血の記憶

甘宮しずく

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友情

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 その日を境に、晃聖は毎朝、蒼依を迎えに行くようになった。帰りは会社の前から駅まで送る。最初はぎこちなかった会話も、営業でみがいた話術でスムーズにいくようになった。

 意外にも警戒を解いた彼女は素直で聞き上手だった。
 ただ、ホストであることをにおわせる会話や、蒼依の過去に触れる話になると、重苦しい沈黙に包まれる。その度、歯がゆさを感じたが、決して表には出さなかった。

 心の傷を克服するには、相応の時間がかかるものだ。それに、近頃、彼女が見せてくれる笑顔が慰めになる。即行が信条の彼にとって、こうした辛抱強さが自分に備わっていたとは驚きだった。

 明日は蒼依の休みという日、晃聖は彼女をデートに誘った。

 しかし、彼女は“デート”という言葉に拒絶反応を示した。

 「明日は用事が溜まっているから……」

 予測していたことだ。
 「じゃあ、その次は?」

 答えない。きっと言い訳を探しているのだろう。

 「リハビリだよ」何事か言い出す前に、先手を打った。「朝と夕方だけの短い時間じゃ、なかなか効果はでないだろ?」

 それで気が楽になったようで、ようやく蒼依がOKをくれた。






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