召しませ我らが魔王様~魔王軍とか正直知らんけど死にたくないのでこの国を改革しようと思います!~

紗雪ロカ@失格聖女コミカライズ

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37.建築工房スライム(株)

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「えへへー、ボクこういうの好きなんだ。今までは小さな模型で作ってたけど、ちゃんと重さとかも計算して組み方を考えてあるから、そのまんま大きくしても大丈夫なはずだよ。問題が発生したらそのつど考えるね」

 幼い少年の意外な才能に驚いていると、彼は計画をどんどん現実味の有る物へと進化させていく。

「材料は南の森から切り出したのをそのまま川に流して下流で受け取ればラクだと思うんだ。グリ兄ぃそういうの得意だよね? 手伝ってくれる?」
「え~? いいよ。スライム何匹か貸してね」

 面倒だから指示はよろしく~、と考えることを完全放棄したグリが手をやる気なく振る。協力者を得られた小さな棟梁は、期待に満ち満ちたまなざしを私へと向けてきた。

「どうかな、アキラ様!」

 あ、そっか。一応私がリーダーだっけ。許可なしに工事は始められないってことね。

「……」

 確かに、攻めてくるならこの橋を直して渡ってくる可能性が高い。なら先回りして押さえるべき、監視の意味も含めてここがベストな位置かもしれない。

 しばらく考えていた私は、いくつか修正点を追加することにした。

「わかった、やってみよう。でも外見は威嚇するような物じゃなくて、親しみのあるデザインにできる?」
「親しみのある?」

 きょとんと首を傾げたライムに分かりやすいようにっていうと、えーと

「ライムは遊園地って行ったことある?」

 そう尋ねると彼はパッと顔を明るくさせ、元気よく頷いた。

「あるよっ、このあいだ人間領で移動遊園地やっててね、この姿でこっそり入り込んだよ。楽しかったぁ」
「なるほど、この前の帰りが遅かったのはそのせいですか」

 冷えたルカの声にぎくっと跳ねるライムだったけど、いいのいいの。今はそれが大事だから。

「そのデザイン、真似できる?」

 一瞬、理解が追いつかずに固まっていた彼だけど、次第に背景に花でも咲いてるんじゃないかってぐらいパァァと顔が輝いていく。

「いいのっ? そんな楽しそうなことしちゃっていいの!?」
「うん、もう思いっきり浮かれたデザインにしちゃって」
「あっ、じゃあここはこうして……こっちはこんなのも付けちゃうとか!」
「いい! すごくいいよ!」

 盛り上がる私たちをよそに、他の幹部3人は怪訝な表情で顔を見合わせている。ふっふっふ、まぁ見てなさいって。

「あ、それとね。橋も同時進行で直せる?」
「え、直しちゃうの?」

 嬉々として設計図面に修正を入れていた匠が振り返る。それに反応したのは会話に入れずつまらなそうな顔をしていたラスプだった。

「敵の侵入経路をご丁寧に用意してやってどうすんだよ、アホか?」
「アホとは失礼ね。入ってくるのは敵だけじゃないでしょ? 私はこの国を鎖国にする気はないんだから」

 そのための砦だからと続ける。うん、砦っていうよりは『関所』の方が意味合いとしては近いかもしれない。

「だから、跳ね橋にして、こちら側からしか操作できないようにしよう」
「羽根橋?」

 あれ、こっちの世界には無い?

 揃って不思議そうな顔をする幹部たちに説明するため、私はライムから羽根ペンを借りて簡単な絵を描いてみせる。

「だからこう……可動式の、パタンとかけられて、必要が無いときは鎖で上げておけば渡れないように出来る」

 私も写真でしか見たことないけど、と顔を上げると、みんな感心したようなまなざしをこちらに向けていた。棟梁が大きな目を零れ落ちそうなほど見開きながら口を開く。

「アキラ様、天才……?」
「や、やだ、やめてよも~、私の居た世界では普通にあったんだってば」
「ぅぐっ」

 照れながら隣にいたラスプの肩をバシッと叩く。天才だなんて私のガラじゃないしぃ~、地球の先人たちの知恵に感謝しなきゃ。

 私の絵を見てしばらくブツブツと計算していたライムだったけど、ニコッと笑うと顔を上げた。

「わかった! この絵をヒントに作ってみる。明日から早速とりかかるよっ」
「うん、よろしくね」

 さてと、これで今日決める事は完了かな。残りのわーむ君ステーキを食べなきゃ~うふふ~

「魔王さまぁ~」

 その時、作戦会議が終わったのを見計らったように、遠くで待機していたらしいスライムがびよんびよんと跳ねてきた。

 彼(?)は『ぼよっ!』と跳ねたかと思うとライムの手の中に収まり、私に向かって報告を始める。

「手首ちゃん様からの伝言です、『フルアーマーさんの施設が完成したので、お戻りになりましたらお立ち寄り下さい』との事でした~」

 おぉ~! なんというグッドタイミング! 伝令スライムにお礼を言った後、私は村人やゴブリンたちにも聞こえるよう、手をメガホンの形にして声を張り上げた。

「みんなちゅーもーく!! これから綺麗になったお城に招待しますので、特に用事のない人はぜひ来てくださぁぁーい!!」
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