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第1章 勇者の帰還

8 威圧スキル2

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 スキルにはそれぞれレベルというものがある。
 レベル1より2、2より3──数字が上がるごとに効果や威力も上がっていく。

 このレベルを上げる方法は主に二つ。
 一定の使用回数ごとに得られる『習熟度』か、スキル取得のときと同じく経験値ポイントを割り振るか──だ。

 習熟度はまだ足りないので、今回は経験値ポイントを使うことにする。

「【威圧・レベル2】」
「ううっ……!」

 ギャルグループがひるんだ。

 だけどリーダー格だけは、まだ俺をにらんでいる。
 へえ、これでも耐えるのか。

「【威圧・レベル3】」

 今朝稼いだポイントはこれで打ち止めだ。

「ひ、ひいいいいっ……!」

 とうとうリーダー格を含め、全員がその場に這いつくばった。
 真っ青な顔でがたがたと震えている。

「許して……許してくださいぃぃぃ……」

 中には土下座している者までいた。
 きっと俺が怖くてたまらないんだろう。

 だけど、容赦はしない。

 八条はその何倍も怖い目に遭ってきたに違いない。
 たくさん苦しめられてきたに違いない。

 だから──報いを受けさせる。

 そのうえで、彼女へのいじめを完全にやめさせるんだ。

 まずは、お仕置きタイムといこうか──。
 俺はギャルグループに歩み寄る。
 と、

「お前、何やってるんだ!」

 数人の男子生徒が入り口から入ってきた。
 ちょうど登校してきた三組の生徒だろう。

「大丈夫か、愛美まなみ!?」
姫宮ひめみやから離れろ!」

 たぶんギャルグループのリーダーが姫宮愛美という名前なんだろう。
 名前も顔も綺麗なのに、心は……って感じだ。

 男子生徒たちがいっせいに俺を取り囲む。

「女の子を脅して、恥ずかしくないのか!」

 糾弾する男子生徒たち。
 うーん、完全に俺が『悪』の構図だ。

「脅してたのは、むしろこいつらのほうなんだが?」

 俺はそいつらを見返した。

「八条をいじめてただろ」
「反省の色なしかよ」
「やっちまうか」

 男子生徒たちは色めきだった。

 八条の話題はスルーか。
 ついでに俺の話もまったく耳に入ってない感じだ。

「じゃあ、同罪だな。お前らも」
「うるせえ!」

 正面の奴が殴りかかってきた。
 さらに時間差で右からも別の奴が来る。

 ──遅い。
【近接格闘・レベル3】を持つ俺には、彼らの動きは止まって見えた。

 正面からの右ストレートを首をわずかに傾けただけで避ける。
 カウンターでみぞおちに左の拳を叩きこんだ。

「うぐえっ」

 苦鳴を上げて、崩れ落ちる男。

 そこへ右からの体当たりが迫る。
 俺は腰を落として踏ん張り、肩からそれを受け止めた。

「ぐっ……!?」

 体当たりをしかけた男の方がよろめく。
 経験値を稼ぎ、俺自身のパワーやスピードはかなり上がっているのだ。

 体勢を崩した男に前蹴りを食らわせ、吹き飛ばした。
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