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第4章 勇者の日常
9 揺らぐ封印1
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「彼方くん、ありがとうございます」
雫が礼を言う。
「あれがナンパというものでしょうか……私、生まれて初めてナンパされました」
「雫ちゃん、可愛いもんね」
と、月子。
「そ、そんな、私なんて……」
「ん? 普通に可愛い部類に入るだろ」
俺が素直な意見を言った。
「えっ? えっ?えっ? か、かわいい? わた、わわわわ私がっ!?」
「ああ」
「はわわわわわ……恥ずかしいです照れます彼方くんにそんなこと言われると私どうしていいのか、ひああああ」
雫がいきなり両手足をばたつかせ、謎のダンスを踊り始めた。
「ど、どうしたんだ?」
「どうしようどうしよう恥ずかしい恥ずかしい」
「……おーい、雫?」
「はっ!? す、すみません、あまりにもびっくりして」
「ふーん……? 同じ『可愛い』でも、ボクに言われるのと先輩に言われるのだと全然反応が違うんだね」
月子がニヤニヤ笑う。
「やっぱり雫ちゃん、先輩のこと──」
「はううううぅぅぅぅ、だってだってだって彼方くんに言われると恥ずかしく照れてしまって……っ」
雫がまた謎のダンスを踊った。
その後──。
アリアンを見かけたり、チャラ男たちとの一件などもあったが、俺たちはおおむね楽しい一日を夕方近くまで過ごした。
「今日は楽しかったです」
「いっぱい遊んだし、いっぱい体を動かしたし、すっきり爽快だねっ」
「堪能した」
「ええ、一緒に遊べてよかったわ」
雫、月子、凪沙さん、緋ヶ崎──全員、満足げな顔だ。
「だな」
もちろん、俺も。
たっぷりと楽しみ、俺たちは帰路についていた。
こんなふうに女の子たちと遊んだのは初めての経験だったけれど。
本当に、楽しかったな。
これがリア充生活というやつだろうか。
数十年の人生経験の果てに、初めて体感した。
こういう時間の過ごし方も、いいもんだ。
またみんなと、こんなふうに楽しく、笑って過ごせたらいいな──。
※
──帰路につく彼方たちをにらみつける数人の人影があった。
「あの野郎……絶対許さねぇ」
「全員でボコるか」
「だな」
彼らはヒソヒソとささやき合っていた。
先ほど彼方に【威圧】され、追い払われたチャラ男たちである。
軽薄そうなニヤついた顔に、今は憎々しげな表情が浮かんでいる。
その視線の先にあるのは、少女たちに囲まれた一人の少年──。
彼方だ。
「けど、あいつ妙に威圧感があるっていうか……強いんじゃないか」
「こっちは五人だぞ。囲んでボコればどうってことねー」
「あとは邪魔が入らない場所を選ぶだけだな」
「あの女どもと離れたら、あいつを追いかけるぞ」
「うぇーい」
彼らはうなずき合い、そっと彼方の後をついていく──。
雫が礼を言う。
「あれがナンパというものでしょうか……私、生まれて初めてナンパされました」
「雫ちゃん、可愛いもんね」
と、月子。
「そ、そんな、私なんて……」
「ん? 普通に可愛い部類に入るだろ」
俺が素直な意見を言った。
「えっ? えっ?えっ? か、かわいい? わた、わわわわ私がっ!?」
「ああ」
「はわわわわわ……恥ずかしいです照れます彼方くんにそんなこと言われると私どうしていいのか、ひああああ」
雫がいきなり両手足をばたつかせ、謎のダンスを踊り始めた。
「ど、どうしたんだ?」
「どうしようどうしよう恥ずかしい恥ずかしい」
「……おーい、雫?」
「はっ!? す、すみません、あまりにもびっくりして」
「ふーん……? 同じ『可愛い』でも、ボクに言われるのと先輩に言われるのだと全然反応が違うんだね」
月子がニヤニヤ笑う。
「やっぱり雫ちゃん、先輩のこと──」
「はううううぅぅぅぅ、だってだってだって彼方くんに言われると恥ずかしく照れてしまって……っ」
雫がまた謎のダンスを踊った。
その後──。
アリアンを見かけたり、チャラ男たちとの一件などもあったが、俺たちはおおむね楽しい一日を夕方近くまで過ごした。
「今日は楽しかったです」
「いっぱい遊んだし、いっぱい体を動かしたし、すっきり爽快だねっ」
「堪能した」
「ええ、一緒に遊べてよかったわ」
雫、月子、凪沙さん、緋ヶ崎──全員、満足げな顔だ。
「だな」
もちろん、俺も。
たっぷりと楽しみ、俺たちは帰路についていた。
こんなふうに女の子たちと遊んだのは初めての経験だったけれど。
本当に、楽しかったな。
これがリア充生活というやつだろうか。
数十年の人生経験の果てに、初めて体感した。
こういう時間の過ごし方も、いいもんだ。
またみんなと、こんなふうに楽しく、笑って過ごせたらいいな──。
※
──帰路につく彼方たちをにらみつける数人の人影があった。
「あの野郎……絶対許さねぇ」
「全員でボコるか」
「だな」
彼らはヒソヒソとささやき合っていた。
先ほど彼方に【威圧】され、追い払われたチャラ男たちである。
軽薄そうなニヤついた顔に、今は憎々しげな表情が浮かんでいる。
その視線の先にあるのは、少女たちに囲まれた一人の少年──。
彼方だ。
「けど、あいつ妙に威圧感があるっていうか……強いんじゃないか」
「こっちは五人だぞ。囲んでボコればどうってことねー」
「あとは邪魔が入らない場所を選ぶだけだな」
「あの女どもと離れたら、あいつを追いかけるぞ」
「うぇーい」
彼らはうなずき合い、そっと彼方の後をついていく──。
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