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第1章 お菓子
01:クリキントン
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私が前世の記憶を取り戻したのは、5歳の頃であった。
遠くへ仕事にでかけていた父が、王都で流行しているという菓子「クリキントン」を買ってきたのである。
・・・。
もう一度言おう、「クリキントン」を買ってきたのである。
宝石商の営業人として、家を離れる父は、帰省する際に必ずお土産を買って帰ることが恒例となっていた。
宝石商を担う一族は、保有するその広大な自治区から、めったに外の世界へ出ることはない。
この世界で唯一、一切の魔力を持たない私たちは、
モンスターが潜む危険な「ダンジョン」を『身体能力』による実力でクリアし、
宝石を含めたドロップ品の販売を生業としていた。
(魔法を使用しないドロップ品は希少価値が高い)
しかし、魔法攻撃から身を守る術がなく、防衛のため、また差別から遠ざかるため、
自治区として王都から承認されている。
そんなこともあり、様々なお土産を買ってくる父だったが、お菓子を買ってくることは「クリキントン」が初めてのことだった。
「いやあ、最近不思議な名前の菓子が流行っていると聞いてはいたのだがね、どうも見た目が気味悪そうだし、口にはしなかったのだけれども、王都の人々がうまいのなんのというから、一口食べてみたんだ。これが絶品でね。温かくないお菓子でこんなにもうまいものがこの世に存在する、いや、誕生するなんて思いもしなかった。母さんとルカにも食べてほしくって。」
お気に入りのホーム着に着替え、上機嫌な父は、そう照れ笑いしながら、包みをほどき、木箱のふたを開けた。
「お菓子!!なにかしら!」
甘いものが大好きな私は、自分の身長より高いテーブルに駆け寄って中身を見ようとピョンピョン飛び跳ねて一生懸命だったことを今でも覚えている。
「まあ、不思議な名前の菓子ねえ。お母さんも初めて聞く響きだわ。」
台所で父の大好きなカボチャスープを作っていた母がこちらを振り返る。約半年ぶりの帰省だ。料理を作る母の姿はどこか嬉しそうだった。
「クリキントンだよ。面白い名前だろう?ルカ」
そう言って父は私ににこりと笑った。
「くりきん?うん!へんななまえー」
でも、なぜだろう。どこか懐かしい気がするのは…。
流行ものに敏感なメアリーが何時ぞや話していたのだろうとその時は納得していた。
「噂によると、このお菓子のレシピを考えたのは、第六王国シャーロット公爵の末娘である、クラリス様だそうだ。しかも、クラリス様はルカと同じ5歳だそうだよ。」
母が驚いたように振り返る。
「まあ、5歳の女の子がお菓子のレシピを!!シャーロット一族は皆優秀で名高いと聞くけれど、クラリス様もまた素敵な才能をお持ちなのね。」
シャーロット家は、この世界で国王一族と匹敵もしくは次に並ぶという勢力を持った一族で、皆、容姿端麗、高い才能と博識を持っていることで知られている、超名門一族だ。
外の世界のことはよく知らないが、平民からも憧れの注目を集めているらしい。
その時、何も知らなかった私はただただ、何故か懐かしい見た目とほのかに甘い香りのするお菓子に釘付けで、どんな味がするのだろうとワクワクしていた。
それを見かねた父が私の頭をわしゃわしゃなでる。
「ルカは本当に甘いものが大好きだな。ごはんまえだけど、一口食べてみるか?母さんいいかい?」
「仕方ないわね‥あまり気が進まないけど・・今回は特別よ?」
「わあ!かあさまありがとう!」
母が薄くスライスした栗きんとんを小皿に載せる。
「宝石の神よ。我らに今日も糧を_いたたきますっ!」
ぱくっ。
おいしーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
マロンの独特の甘みと、ほんのり上品な甘さ控えめの「餡」が絶妙にマッチしているわ!
え・・。
「餡・・・?」
ずんと重い衝撃。脳内に響くブレーキ。
フッと目の前が真っ暗になった。
遠くへ仕事にでかけていた父が、王都で流行しているという菓子「クリキントン」を買ってきたのである。
・・・。
もう一度言おう、「クリキントン」を買ってきたのである。
宝石商の営業人として、家を離れる父は、帰省する際に必ずお土産を買って帰ることが恒例となっていた。
宝石商を担う一族は、保有するその広大な自治区から、めったに外の世界へ出ることはない。
この世界で唯一、一切の魔力を持たない私たちは、
モンスターが潜む危険な「ダンジョン」を『身体能力』による実力でクリアし、
宝石を含めたドロップ品の販売を生業としていた。
(魔法を使用しないドロップ品は希少価値が高い)
しかし、魔法攻撃から身を守る術がなく、防衛のため、また差別から遠ざかるため、
自治区として王都から承認されている。
そんなこともあり、様々なお土産を買ってくる父だったが、お菓子を買ってくることは「クリキントン」が初めてのことだった。
「いやあ、最近不思議な名前の菓子が流行っていると聞いてはいたのだがね、どうも見た目が気味悪そうだし、口にはしなかったのだけれども、王都の人々がうまいのなんのというから、一口食べてみたんだ。これが絶品でね。温かくないお菓子でこんなにもうまいものがこの世に存在する、いや、誕生するなんて思いもしなかった。母さんとルカにも食べてほしくって。」
お気に入りのホーム着に着替え、上機嫌な父は、そう照れ笑いしながら、包みをほどき、木箱のふたを開けた。
「お菓子!!なにかしら!」
甘いものが大好きな私は、自分の身長より高いテーブルに駆け寄って中身を見ようとピョンピョン飛び跳ねて一生懸命だったことを今でも覚えている。
「まあ、不思議な名前の菓子ねえ。お母さんも初めて聞く響きだわ。」
台所で父の大好きなカボチャスープを作っていた母がこちらを振り返る。約半年ぶりの帰省だ。料理を作る母の姿はどこか嬉しそうだった。
「クリキントンだよ。面白い名前だろう?ルカ」
そう言って父は私ににこりと笑った。
「くりきん?うん!へんななまえー」
でも、なぜだろう。どこか懐かしい気がするのは…。
流行ものに敏感なメアリーが何時ぞや話していたのだろうとその時は納得していた。
「噂によると、このお菓子のレシピを考えたのは、第六王国シャーロット公爵の末娘である、クラリス様だそうだ。しかも、クラリス様はルカと同じ5歳だそうだよ。」
母が驚いたように振り返る。
「まあ、5歳の女の子がお菓子のレシピを!!シャーロット一族は皆優秀で名高いと聞くけれど、クラリス様もまた素敵な才能をお持ちなのね。」
シャーロット家は、この世界で国王一族と匹敵もしくは次に並ぶという勢力を持った一族で、皆、容姿端麗、高い才能と博識を持っていることで知られている、超名門一族だ。
外の世界のことはよく知らないが、平民からも憧れの注目を集めているらしい。
その時、何も知らなかった私はただただ、何故か懐かしい見た目とほのかに甘い香りのするお菓子に釘付けで、どんな味がするのだろうとワクワクしていた。
それを見かねた父が私の頭をわしゃわしゃなでる。
「ルカは本当に甘いものが大好きだな。ごはんまえだけど、一口食べてみるか?母さんいいかい?」
「仕方ないわね‥あまり気が進まないけど・・今回は特別よ?」
「わあ!かあさまありがとう!」
母が薄くスライスした栗きんとんを小皿に載せる。
「宝石の神よ。我らに今日も糧を_いたたきますっ!」
ぱくっ。
おいしーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
マロンの独特の甘みと、ほんのり上品な甘さ控えめの「餡」が絶妙にマッチしているわ!
え・・。
「餡・・・?」
ずんと重い衝撃。脳内に響くブレーキ。
フッと目の前が真っ暗になった。
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