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事件発生から1時間経過
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【事件発生から1時間経過】
「はぁ…はぁ…」
男の荒い呼吸に、乱れた足音が重なる。
そこに追いかけてくる足音はまだ、聞こえてこない。
「…はぁ…はぁ…!」
明らかな酸欠で耳鳴りがして、目の前が明滅している。
息を吸うたびに潮の臭いが鼻と喉を焼いていくようだった。
それでも私は足を止めるわけにはいかなかった。
ここまで来てしまったらもう後には退けない。
私は持っていたアタッシュケースを抱え直す。
中身は命より大事なものだった。
「…はぁ…はぁ……クソッ…!」
誰に向けるでもなく吐き出した悪態は自分の耳にしか届かない。
目の前に、潮風で一際赤錆びたフェンスが現れる。
男はアタッシュケースを抱えたまま、速度を落とすこともなく
片手を使いそれを飛び越えた。
その途端、左手首に変な負荷がかかり
ブチ、と嫌な音がした
辺りに小さな金属鎖が散らばる。
目をやると、色褪せた銀の十字架が足元に落ちていた。
組織の一員として身につけさせられていた、大して愛着も無いブレスレットが
フェンスに引っ掛かり切れただけだった。
それだけ、それだけのはずなのに
何故かひどく胸騒ぎがした。
ここにこれを置いて行ってはいけない
そう本能が告げる。
仕方ないが全てを拾い集める時間は到底無いので
小さな宝石のはまっている十字架と、
構成員としてのナンバーが入ったプレートの部分だけを拾いあげて
また駆け出した。
約束の刻限まで、残り30分を切っていた。
「はぁ…はぁ…」
男の荒い呼吸に、乱れた足音が重なる。
そこに追いかけてくる足音はまだ、聞こえてこない。
「…はぁ…はぁ…!」
明らかな酸欠で耳鳴りがして、目の前が明滅している。
息を吸うたびに潮の臭いが鼻と喉を焼いていくようだった。
それでも私は足を止めるわけにはいかなかった。
ここまで来てしまったらもう後には退けない。
私は持っていたアタッシュケースを抱え直す。
中身は命より大事なものだった。
「…はぁ…はぁ……クソッ…!」
誰に向けるでもなく吐き出した悪態は自分の耳にしか届かない。
目の前に、潮風で一際赤錆びたフェンスが現れる。
男はアタッシュケースを抱えたまま、速度を落とすこともなく
片手を使いそれを飛び越えた。
その途端、左手首に変な負荷がかかり
ブチ、と嫌な音がした
辺りに小さな金属鎖が散らばる。
目をやると、色褪せた銀の十字架が足元に落ちていた。
組織の一員として身につけさせられていた、大して愛着も無いブレスレットが
フェンスに引っ掛かり切れただけだった。
それだけ、それだけのはずなのに
何故かひどく胸騒ぎがした。
ここにこれを置いて行ってはいけない
そう本能が告げる。
仕方ないが全てを拾い集める時間は到底無いので
小さな宝石のはまっている十字架と、
構成員としてのナンバーが入ったプレートの部分だけを拾いあげて
また駆け出した。
約束の刻限まで、残り30分を切っていた。
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