるベッドにダイブする。思えば俺は昨日の夕方から現実世界で仕事をして、そのままここに連れてこられて手続きをしていたせいで24時間ずっと起きている。何故か眠くないし体の疲れも無かったので忘れていた。そういえば何も食べていないのにお腹も空かない。

突然色々な事が起こって驚いているせいだろう。そう思い、眠くないが体を休ませる為無理矢理にでも寝ることにした。
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