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12-ヒロイン症候群(シンドローム)
140.少女たち、邂逅する。
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ガチャリと響いた音に、部屋の外でやきもきしていた者たちは弾かれたように立ち上がる。カーディガンを羽織り出てきた少女は、顔を真っ赤にしながらぺこりと頭を下げた。
「お騒がせしました……」
一瞬の間を置いて大歓声が上がる。少女たちは押し倒さん勢いで彼女に飛び掛っていった。
「ニチカーッッ!!」
「心配させおってこの愚か者ぉぉ」
遠慮なしにもみくちゃにされたニチカはよろめく。彼女の状態を思い出した周りは慌ててソファに誘導しそっと座らせた。その余りの衰弱ぶりに何かできないかと考える。
「なにも食べてないんだもの、体力が落ちてて当然よ。待ってて、今スープ持ってきてあげるから」
「出て行ってる者たちに連絡をして来ます」
「校長先生、手伝いますわ」
てんやわんやの騒ぎの中、ウルフィだけは前のめりに手を着いている少女の傍についていた。見上げた彼はその顔色に気づき指摘する。
「ねーねー、顔あかいよー?」
「うぅ……すごかった……」
「???」
頃合いを見て出てきたオズワルドが隣に座る。いつも通りのそっけない表情で師匠はフンと笑った。
「そのまま逝かれても困るからな。続きは体力が万全に戻ってからだ」
「あれ以上!? 無理!」
先ほどだけでも意識が飛びかけたと言うのに、まだ先があるというのか。
飛び跳ねるという大げさな反応を見た男はやれやれと首を振った。
「あの程度で音をあげてるようじゃ本番が思いやられるな」
「ほっ……!!! ぎゃー! 寄るなセクハラ魔!!」
抱えたウルフィを盾にしているとふいに背後から肩を叩かれた。振り仰ぎそこに居た人物を認めたニチカはそのままひっくり返りそうになってしまう。
「やぁ」
白いフードに黒い髪。利発そうな顔つきをした少年。
これまでさんざん道中を邪魔してきた張本人の登場に、呼びながら後ずさる。
「ファントム――っっ!!」
「ぐふッ」
ドンと背中でアタックされ、受け止めたオズワルドからヘンな声が出る。
だがニチカはそれにも気づかず叫び続けた。
「いやーっいやーっいやーっっ!! なんでここに居るの!? 諦めたんじゃなかったの!?」
「いや、それがさ、その……」
気まずそうに頬を掻く少年にあれ?と叫ぶのをやめる。ついでに言うと抱えたウルフィの尻尾がパタパタと揺れている。
よしっ、と気合を入れたらしいファントムは、もげそうな勢いで頭を下げた。
「とりあえずごめん!」
「へっ?」
「よし謝った。今はこれで勘弁して、あとでいくらでも謝罪するからさ」
唐突な謝罪に面食らう。何に対して謝ったのかすら判らずに居ると、食堂からポットごとスープを抱えたメリッサが戻ってきた。彼女はそのままファントムを無造作に押しやる。
「はいはいユーナ様、ちょっとどいて。スープ持ってきたんだから冷めちゃう」
「コンポタ? コンポタ?」
「コンソメと2種類持ってきたんで余った方飲みます? ニチカはどっちがいい?」
あんぐりと口を開けた少女は、今しがたさらりと会話に混ざり込んだ人名を聞き返す。
「い、今なんて?」
「え、だからコンポタとコンソメのどっちが――」
「そこじゃない!」
***
衝撃の事実を聞かされたニチカは、野菜盛りだくさんのコンソメスープをすすりながらため息をついた。
ユーナが優奈という日本人だったこと。
イニとの確執から仲違いしてしまったこと。
自分はそれに巻き込まれる形で召喚されたこと。
「もうどこからつっこんで良いのやら……」
「全部~」
「元凶が言わないでくださいっ!」
木のスプーンを無邪気に掲げながら笑うユーナに脱力するしかない。あとコンポタが飛び散るからやめてほしい。
それを聞いていた師匠が横で納得したようにまとめた。
「なるほど。つまりお前ははた迷惑なバカップルの痴話げんかに巻き込まれたということか」
「ねぇやめて、お願いやめて……」
両手で顔を覆って嘆く。そんな悲しいトリップ理由があってたまるか。
もっとこう世界を救うとか、イケニエにされるとか――どっちも微妙に満たしてるところが腹立たしい。
行儀悪くスプーンをもぐもぐと咥えていたユーナがそこから話を進めようと向かいの席から乗り出してくる。
「でだ。このままだとヒッジョーにマズイ状況なんだよねぇ、キミの器も奪われたまま、僕はいつ引っ張られるか分かったもんじゃない」
そう、生きる気力が回復したことで多少は安定したものの、それでもふわふわと地に足が着いていないような感覚が今も続いている。妙に不安定な足場に立たされているというのが近いだろうか。少しの衝撃でふっ飛んでしまうのではないかと急に不安になる。
「……」
ニチカは無意識のうちにオズワルドの肘部分の布地を掴んでいた。それに気づいた彼は少しだけ驚いたような顔をしたが特にコメントすることなくそのままにさせてくれる。
……本当は手を握って欲しかったのだけどこれで我慢する。
「イニを見つけ出してボッコボコにするのが手っ取り早いんだけど」
「まだ足取りは掴めていないのか」
今もこの場に居ない精霊たちとシャルたち飛行組。彼らの報告によるとどこを巡っても彼の気配すらないらしい。あの器強奪の現場である『永久の神殿』にも行ってみたがもぬけの殻だったという。
「もうこうなったら僕を餌におびき寄せるしか……ん? なんだなんだ」
その時、部屋の外がにわかに騒がしくなり、今まさに思い浮かべていた調査組が帰ってきた。それも一人二人ではなく上で仕事をしていはずの校長やメリッサやアンジェリカまで全員が雁首並べてぞろぞろと入ってくる。
「うわ、なんだよそのお通夜みたいな雰囲気は」
復活したニチカを見て少しだけ表情を明るくした彼らだったが、すぐにげんなりとした表情に戻ってしまう。
代表として進み出たシャルロッテが何かの手紙を差し出してくる。白い小奇麗な封筒に金の縁取りがされたそれをニチカは受け取り裏返してみた。招待状、とだけ書いてある。
「なんかね、ホウキで飛んでたらスッと飛んできて手に収まったのよ」
「同じく」
開けてと促され、すでに糊付けが剥がれている蓋を開ける。中に入っていたコースターほどの大きさの四角い厚紙を取り出すと、パァァと光があふれ立体映像がその上に現れた。
『さて、これを受け取ったという事は君は我々の関係者だということだ』
「出やがったなーっ!!」
金色の羽根を生やした男のホログラムに、向かいから机にダンッと足をかけたユーナがこぶしを振り上げる。慌ててメリッサ達が両脇から止めるがそんなことは意に介さずにホログラムは満面の笑みで続けた。あらかじめ録画されていた物の再生なのだろう。
『ようやく準備が整えられたのでな、式には是非諸君らに参列してもらいたいと思っている。場所は『永久の神殿』日取りは三日後の早朝だ』
「式ってまさか……」
嫌な予感がしたニチカは目をこらしてみる。輝く笑顔のイニの向こう側に、白いウェディングドレスを着せられたユーナの肉体が横たえられていた。
『この私とユーナの婚儀にドレスコードは必要ない、見届けてくれさえすれば良いのだ。では待っているぞ!』
それだけ言い残し立体映像は光にほどけて消えてしまった。
「……」
「……」
誰も何も言わない。言えない。口を開くことすらためらわれるのは空気中にぞわりと粟立つような気配が充満しているから。
「ふ、ふふ」
俯きブルブルとこぶしを震わせていた少年の周りに黒いマナが渦巻きだす。黒い獣のようなそれを見ていると本能的な恐怖を引きずり出されるのを感じた。
そして彼は吼える――
「っっンの色ボケストーカー勘違い男がああああ!!!」
「お騒がせしました……」
一瞬の間を置いて大歓声が上がる。少女たちは押し倒さん勢いで彼女に飛び掛っていった。
「ニチカーッッ!!」
「心配させおってこの愚か者ぉぉ」
遠慮なしにもみくちゃにされたニチカはよろめく。彼女の状態を思い出した周りは慌ててソファに誘導しそっと座らせた。その余りの衰弱ぶりに何かできないかと考える。
「なにも食べてないんだもの、体力が落ちてて当然よ。待ってて、今スープ持ってきてあげるから」
「出て行ってる者たちに連絡をして来ます」
「校長先生、手伝いますわ」
てんやわんやの騒ぎの中、ウルフィだけは前のめりに手を着いている少女の傍についていた。見上げた彼はその顔色に気づき指摘する。
「ねーねー、顔あかいよー?」
「うぅ……すごかった……」
「???」
頃合いを見て出てきたオズワルドが隣に座る。いつも通りのそっけない表情で師匠はフンと笑った。
「そのまま逝かれても困るからな。続きは体力が万全に戻ってからだ」
「あれ以上!? 無理!」
先ほどだけでも意識が飛びかけたと言うのに、まだ先があるというのか。
飛び跳ねるという大げさな反応を見た男はやれやれと首を振った。
「あの程度で音をあげてるようじゃ本番が思いやられるな」
「ほっ……!!! ぎゃー! 寄るなセクハラ魔!!」
抱えたウルフィを盾にしているとふいに背後から肩を叩かれた。振り仰ぎそこに居た人物を認めたニチカはそのままひっくり返りそうになってしまう。
「やぁ」
白いフードに黒い髪。利発そうな顔つきをした少年。
これまでさんざん道中を邪魔してきた張本人の登場に、呼びながら後ずさる。
「ファントム――っっ!!」
「ぐふッ」
ドンと背中でアタックされ、受け止めたオズワルドからヘンな声が出る。
だがニチカはそれにも気づかず叫び続けた。
「いやーっいやーっいやーっっ!! なんでここに居るの!? 諦めたんじゃなかったの!?」
「いや、それがさ、その……」
気まずそうに頬を掻く少年にあれ?と叫ぶのをやめる。ついでに言うと抱えたウルフィの尻尾がパタパタと揺れている。
よしっ、と気合を入れたらしいファントムは、もげそうな勢いで頭を下げた。
「とりあえずごめん!」
「へっ?」
「よし謝った。今はこれで勘弁して、あとでいくらでも謝罪するからさ」
唐突な謝罪に面食らう。何に対して謝ったのかすら判らずに居ると、食堂からポットごとスープを抱えたメリッサが戻ってきた。彼女はそのままファントムを無造作に押しやる。
「はいはいユーナ様、ちょっとどいて。スープ持ってきたんだから冷めちゃう」
「コンポタ? コンポタ?」
「コンソメと2種類持ってきたんで余った方飲みます? ニチカはどっちがいい?」
あんぐりと口を開けた少女は、今しがたさらりと会話に混ざり込んだ人名を聞き返す。
「い、今なんて?」
「え、だからコンポタとコンソメのどっちが――」
「そこじゃない!」
***
衝撃の事実を聞かされたニチカは、野菜盛りだくさんのコンソメスープをすすりながらため息をついた。
ユーナが優奈という日本人だったこと。
イニとの確執から仲違いしてしまったこと。
自分はそれに巻き込まれる形で召喚されたこと。
「もうどこからつっこんで良いのやら……」
「全部~」
「元凶が言わないでくださいっ!」
木のスプーンを無邪気に掲げながら笑うユーナに脱力するしかない。あとコンポタが飛び散るからやめてほしい。
それを聞いていた師匠が横で納得したようにまとめた。
「なるほど。つまりお前ははた迷惑なバカップルの痴話げんかに巻き込まれたということか」
「ねぇやめて、お願いやめて……」
両手で顔を覆って嘆く。そんな悲しいトリップ理由があってたまるか。
もっとこう世界を救うとか、イケニエにされるとか――どっちも微妙に満たしてるところが腹立たしい。
行儀悪くスプーンをもぐもぐと咥えていたユーナがそこから話を進めようと向かいの席から乗り出してくる。
「でだ。このままだとヒッジョーにマズイ状況なんだよねぇ、キミの器も奪われたまま、僕はいつ引っ張られるか分かったもんじゃない」
そう、生きる気力が回復したことで多少は安定したものの、それでもふわふわと地に足が着いていないような感覚が今も続いている。妙に不安定な足場に立たされているというのが近いだろうか。少しの衝撃でふっ飛んでしまうのではないかと急に不安になる。
「……」
ニチカは無意識のうちにオズワルドの肘部分の布地を掴んでいた。それに気づいた彼は少しだけ驚いたような顔をしたが特にコメントすることなくそのままにさせてくれる。
……本当は手を握って欲しかったのだけどこれで我慢する。
「イニを見つけ出してボッコボコにするのが手っ取り早いんだけど」
「まだ足取りは掴めていないのか」
今もこの場に居ない精霊たちとシャルたち飛行組。彼らの報告によるとどこを巡っても彼の気配すらないらしい。あの器強奪の現場である『永久の神殿』にも行ってみたがもぬけの殻だったという。
「もうこうなったら僕を餌におびき寄せるしか……ん? なんだなんだ」
その時、部屋の外がにわかに騒がしくなり、今まさに思い浮かべていた調査組が帰ってきた。それも一人二人ではなく上で仕事をしていはずの校長やメリッサやアンジェリカまで全員が雁首並べてぞろぞろと入ってくる。
「うわ、なんだよそのお通夜みたいな雰囲気は」
復活したニチカを見て少しだけ表情を明るくした彼らだったが、すぐにげんなりとした表情に戻ってしまう。
代表として進み出たシャルロッテが何かの手紙を差し出してくる。白い小奇麗な封筒に金の縁取りがされたそれをニチカは受け取り裏返してみた。招待状、とだけ書いてある。
「なんかね、ホウキで飛んでたらスッと飛んできて手に収まったのよ」
「同じく」
開けてと促され、すでに糊付けが剥がれている蓋を開ける。中に入っていたコースターほどの大きさの四角い厚紙を取り出すと、パァァと光があふれ立体映像がその上に現れた。
『さて、これを受け取ったという事は君は我々の関係者だということだ』
「出やがったなーっ!!」
金色の羽根を生やした男のホログラムに、向かいから机にダンッと足をかけたユーナがこぶしを振り上げる。慌ててメリッサ達が両脇から止めるがそんなことは意に介さずにホログラムは満面の笑みで続けた。あらかじめ録画されていた物の再生なのだろう。
『ようやく準備が整えられたのでな、式には是非諸君らに参列してもらいたいと思っている。場所は『永久の神殿』日取りは三日後の早朝だ』
「式ってまさか……」
嫌な予感がしたニチカは目をこらしてみる。輝く笑顔のイニの向こう側に、白いウェディングドレスを着せられたユーナの肉体が横たえられていた。
『この私とユーナの婚儀にドレスコードは必要ない、見届けてくれさえすれば良いのだ。では待っているぞ!』
それだけ言い残し立体映像は光にほどけて消えてしまった。
「……」
「……」
誰も何も言わない。言えない。口を開くことすらためらわれるのは空気中にぞわりと粟立つような気配が充満しているから。
「ふ、ふふ」
俯きブルブルとこぶしを震わせていた少年の周りに黒いマナが渦巻きだす。黒い獣のようなそれを見ていると本能的な恐怖を引きずり出されるのを感じた。
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