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20.れっつ、ネクロマンシぃぃぃー!!
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ご覧頂こう、このおどろおどろしさ全開の墓場を。私がよく知ってる日本のお墓と違って、丘のあちこちに木で組まれたクロスが突き刺さっている。たぶん生活水準的に土葬なんだろう、この暗く冷たい土の下にはホヤホヤの死体が眠っているはずだ。何がホヤホヤなのかは ※お察し下さい。
「死者蘇生をする心構えが出来たようですね」
相変わらず人を喰ったような笑みを浮かべるルカが涼しい双眸を細めてこちらを振り返る。私は両の指先を合わせながら言い訳するように答えた。
「気分的には全力で拒否したいところなんだけどね……さすがにこの状況を見せられたら活用できる手はしないとダメかなって」
死者の眠りを妨げるのは気分が進まないけど、仏さま仏さま、あなたたちのご遺族も苦労してるみたいなんです。ちょっくら起きて協力してくれませんかね。あ、いや、とりあえず開拓だけ手伝って頂いて、軌道に乗りましたらまた安らかに供養いたしますので、ハイ、ハイ。なんまんだぶなんまんだぶ
そんな一方的な会話を脳内で繰り広げていると、丘の上におおきくせり出た木の枝に視線が留まる。曲がりくねった枝の中ほど、まるでコウモリのように逆さまにぶら下がった白い姿は見覚えのあるものだった。
「グリ……」
夜の墓場で死神に遭遇だなんて、状況だけ見たら逃げたくなること間違いなしなんだけど、そんな緊迫感は一切ない。スヤァと寝ている彼は枝から離れ、ゆるゆると落ちてきたかと思うと地面に突っ伏した。
「んぁ?」
むくりと起き上がったグリは、目の前に私とルカが居ることに気付いて二、三度目を瞬く。そのまま頭をぼりぼりと掻いていたかと思うとボソリと言った。
「墓場の見回り、異常ありませーん」
「素直にサボってたって言ったらどうなの!」
まったくもう、ライムだけに働かせて何やってるんだか。にらみつける私を見て、ぼんやりとした表情のままグリはアハハと笑う。……こんな人だっけ?
「そろそろ来る頃かと思って、先回りしてた」
「え」
「ネクロマンサーになるんでしょ、魂入れるの手伝うよ」
死体を蘇生しても魂が無ければ動きませんから。と、ルカが耳打ちしてくれる。そうか、私がアキュイラ様の知識で知り得たのは遺体を修復する術(すべ)だけ。魂がなくちゃそもそも動かないんだ。
よっこらしょと立ち上がったグリは、のっそりとした動きでいつの間にか取り出していた鎌をスッと掲げた。
「ウィル・オー・ザ・ウィスプ かもーん」
ゆるい掛け声と共に鎌が青白く光りだす。すると墓場の上空にまるでホタルのように青~ライトグリーンの光がぼんやりと現れた。
「うわっ、ヒトダマ!」
「彷徨える霊魂たちですね、主様くれぐれも遺体の修復は完全には行わないように」
「う、うん」
・死者蘇生の心得その1、遺体の修復は完璧にはしないこと。
亡くなった人たちの中には怨みやこの世でやり残したことの無念を抱えている者も少なくない。そんな魂に生きている時と同じ肉体を与えたらどうなるか? 言うことを聞かずに飛び出して行ってしまうだろう。だからアンデッド系には足が遅かったり、火に弱いといった弱点がわざと作られている。呼び出したネクロマンサーが反乱起こされてやられないようにするためだ。
……と、言った知識は全部アキュイラ様の記憶から得たものだったりする。
(うぅ、緊張する)
地面に膝をついた私は両の手のひらをひんやりと湿った土に当てる。スッと目を閉じて手順を思い出し感覚を広げていった。
……視える。目で見えるわけじゃないんだけど、確かにこの土の下にはたくさんの遺体が埋まっているのを感じる。それらのグ、グチャグチャな塊に向けて、少しずつ元の形になるようなイメージを投影していく。
骨、筋肉、血管、神経、脂肪、皮膚――
「……」
私の中の『何か』がグルリと動き、手のひらを通して地面に浸透していく。う、うそ、知識としては理解してたけどホントにできちゃうの!? 震えながら作業を終えた私は後ずさるように一歩退いた。見計らったグリが魂たちに命令を下して土の下の遺体へと潜らせた。事も無げにあっさりと次を促す。
「いいよ、合図を」
後はもう私の号令一つで土の下からボコボコ出てくるはず。でも……うぅ、覚悟はしてたけどやっぱり嫌だぁぁ~!!
ふんぎりがつかず、あーだの、うーだの言っていると、ルカが優しく肩に手を置いて励ましてくれた。
「僭越ながらアドバイスを、号令はとにかくできるだけ『大きな』声で、『大げさ』に、『力強く』かけるのがポイントです」
「ルカぁ……」
我ながら情けない声でそちらを見ると、穏やかな顔をしたバンパイアはこんなことを言った。
「大丈夫、アキュイラ様の生まれ変わりである貴女ならきっとできるはずです」
耳に心地よい声が心を少しだけ落ち着かせる。……うん、確かに。やるからには全力で! 中途半端なのが一番ダメだ!
「やってみる!」
「その調子です。声は大きく」
「はい!」
「力強く!」
「はい!」
「大げさななまでに!」
すぅっと息を吸い込んだ私は数歩進み出る。そして両手をバッと天に掲げるとお腹の底から声を出した。
「れっつ、ネクロマンシぃぃぃー!!」
「死者蘇生をする心構えが出来たようですね」
相変わらず人を喰ったような笑みを浮かべるルカが涼しい双眸を細めてこちらを振り返る。私は両の指先を合わせながら言い訳するように答えた。
「気分的には全力で拒否したいところなんだけどね……さすがにこの状況を見せられたら活用できる手はしないとダメかなって」
死者の眠りを妨げるのは気分が進まないけど、仏さま仏さま、あなたたちのご遺族も苦労してるみたいなんです。ちょっくら起きて協力してくれませんかね。あ、いや、とりあえず開拓だけ手伝って頂いて、軌道に乗りましたらまた安らかに供養いたしますので、ハイ、ハイ。なんまんだぶなんまんだぶ
そんな一方的な会話を脳内で繰り広げていると、丘の上におおきくせり出た木の枝に視線が留まる。曲がりくねった枝の中ほど、まるでコウモリのように逆さまにぶら下がった白い姿は見覚えのあるものだった。
「グリ……」
夜の墓場で死神に遭遇だなんて、状況だけ見たら逃げたくなること間違いなしなんだけど、そんな緊迫感は一切ない。スヤァと寝ている彼は枝から離れ、ゆるゆると落ちてきたかと思うと地面に突っ伏した。
「んぁ?」
むくりと起き上がったグリは、目の前に私とルカが居ることに気付いて二、三度目を瞬く。そのまま頭をぼりぼりと掻いていたかと思うとボソリと言った。
「墓場の見回り、異常ありませーん」
「素直にサボってたって言ったらどうなの!」
まったくもう、ライムだけに働かせて何やってるんだか。にらみつける私を見て、ぼんやりとした表情のままグリはアハハと笑う。……こんな人だっけ?
「そろそろ来る頃かと思って、先回りしてた」
「え」
「ネクロマンサーになるんでしょ、魂入れるの手伝うよ」
死体を蘇生しても魂が無ければ動きませんから。と、ルカが耳打ちしてくれる。そうか、私がアキュイラ様の知識で知り得たのは遺体を修復する術(すべ)だけ。魂がなくちゃそもそも動かないんだ。
よっこらしょと立ち上がったグリは、のっそりとした動きでいつの間にか取り出していた鎌をスッと掲げた。
「ウィル・オー・ザ・ウィスプ かもーん」
ゆるい掛け声と共に鎌が青白く光りだす。すると墓場の上空にまるでホタルのように青~ライトグリーンの光がぼんやりと現れた。
「うわっ、ヒトダマ!」
「彷徨える霊魂たちですね、主様くれぐれも遺体の修復は完全には行わないように」
「う、うん」
・死者蘇生の心得その1、遺体の修復は完璧にはしないこと。
亡くなった人たちの中には怨みやこの世でやり残したことの無念を抱えている者も少なくない。そんな魂に生きている時と同じ肉体を与えたらどうなるか? 言うことを聞かずに飛び出して行ってしまうだろう。だからアンデッド系には足が遅かったり、火に弱いといった弱点がわざと作られている。呼び出したネクロマンサーが反乱起こされてやられないようにするためだ。
……と、言った知識は全部アキュイラ様の記憶から得たものだったりする。
(うぅ、緊張する)
地面に膝をついた私は両の手のひらをひんやりと湿った土に当てる。スッと目を閉じて手順を思い出し感覚を広げていった。
……視える。目で見えるわけじゃないんだけど、確かにこの土の下にはたくさんの遺体が埋まっているのを感じる。それらのグ、グチャグチャな塊に向けて、少しずつ元の形になるようなイメージを投影していく。
骨、筋肉、血管、神経、脂肪、皮膚――
「……」
私の中の『何か』がグルリと動き、手のひらを通して地面に浸透していく。う、うそ、知識としては理解してたけどホントにできちゃうの!? 震えながら作業を終えた私は後ずさるように一歩退いた。見計らったグリが魂たちに命令を下して土の下の遺体へと潜らせた。事も無げにあっさりと次を促す。
「いいよ、合図を」
後はもう私の号令一つで土の下からボコボコ出てくるはず。でも……うぅ、覚悟はしてたけどやっぱり嫌だぁぁ~!!
ふんぎりがつかず、あーだの、うーだの言っていると、ルカが優しく肩に手を置いて励ましてくれた。
「僭越ながらアドバイスを、号令はとにかくできるだけ『大きな』声で、『大げさ』に、『力強く』かけるのがポイントです」
「ルカぁ……」
我ながら情けない声でそちらを見ると、穏やかな顔をしたバンパイアはこんなことを言った。
「大丈夫、アキュイラ様の生まれ変わりである貴女ならきっとできるはずです」
耳に心地よい声が心を少しだけ落ち着かせる。……うん、確かに。やるからには全力で! 中途半端なのが一番ダメだ!
「やってみる!」
「その調子です。声は大きく」
「はい!」
「力強く!」
「はい!」
「大げさななまでに!」
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