51 / 216
44.おいでませ勇者ご一行
しおりを挟む
ズバリと切り捨てたエリックはその横をすり抜け旅立とうとする。
「ああああっ!? センパイ何で!? ひどい!!」
「遊びに行くんじゃないんだぞ」
追いすがるように服の裾を掴まれるが無視してそのまま歩い……重い。早く離して欲しい、割と本気で。
「いいじゃないスか~ちゃんと他の騎士隊員にも許可とってますから! オレが隊の中で一番の実力者なんでお供の座を勝ち取ったんスよ! あ、もちろん一番の実力者ってのは隊長であるセンパイを除いてですけど」
しばらく立ち止まってその顔を嫌そうに見つめていたエリックだったが、それはそれは重たいため息を一つ落とすと再び歩き出した。
「殉職しても恨むなよ」
「お任せ下さいな~!! このオレの双剣でマモノどもをバッサバッサと切り捨てぇ……センパイの背中はオレが守る!!」
友好条約を結べるかどうかの調査だということを、向こうの地に着くまでにこのアホな後輩にみっちり叩き込まねばならない。
その無駄な労力を悟り、勇者は痛み始めた頭を抱えたのだった。
***
「だぁーっはっはっは!! 売り切れ続出? 刷っても刷っても片っ端から売れてく!? 笑いが止まらんねこりゃ!!」
まるで自分の部屋のように執務室のソファで足を組んでいるリカルドが、入って来た私に片手を軽く上げながらも通信魔導器を耳に当て誰かと――たぶん向こうの新聞社さんと話をしている。私はその向かいに腰かけてバサリと号外新聞を広げてみた。しかし冷静になって考えてみれば、こんな政府に喧嘩売るような記事をよく載せてくれたものだ。
「あ? 結果論で話すなって? いいじゃねぇか、俺とおたくの仲だろう。おい怒るなよ、わかったわかった、例のデータは責任持って後でそっちに送り返しておくから」
…………やっぱり正攻法とは言えないやり口だった可能性が。向こうの新聞社さんに会う事があったらお詫びの菓子折りでも渡しておこう。
「じゃ、調査に来たら『報道の自由』を主張して、最終的には俺の責任にしておけ。しばらくはこっちに居るつもりだから。あぁ、あぁ、次の記事もコウモリに運ばせる」
話を聞く限り、号外のインパクトは相当な物だったようだ。これでトゥルース新聞社の名も爆発的に広がったことだろうし、今後もその新聞社を通して私たちのいいイメージをアピールできる事だろう。
ここでチラリと私を見たリカルドは、ニヤぁっと笑って電話口の向こうにこう伝えた。
「もし本当にヤバくなったらアンタら新聞社ごとこっちの国に来るってのも悪くないかもな、何たって今回の作戦の要だ、魔王サンも快く受け入れてくれるってよ」
なぬっ!? それは聞いてない、言ってない。いやまぁ、私たちの責任で追われるような事になったらそりゃ受け入れるけど。
私の物言いたげな視線を感じたのだろう、リカルドは軽く笑って相手との会話を締めくくり通信を終えた。
「国民の反応は上々。城からのアクションはまだ何もないが、予想だと新聞社に調査が入るか――まぁ少なくとも俺は指名手配されるだろうな」
「指名手配って……本当に良かったの?」
「悪いと思うんなら、早いとこ国として認められてこの号外記事を『世紀の大正義報道』にしてくれや」
前回は手にするだけで食べなかったラスプと手首ちゃんお手製のクッキーを口に放り込みながら彼は軽く言う。そうだ、リカルドを犯罪者のままにさせないためにも頑張らなくちゃ。
「ま、これで俺は一気に売れっ子ライターだけどな! もう朝から「ウチのとこにも記事を書いてくれ~」って他の新聞社からコンタクトがじゃんじゃん来てワハハハ」
前言撤回。この人ならどんな環境でも生きていける気がする。
「トゥルース社と専属契約結んでるけど、別名義で書くかぁ~? ダハハハハ」
「あなたがこの国に飛び込んできた理由が何となくわかった気がするわ……」
「先見の明と度胸があったってことだろ? そんなに褒めるな、照れるじゃないか」
軽い調子で立ち上がった彼は、続報の記事を書くため取材に出かけると言う。去り際に思い出したかのように振り返り、次のような要望を出した。
「そういや、住むところはこの城以外にはねぇのか? 俺もしばらくこっちに居を構えるつもりだが城下町としてもうちょい体裁整えた方がいいぜ、その方が記事を書くときもサマになるからな」
それだけ言い残し、出かけて行く。
うーん、城を中心にした城下町づくりか……確かに今のままじゃお城があって、ちょっと離れた位置に下の村があるだけだ。
下の村って呼び方もアレだし、いっそこちらに上がってくるようにメインストリートを作って、その両脇に色んなお店とか家を建てて、ゆくゆくはそれらを城壁で囲って大きな城下町にしちゃえばいいんじゃないかな。
「う……」
そこまで考えた私は、紙にでも構想をまとめておこうと立ち上がりかけてクラりとめまいを感じた。
やだな、ここのところずっとこうだ。疲れでも溜まってきてるのかな……いいや、でも休んでる場合じゃないし。建国宣言をして、戦争回避できるかどうかここからが正念場なんだからしっかりしなきゃ。
「主様、どうかなさいましたか?」
後ろからの声にゆるゆると振り返ると、ルカが怪訝そうな顔つきで入ってくるところだった。彼は抱えていた書類を真ん中のローテーブルに置くと私の側によってきて額をぺたりと触る。
「体調が優れませんか? 熱はないようですけど」
◇◆◇
【手首ちゃんの一言コーナー】
手首です。リカルドさんがクッキーを食べてくれたそうで…! 前回食べなかったのはまぁ警戒してたのでしょうが(見知らぬ魔族領で出された怪しいクッキーですから当然と言えば当然ですわね)先ほどすれ違った際、おいしかったと言ってくれました!ラスプ様にもお伝えしておきましょう。
……それにしても、初めて対面した際わたくしの姿に驚かなかったんですよね、彼。指さされて思いっきり爆笑はされましたけど
「ああああっ!? センパイ何で!? ひどい!!」
「遊びに行くんじゃないんだぞ」
追いすがるように服の裾を掴まれるが無視してそのまま歩い……重い。早く離して欲しい、割と本気で。
「いいじゃないスか~ちゃんと他の騎士隊員にも許可とってますから! オレが隊の中で一番の実力者なんでお供の座を勝ち取ったんスよ! あ、もちろん一番の実力者ってのは隊長であるセンパイを除いてですけど」
しばらく立ち止まってその顔を嫌そうに見つめていたエリックだったが、それはそれは重たいため息を一つ落とすと再び歩き出した。
「殉職しても恨むなよ」
「お任せ下さいな~!! このオレの双剣でマモノどもをバッサバッサと切り捨てぇ……センパイの背中はオレが守る!!」
友好条約を結べるかどうかの調査だということを、向こうの地に着くまでにこのアホな後輩にみっちり叩き込まねばならない。
その無駄な労力を悟り、勇者は痛み始めた頭を抱えたのだった。
***
「だぁーっはっはっは!! 売り切れ続出? 刷っても刷っても片っ端から売れてく!? 笑いが止まらんねこりゃ!!」
まるで自分の部屋のように執務室のソファで足を組んでいるリカルドが、入って来た私に片手を軽く上げながらも通信魔導器を耳に当て誰かと――たぶん向こうの新聞社さんと話をしている。私はその向かいに腰かけてバサリと号外新聞を広げてみた。しかし冷静になって考えてみれば、こんな政府に喧嘩売るような記事をよく載せてくれたものだ。
「あ? 結果論で話すなって? いいじゃねぇか、俺とおたくの仲だろう。おい怒るなよ、わかったわかった、例のデータは責任持って後でそっちに送り返しておくから」
…………やっぱり正攻法とは言えないやり口だった可能性が。向こうの新聞社さんに会う事があったらお詫びの菓子折りでも渡しておこう。
「じゃ、調査に来たら『報道の自由』を主張して、最終的には俺の責任にしておけ。しばらくはこっちに居るつもりだから。あぁ、あぁ、次の記事もコウモリに運ばせる」
話を聞く限り、号外のインパクトは相当な物だったようだ。これでトゥルース新聞社の名も爆発的に広がったことだろうし、今後もその新聞社を通して私たちのいいイメージをアピールできる事だろう。
ここでチラリと私を見たリカルドは、ニヤぁっと笑って電話口の向こうにこう伝えた。
「もし本当にヤバくなったらアンタら新聞社ごとこっちの国に来るってのも悪くないかもな、何たって今回の作戦の要だ、魔王サンも快く受け入れてくれるってよ」
なぬっ!? それは聞いてない、言ってない。いやまぁ、私たちの責任で追われるような事になったらそりゃ受け入れるけど。
私の物言いたげな視線を感じたのだろう、リカルドは軽く笑って相手との会話を締めくくり通信を終えた。
「国民の反応は上々。城からのアクションはまだ何もないが、予想だと新聞社に調査が入るか――まぁ少なくとも俺は指名手配されるだろうな」
「指名手配って……本当に良かったの?」
「悪いと思うんなら、早いとこ国として認められてこの号外記事を『世紀の大正義報道』にしてくれや」
前回は手にするだけで食べなかったラスプと手首ちゃんお手製のクッキーを口に放り込みながら彼は軽く言う。そうだ、リカルドを犯罪者のままにさせないためにも頑張らなくちゃ。
「ま、これで俺は一気に売れっ子ライターだけどな! もう朝から「ウチのとこにも記事を書いてくれ~」って他の新聞社からコンタクトがじゃんじゃん来てワハハハ」
前言撤回。この人ならどんな環境でも生きていける気がする。
「トゥルース社と専属契約結んでるけど、別名義で書くかぁ~? ダハハハハ」
「あなたがこの国に飛び込んできた理由が何となくわかった気がするわ……」
「先見の明と度胸があったってことだろ? そんなに褒めるな、照れるじゃないか」
軽い調子で立ち上がった彼は、続報の記事を書くため取材に出かけると言う。去り際に思い出したかのように振り返り、次のような要望を出した。
「そういや、住むところはこの城以外にはねぇのか? 俺もしばらくこっちに居を構えるつもりだが城下町としてもうちょい体裁整えた方がいいぜ、その方が記事を書くときもサマになるからな」
それだけ言い残し、出かけて行く。
うーん、城を中心にした城下町づくりか……確かに今のままじゃお城があって、ちょっと離れた位置に下の村があるだけだ。
下の村って呼び方もアレだし、いっそこちらに上がってくるようにメインストリートを作って、その両脇に色んなお店とか家を建てて、ゆくゆくはそれらを城壁で囲って大きな城下町にしちゃえばいいんじゃないかな。
「う……」
そこまで考えた私は、紙にでも構想をまとめておこうと立ち上がりかけてクラりとめまいを感じた。
やだな、ここのところずっとこうだ。疲れでも溜まってきてるのかな……いいや、でも休んでる場合じゃないし。建国宣言をして、戦争回避できるかどうかここからが正念場なんだからしっかりしなきゃ。
「主様、どうかなさいましたか?」
後ろからの声にゆるゆると振り返ると、ルカが怪訝そうな顔つきで入ってくるところだった。彼は抱えていた書類を真ん中のローテーブルに置くと私の側によってきて額をぺたりと触る。
「体調が優れませんか? 熱はないようですけど」
◇◆◇
【手首ちゃんの一言コーナー】
手首です。リカルドさんがクッキーを食べてくれたそうで…! 前回食べなかったのはまぁ警戒してたのでしょうが(見知らぬ魔族領で出された怪しいクッキーですから当然と言えば当然ですわね)先ほどすれ違った際、おいしかったと言ってくれました!ラスプ様にもお伝えしておきましょう。
……それにしても、初めて対面した際わたくしの姿に驚かなかったんですよね、彼。指さされて思いっきり爆笑はされましたけど
0
あなたにおすすめの小説
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる