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11話・浮遊霊と地縛霊1/4
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平日の久美はいつも暇を持て余していた。生きている人は常に何かと対峙しているが、死んだ人は、相手をする事はあるが相手にされる事は無い。お絵描きには飽きてしまい、百合子に罠を仕掛けることは禁止されている。
「ヒマだー―」
一人で外を歩くのは何年も前に飽きてしまった。何をするか考えながら、床に突っ伏しているとゴキブリが自分の体をすり抜けていった。久美は飛び上がった。そのままシルクの布(ニコラエに調べてもらった結果、久美の触れる布はシルクだった)を手にとって追いかけた。ゴキブリの足は速く、壁の隙間に逃げ込んだが久美は幽霊のため、壁をすり抜けて追いかけた。ゴキブリと久美はそのまま外に出た。
ゴキブリは別の廃墟の中に逃げ込んだ。ゴキブリは疲れ切っていため、すぐに捕まった。
「何してるの?」
久美は背後から声をかけられて飛び上がった。驚くことでピクッとなった手はゴキブリを握りつぶした。
「うわっ!キモッ!」
ゴキブリだった物を捨てるか後ろを振り返るか迷ったが、ゴキブリの死骸を持ちながら話すのは嫌だったため、ゴキブリを庭に布ごと埋めた。
話しかけた相手の所に行こうと振り向くと久美より見た目が2歳くらい年下の少女がいた。
「何してるの?」
「私が見えるの?」
久美は彼女が少し浮いているのを見てさらに驚いた。
「あなたも幽霊なの?」
少女は小さく頷いた。目があちこちに泳いでいる事から少女はとても怖がっている事が分かった。久美も最初は恐怖を感じたが少女が怯えているのを見ると、お姉さんとして少女を慰めなければならないと思った。
「私は良い幽霊だから怖がらなくて大丈夫よ」
少女は変わらず怯えた声で聞きなおした。
「何をしてるの?」
久美はやさしく微笑む。
「あれをね、知り合いのコップの中に仕込むの」
少女は家の中に逃げ込んでいった。
「やっちゃった」
後を追う。壁をすり抜けて一直線で追うと少女は先程よりも震えている。
ドンッ!
あやそうと思い近づくと、見えない壁にぶつかった。
「なにこれ?」
ペタペタ触っているのを少女は震えながら見ていた。久美は見えない壁に息を吹きかけると白く曇った。そこにアニメのキャラクターを描く。家でお絵描きを飽きるまでしていた久美は達者な絵が描けた。少女は久美の絵が気に入ったらしく、久美が描く多くのキャラクターを喜んで見ていた。そのうち少女からリクエストするようになった。
「私は久美。あなたのお名前は?」
「分かんない」
「生きてた頃の記憶はある?」
少女は首を横に振った。
「ここに住んでるの?」
少女は首を縦に振った。その後も久美は絵を描き、少女はリクエストをする作業が繰り返された。
あたりが暗くなり、手元が見づらくなったため久美はそろそろ帰ろうと思った。
「それじゃあ、そろそろ帰るね」
「いかないで」
壁が消え、少女は久美に抱き着こうとしたが久美の前に転んだ。久美は少女の頭をなでる仕草をした。
「ごめんね、帰らなきゃ。そうだ。ウチくる?」
少女は首を横に振った。
「私この家から出れないの。家から出ようとすると何かにぶつかるの」
少女は地縛霊だった。
「また来るね・・・えーと、なんて呼べばいい?」
「お姉ちゃんが決めて?」
少女は憧れの眼差しの様なものを向けてお願いした。久美は少し考えて思いついた顔をする。
「じゃあ、地縛霊だからジバ子ちゃんね」
ニコリと笑った。気に入ったようだった。
「また来るね、ジバ子ちゃん」
「本当に来てくれる?」
少女は不安気な表情をしながら聞いた。
「もちろん。明日また来るよ、じゃあね」
「じゃあね」
ジバ子は久美が見えなくなるまでずっと手を振っていた。
家に帰るとちょうど百合子が帰ってきたところだった。
「ただいま」
「お帰り、あれ?機嫌良いね。いいことあった?」
「まあね」
久美は久しぶりに楽しい平日を送った。
「ヒマだー―」
一人で外を歩くのは何年も前に飽きてしまった。何をするか考えながら、床に突っ伏しているとゴキブリが自分の体をすり抜けていった。久美は飛び上がった。そのままシルクの布(ニコラエに調べてもらった結果、久美の触れる布はシルクだった)を手にとって追いかけた。ゴキブリの足は速く、壁の隙間に逃げ込んだが久美は幽霊のため、壁をすり抜けて追いかけた。ゴキブリと久美はそのまま外に出た。
ゴキブリは別の廃墟の中に逃げ込んだ。ゴキブリは疲れ切っていため、すぐに捕まった。
「何してるの?」
久美は背後から声をかけられて飛び上がった。驚くことでピクッとなった手はゴキブリを握りつぶした。
「うわっ!キモッ!」
ゴキブリだった物を捨てるか後ろを振り返るか迷ったが、ゴキブリの死骸を持ちながら話すのは嫌だったため、ゴキブリを庭に布ごと埋めた。
話しかけた相手の所に行こうと振り向くと久美より見た目が2歳くらい年下の少女がいた。
「何してるの?」
「私が見えるの?」
久美は彼女が少し浮いているのを見てさらに驚いた。
「あなたも幽霊なの?」
少女は小さく頷いた。目があちこちに泳いでいる事から少女はとても怖がっている事が分かった。久美も最初は恐怖を感じたが少女が怯えているのを見ると、お姉さんとして少女を慰めなければならないと思った。
「私は良い幽霊だから怖がらなくて大丈夫よ」
少女は変わらず怯えた声で聞きなおした。
「何をしてるの?」
久美はやさしく微笑む。
「あれをね、知り合いのコップの中に仕込むの」
少女は家の中に逃げ込んでいった。
「やっちゃった」
後を追う。壁をすり抜けて一直線で追うと少女は先程よりも震えている。
ドンッ!
あやそうと思い近づくと、見えない壁にぶつかった。
「なにこれ?」
ペタペタ触っているのを少女は震えながら見ていた。久美は見えない壁に息を吹きかけると白く曇った。そこにアニメのキャラクターを描く。家でお絵描きを飽きるまでしていた久美は達者な絵が描けた。少女は久美の絵が気に入ったらしく、久美が描く多くのキャラクターを喜んで見ていた。そのうち少女からリクエストするようになった。
「私は久美。あなたのお名前は?」
「分かんない」
「生きてた頃の記憶はある?」
少女は首を横に振った。
「ここに住んでるの?」
少女は首を縦に振った。その後も久美は絵を描き、少女はリクエストをする作業が繰り返された。
あたりが暗くなり、手元が見づらくなったため久美はそろそろ帰ろうと思った。
「それじゃあ、そろそろ帰るね」
「いかないで」
壁が消え、少女は久美に抱き着こうとしたが久美の前に転んだ。久美は少女の頭をなでる仕草をした。
「ごめんね、帰らなきゃ。そうだ。ウチくる?」
少女は首を横に振った。
「私この家から出れないの。家から出ようとすると何かにぶつかるの」
少女は地縛霊だった。
「また来るね・・・えーと、なんて呼べばいい?」
「お姉ちゃんが決めて?」
少女は憧れの眼差しの様なものを向けてお願いした。久美は少し考えて思いついた顔をする。
「じゃあ、地縛霊だからジバ子ちゃんね」
ニコリと笑った。気に入ったようだった。
「また来るね、ジバ子ちゃん」
「本当に来てくれる?」
少女は不安気な表情をしながら聞いた。
「もちろん。明日また来るよ、じゃあね」
「じゃあね」
ジバ子は久美が見えなくなるまでずっと手を振っていた。
家に帰るとちょうど百合子が帰ってきたところだった。
「ただいま」
「お帰り、あれ?機嫌良いね。いいことあった?」
「まあね」
久美は久しぶりに楽しい平日を送った。
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