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5-潜入!魔法学校
49.少女、見つかる。
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(あぁ言ってたけど、ムチャなことしてないかなぁ。心配)
授業に出席したニチカは頬杖をつきながら悶々と悩んでいた。となりにいたメリッサが羊皮紙と筆記具を脇に寄せて乗り出して来る。
「目の下に隈できてるよ、眠れなかった?」
「えっ、ほんと?」
慌てて目の下辺りを触ってみるがよく分からない。手鏡の一つでも無いかと探していると好奇心丸出しな声が側頭部を殴りつけた。
「もしかして、あの執事に寝かせてもらないくらい激しい夜を過ごしたとか!?」
ゴンッと、ずり落ちた頭部が机に落ちて大げさな音を立てる。呆れながらそちらに顔を向けるとキラキラと輝く瞳がそこにあった。一応、確認しておこう。
「メリッサ……執事の意味わかってる?」
「主人の『お・世・話』をしてくれるんでしょう? キャー!」
顔に手をあて恥じらう仕草を見せるが、確実にこの顔はあらぬ妄想をしている。これはダメだ、言葉の選択を誤れば話を飛躍させてしまうタイプの表情だ。ニチカが痛む頭を押さえどう説明しようと考えている内に、メリッサは鼻息荒く迫ってきた。
「私、小説とか雑誌とか読んでいろいろ知ってるんだから。ねぇ、彼は上手いの? 気持ちイイ?」
その言葉に昨夜の記憶が蘇ってしまう。薄明りに光る青いまなざし、触れた箇所に残る唇の感触、自分の物とは違う男の香りが意識まで呑み込むように――
反射的に顔を赤くしたニチカを見て、学友は心底嬉しそうに叫んだ。
「あー、やっぱり!」
「ち、違うってば!」
まったくこのお嬢さんは、思春期の中学生でもここまで明け透けには言わないだろうに。ニチカは五感に残る残滓を振り払い、前もって決めておいた『執事ウィル』の設定を記憶の引き出しから取り出した。
「彼はお父様の部下の息子で、私がここに入るからって雇っただけだよ。知り合ってまだ一週間も経ってないって」
「えぇー、なぁんだ残念。あんなにカッコいいのになぁ」
肩を落としたメリッサは、少しふくよかな拳をグッと握りしめ、力強く言う。
「これからに期待だねっ、アンジェリカ」
「……」
どうしろと言うのだ。返答に困っているとメリッサは顎に人差し指を当て、何かを思い出そうとするかのように天井を見上げた。
「それにしてもあの顔、やっぱりどこかで見たことあるんだよなぁ、それもこの学校のどこかだったよーな」
「ほらっ、そんなことより授業に集中しなくちゃ!」
オズワルドは元々ここの生徒だったという。もしかしたらどこかに在籍していた痕跡が残っているのかもしれない――が、それは変装して潜入している立場上バレてはまずい事だ。慌てて話を逸らそうとしたニチカは、ホール中央のくぼ地になっている教壇を指す。優等生のメリッサなら乗ってくるかと思ったのだが、肩をすくめた彼女はこう返してきた。
「いいの、だってこの授業二回目だもの」
「二回目?」
彼女の視線を追って、すり鉢状になっているホール中央の教壇に立つ人物を見る。
『で、あるからしてー、魔力自体には何の力もなくー、精霊の力を借りることでようやく発動をー』
恐ろしく平坦な声で授業をしているのは、少し頭の寂しいビア樽のような体型の教授だった。頬杖をついてため息をついたメリッサは、理由を話し出した。
「あれも五老星の一人でね、最近はボケちゃってるのか何なのか、同じ授業を連続でやったりするのよ」
あぁ、とそこで気がついたような彼女は、すまなそうに手を合わせた。
「そっか、アンジェリカにとっては初めての授業よね。ジャマしてごめんなさい」
「あ、うん、ありがとう」
メリッサはそう言って自分の席に戻り大人しくしてくれる。別に彼女とのおしゃべりが嫌いなわけでは無かったが、根掘り葉掘り聞き出されるのは勘弁してほしかったので少しホッとする。
ぼんやりとしているとうっかり昨夜のことを思い出してしまいそうなので、ニチカは羽根ペンを手に授業に集中することにした。教授の声は音声を拡散する道具でも使っているのか、距離はあるのにここまでハッキリと届く。
『つまり、我々の体は『魂』と『体』そしてそれらをつなぎ合わせる『心の器』の三つで構成されている』
(魂と、体。その二つをつなぎとめるのが心の器)
異世界から来た少女はメモを取りながらこの世界の理を学んでいく。それまでの平坦なだけだった教授の声が、少し抑揚を増した気がした。
『心の器は魂の入れ物。その形は人それぞれで、たとえ他人の器に魂が入り込もうとしても溢れ出るか、逆に器の形に合わせようと魂が変形してしまうだろう。精神の入れ替えが上手くいかない原因はここにあるとされている』
と言うことは、魂をひっぺがして実験した人が居たのか。オズワルド辺りならやっていてもおかしくは無いなと思いながら、思いのほか授業にのめり込んでいく。
『また、器は我々が魔導を行使する場としても考えられている。精神の魔力を大気中のマナと混ぜ合わせる場が『心の器』というわけだ』
つまり、心の器とは魔力を魔法に変換するコンバーターのような役割を持っているらしい。この世界の人間ではないが、自分にもその器官はあるのだろうかとニチカはふと考える。いや、なければ魔法が使えないから、おそらくは有るのだろう。
『心の器は通常具現化されることはないが、皆もよく知っている女神ユーナが精霊集めをした際に自らの器を取り出し、そこに彼らのチカラを集めたとされている。まぁ実際は魔導球か何かだったのだろうが』
突然出てきた単語に、ニチカはドキッとして腰のベルトを触った。魔導球は目立つのを避け部屋に置いて来たのでそこには無い。
精霊を悪者から解放するため旅をした女神ユーナ。今、自分がやっているのはその再現とは言えないだろうか。桜花国で子供向けの絵本を読んだあと、精霊つながりと言うこともあり師匠に聞いてみたのだが、ユーナの話はもはや古すぎて嘘か本当かわからない神話のような話しか残っていないと言う。
世界を救うなど、自分がそんな大それたことをしても良いのかと思うが、託されたのだからやってみるしかない。そこでふと、金色の大きな翼を思い出した。
(そういえばイニ、あれから接触がないな。頼むだけ頼んどいて後はほったらかしって、どうなんだそれ)
しかしまたセクハラまがいの事をされても困るので良しとする。機会があればあちらから接触してくるだろう。そう結論を出したところで、授業の終了を告げる鐘が鳴った。教授が持っていた本をパタンと閉じて講義を締めくくる。
『おっと、ではここまでにしよう。今日いったことを各自復習しておくように』
「って前回もやったけどね」
返事をするように、隣でメリッサが苦笑しながら言う。立ち上がった彼女はニチカに向かって明るく言った。
「お昼いこっか。今日は食堂のBランチが美味しいんだ」
「うん」
ところがホールから出ようとしたところで、ニチカの顔の前に光の文字が現われた。またかとうんざりした少女は手で払おうとするのだが内容を一瞥して動きを止めた。先を行くメリッサが振り返り不思議そうに尋ねてくる。
「アンジェリカ? どうかした?」
「……ごめん、先に行っててくれる? ちょっと教授に質問したいことが有るの」
メリッサは素直にその言葉を受け取り、特に疑うこともせず了承した。
「勉強熱心ね、かんしんかんしん。それじゃあ席とっておくから早めに来なさいよ」
生徒が一人残らず出て行った後、扉は重たい音をたてて閉まる。緊張しながら振り返ったニチカは、ホール中央で佇む教授を見据える。握りしめたツイート魔法には『君は残りたまえ、ニチカ君』と書かれていた。震えそうになる声をなんとか振り絞り、少女は気丈に言い放つ。
「ニチカって誰ですか? 私の名前はアンジェリカです」
「まぁまぁ、そう警戒しないでよ。ちょっと話をしようじゃないか」
授業の間延びした声とは違うハキハキとした喋りで教授は笑った。首をゴキゴキ鳴らしながら、まるで若者のような口調で愚痴る。
「あぁもう、肩こるんだよなぁこの体型」
彼は右手を掲げてパチンと指を鳴らす。するとビア樽のような体型が破裂寸前までふくらみ、一気に収縮した。目の前で起きたことが信じられずニチカは目を剥く。
「!?」
「あーきつかった。教授もダイエットしてくんないかなー。毎度化けるこっちの身にもなって欲しいよまったく」
そこに現われたのは細身の青年だった。少し長めの緑の髪が片目を覆い、耳にはいくつものゴツいピアスが着けられている。爬虫類を思わせる黄色い目をスッとこちらに向けた彼は、だしぬけにニッコリと笑った。
「ハァイ生身では初めまして。ニチカちゃん」
少しクセのある喋り方と軽いノリ。聞き覚えのある口調に冷や汗がつたうのを感じる。違っていてくれという願いもむなしく、本人の口からその正体が明かされた。
「ロロ村ではお世話になったね、オレだよ、ランバールだよ」
見つかってはいけない人物の筆頭が、すぐそこまで迫っていた。
授業に出席したニチカは頬杖をつきながら悶々と悩んでいた。となりにいたメリッサが羊皮紙と筆記具を脇に寄せて乗り出して来る。
「目の下に隈できてるよ、眠れなかった?」
「えっ、ほんと?」
慌てて目の下辺りを触ってみるがよく分からない。手鏡の一つでも無いかと探していると好奇心丸出しな声が側頭部を殴りつけた。
「もしかして、あの執事に寝かせてもらないくらい激しい夜を過ごしたとか!?」
ゴンッと、ずり落ちた頭部が机に落ちて大げさな音を立てる。呆れながらそちらに顔を向けるとキラキラと輝く瞳がそこにあった。一応、確認しておこう。
「メリッサ……執事の意味わかってる?」
「主人の『お・世・話』をしてくれるんでしょう? キャー!」
顔に手をあて恥じらう仕草を見せるが、確実にこの顔はあらぬ妄想をしている。これはダメだ、言葉の選択を誤れば話を飛躍させてしまうタイプの表情だ。ニチカが痛む頭を押さえどう説明しようと考えている内に、メリッサは鼻息荒く迫ってきた。
「私、小説とか雑誌とか読んでいろいろ知ってるんだから。ねぇ、彼は上手いの? 気持ちイイ?」
その言葉に昨夜の記憶が蘇ってしまう。薄明りに光る青いまなざし、触れた箇所に残る唇の感触、自分の物とは違う男の香りが意識まで呑み込むように――
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「あー、やっぱり!」
「ち、違うってば!」
まったくこのお嬢さんは、思春期の中学生でもここまで明け透けには言わないだろうに。ニチカは五感に残る残滓を振り払い、前もって決めておいた『執事ウィル』の設定を記憶の引き出しから取り出した。
「彼はお父様の部下の息子で、私がここに入るからって雇っただけだよ。知り合ってまだ一週間も経ってないって」
「えぇー、なぁんだ残念。あんなにカッコいいのになぁ」
肩を落としたメリッサは、少しふくよかな拳をグッと握りしめ、力強く言う。
「これからに期待だねっ、アンジェリカ」
「……」
どうしろと言うのだ。返答に困っているとメリッサは顎に人差し指を当て、何かを思い出そうとするかのように天井を見上げた。
「それにしてもあの顔、やっぱりどこかで見たことあるんだよなぁ、それもこの学校のどこかだったよーな」
「ほらっ、そんなことより授業に集中しなくちゃ!」
オズワルドは元々ここの生徒だったという。もしかしたらどこかに在籍していた痕跡が残っているのかもしれない――が、それは変装して潜入している立場上バレてはまずい事だ。慌てて話を逸らそうとしたニチカは、ホール中央のくぼ地になっている教壇を指す。優等生のメリッサなら乗ってくるかと思ったのだが、肩をすくめた彼女はこう返してきた。
「いいの、だってこの授業二回目だもの」
「二回目?」
彼女の視線を追って、すり鉢状になっているホール中央の教壇に立つ人物を見る。
『で、あるからしてー、魔力自体には何の力もなくー、精霊の力を借りることでようやく発動をー』
恐ろしく平坦な声で授業をしているのは、少し頭の寂しいビア樽のような体型の教授だった。頬杖をついてため息をついたメリッサは、理由を話し出した。
「あれも五老星の一人でね、最近はボケちゃってるのか何なのか、同じ授業を連続でやったりするのよ」
あぁ、とそこで気がついたような彼女は、すまなそうに手を合わせた。
「そっか、アンジェリカにとっては初めての授業よね。ジャマしてごめんなさい」
「あ、うん、ありがとう」
メリッサはそう言って自分の席に戻り大人しくしてくれる。別に彼女とのおしゃべりが嫌いなわけでは無かったが、根掘り葉掘り聞き出されるのは勘弁してほしかったので少しホッとする。
ぼんやりとしているとうっかり昨夜のことを思い出してしまいそうなので、ニチカは羽根ペンを手に授業に集中することにした。教授の声は音声を拡散する道具でも使っているのか、距離はあるのにここまでハッキリと届く。
『つまり、我々の体は『魂』と『体』そしてそれらをつなぎ合わせる『心の器』の三つで構成されている』
(魂と、体。その二つをつなぎとめるのが心の器)
異世界から来た少女はメモを取りながらこの世界の理を学んでいく。それまでの平坦なだけだった教授の声が、少し抑揚を増した気がした。
『心の器は魂の入れ物。その形は人それぞれで、たとえ他人の器に魂が入り込もうとしても溢れ出るか、逆に器の形に合わせようと魂が変形してしまうだろう。精神の入れ替えが上手くいかない原因はここにあるとされている』
と言うことは、魂をひっぺがして実験した人が居たのか。オズワルド辺りならやっていてもおかしくは無いなと思いながら、思いのほか授業にのめり込んでいく。
『また、器は我々が魔導を行使する場としても考えられている。精神の魔力を大気中のマナと混ぜ合わせる場が『心の器』というわけだ』
つまり、心の器とは魔力を魔法に変換するコンバーターのような役割を持っているらしい。この世界の人間ではないが、自分にもその器官はあるのだろうかとニチカはふと考える。いや、なければ魔法が使えないから、おそらくは有るのだろう。
『心の器は通常具現化されることはないが、皆もよく知っている女神ユーナが精霊集めをした際に自らの器を取り出し、そこに彼らのチカラを集めたとされている。まぁ実際は魔導球か何かだったのだろうが』
突然出てきた単語に、ニチカはドキッとして腰のベルトを触った。魔導球は目立つのを避け部屋に置いて来たのでそこには無い。
精霊を悪者から解放するため旅をした女神ユーナ。今、自分がやっているのはその再現とは言えないだろうか。桜花国で子供向けの絵本を読んだあと、精霊つながりと言うこともあり師匠に聞いてみたのだが、ユーナの話はもはや古すぎて嘘か本当かわからない神話のような話しか残っていないと言う。
世界を救うなど、自分がそんな大それたことをしても良いのかと思うが、託されたのだからやってみるしかない。そこでふと、金色の大きな翼を思い出した。
(そういえばイニ、あれから接触がないな。頼むだけ頼んどいて後はほったらかしって、どうなんだそれ)
しかしまたセクハラまがいの事をされても困るので良しとする。機会があればあちらから接触してくるだろう。そう結論を出したところで、授業の終了を告げる鐘が鳴った。教授が持っていた本をパタンと閉じて講義を締めくくる。
『おっと、ではここまでにしよう。今日いったことを各自復習しておくように』
「って前回もやったけどね」
返事をするように、隣でメリッサが苦笑しながら言う。立ち上がった彼女はニチカに向かって明るく言った。
「お昼いこっか。今日は食堂のBランチが美味しいんだ」
「うん」
ところがホールから出ようとしたところで、ニチカの顔の前に光の文字が現われた。またかとうんざりした少女は手で払おうとするのだが内容を一瞥して動きを止めた。先を行くメリッサが振り返り不思議そうに尋ねてくる。
「アンジェリカ? どうかした?」
「……ごめん、先に行っててくれる? ちょっと教授に質問したいことが有るの」
メリッサは素直にその言葉を受け取り、特に疑うこともせず了承した。
「勉強熱心ね、かんしんかんしん。それじゃあ席とっておくから早めに来なさいよ」
生徒が一人残らず出て行った後、扉は重たい音をたてて閉まる。緊張しながら振り返ったニチカは、ホール中央で佇む教授を見据える。握りしめたツイート魔法には『君は残りたまえ、ニチカ君』と書かれていた。震えそうになる声をなんとか振り絞り、少女は気丈に言い放つ。
「ニチカって誰ですか? 私の名前はアンジェリカです」
「まぁまぁ、そう警戒しないでよ。ちょっと話をしようじゃないか」
授業の間延びした声とは違うハキハキとした喋りで教授は笑った。首をゴキゴキ鳴らしながら、まるで若者のような口調で愚痴る。
「あぁもう、肩こるんだよなぁこの体型」
彼は右手を掲げてパチンと指を鳴らす。するとビア樽のような体型が破裂寸前までふくらみ、一気に収縮した。目の前で起きたことが信じられずニチカは目を剥く。
「!?」
「あーきつかった。教授もダイエットしてくんないかなー。毎度化けるこっちの身にもなって欲しいよまったく」
そこに現われたのは細身の青年だった。少し長めの緑の髪が片目を覆い、耳にはいくつものゴツいピアスが着けられている。爬虫類を思わせる黄色い目をスッとこちらに向けた彼は、だしぬけにニッコリと笑った。
「ハァイ生身では初めまして。ニチカちゃん」
少しクセのある喋り方と軽いノリ。聞き覚えのある口調に冷や汗がつたうのを感じる。違っていてくれという願いもむなしく、本人の口からその正体が明かされた。
「ロロ村ではお世話になったね、オレだよ、ランバールだよ」
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