9 / 156
1-ようこそ、世界へ
9.少女、提案する。
しおりを挟む
「ご主人、ニチカ、リゼット村だよ!」
先を歩いていたウルフィが尻尾をふりふり振り返る。その嬉しそうな笑顔の先には素朴な村が待ち構えていた。
木を組んだだけの簡素な柵、周囲に広がるささやかな畑、近くを流れるせせらぎの小川、実にのどかな村である。
だが食い意地の張ったオオカミには村が別の形に見えているらしい、ステップでも踏みそうな勢いで小走りになっていく。
「あぁなんて美味しそうな村! まっててねコロコロ鳥ちゃん!」
「言っとくがそんなものを喰う前に発つからな」
男のセリフにオオカミはカクンッとこけた。追い抜く男の足にすがりつき、聞いているこちらが哀れになるほど情けない声で泣きつく。
「なんでぇ!? なんでぇぇぇ!?」
「当たり前だ、この村に寄ったのはコイツを送るため。俺たちは長居する気はないんだ」
その言葉に少女がビクリと反応する。やはり自分はここに置いていかれるのだと悟った瞬間、気分がへこむ。
「ちょっとは気にかけてくれても――わぷっ!」
ブツブツと言っていたせいか、立ち止まった男に気づかずにその背中にドンとぶつかってしまった。赤くなった鼻をこすりながら文句を言う。
「いきなり立ち止まらないでよ。どうしたの?」
ところが二人からの反応はなく固められてしまったかのように静止している。何事かとその横から覗き込むと、とんでもない光景が広がった。
「いっ!? 魔女がいっぱい……」
今まさに向かおうとしていた村から、まるでコウモリのように黒服の集団がウワぁっ!と飛び立つ。それだけではない、地上にもたくさんの黒いローブを着た集団が見えてくる。村の人たちに話を聞いて、明らかに誰かを探しているようだった。
「アレってもしかして、魔女協会とか言う?」
振り返ってたずねると、はるか遠くに逃げていく男とオオカミの姿があった。見事なまでに美しいフォームを描きながら、その姿が見る間に小さくなっていく。
「何て分かりやすい反応ーっ!?」
「さらばだニチカ! 達者でやれよ!」
「送るならちゃんと村まで送ってよ!」
思わず叫んだのがまずかった。村にいた一人が気づいたのか、ざわめきが広がっていく。ひくりを頬を引きつらせるがもう遅い。
「……おい、あれひょっとして」
「間違いない! 異端魔女のオズワルドだ!」
「捕まえろ!」
「ひぃっ!?」
追いかけてくる黒服の集団に恐れをなして、ニチカも二人の後を追いかけ始める。すぐに追いかけっこが始まった。
「やっちまった感」を少しでも拭いたくて、少女はそもそもの元凶に向かって叩きつけるように叫ぶ。
「異端って、何したのよ!?」
「たいしたことじゃない! ……ただ、ちょっと実験にどうしても禁止されている材料があったから、色んなところから拝借したり」
「ただのドロボーじゃない!」
ツッコミを入れながら猛ダッシュを続けると、男がギョッとしたような顔で振り返った。
「なんで付いてきてるんだ!」
「あなたと一緒のところを見られて、あの村に入れるわけないでしょ!」
声はすぐ近くまで迫って来ていた。追えとか、殺せとか火あぶりにしろだの、なにやら物騒な声が聞こえてくる気がする。気のせいであってくれとニチカは心底祈った。
背の高い草の間を縫うようにして逃げること数分、しばらくは頑張っていた少女だったが、じきに体力の限界がきてへたりと座り込んでしまう。急ブレーキをかけたウルフィが振り返るが、もはや立ち上がる気力すら無くなっていた。
「ニチカ! 捕まっちゃうよ!」
「はぁ、はぁ、ちょっとだけ、休憩……」
元々運動神経がいいとは言えないのに、それをこんな長時間の全力疾走など無理があった。引き返してきたオズワルドが舌打ちをして片膝を着き、腰のポーチから何かを取り出す。
「商売道具だが仕方ない。後で返せよ」
「どうやって!?」
テープをぺたぺたと張り合わせたような小さなボールが三つほど。それを軽くつついた男は何かの呪文を唱えた。
『我、一時の休息を求める者なり、汝に命ず、色づく風となり我らの姿を覆い隠せ』
途端にボールから煙がブワッと噴き出し三人を覆い隠す。不思議な煙だった、何色にも見えるのにやけに透明感がある。
「これって――」
質問しかけた途端に口元をむぐっと掴まれる。ウルフィも同じように口を押さえられ目を白黒させていた。喋るなという事なのだろうか。
「居たか!?」
「確かにこっちに――」
草をかき分け、杖を持った黒服の男が飛び出してくる。彼はこちらが居る辺りにじっと目をこらし、油断なく視線を左右に振る。
飛び出しそうな心臓を押さえじっとしていると、しばらくして仲間に呼ばれたのか彼は行ってくれた。頭上を飛んでいく魔女たちが見えなくなった頃、ようやくオズワルドがつめていた息を吐く。
「とりあえずはまいたか」
「ねぇ、この煙って」
彼は手にしたままだったボールを振る。すると小さくカラコロと中から音がした。
「俺が作った魔女道具の一つ『隠れ玉』。これを発動させると特殊なガスが噴き出して極端に存在感を覆い隠してくれる」
なんて高機能なステルス道具なのだろう。感心していたニチカの横で、オズワルドが重いため息をついた。
「こんな早く魔女協会のヤツらが来てるとは思わなかった……捨て損ねた」
「悪かったですね、お荷物で」
ボソッと付け足されたセリフを聞き逃すほどニチカはマヌケではない。しばらくジト目で睨みつけていると彼は視線を逸らし、その黒髪をガシガシと豪快に掻きながら後ろを向いた。
「まぁ、なんだ、他にも街くらいある。ちゃんと送ってやるから安心しろ」
しばらくその背中を見つめていたニチカは、無意識の内に口を開いていた。
「ついてっちゃダメ?」
たっぷり風が流れるほど間が開いた後、振り返った男は口をひん曲げて眉を顰めるというひどい顔をしていた。
「はぁぁぁ? お前が? 俺に?」
「……私、あんまり頭はよくないけど、よく考えた上での発言だから」
だからそんな殴りたくなるような顔はやめてくれと言外に匂わす。惑わしの森を抜けた辺りからずっと考えていた事を打ち明けた。
「あなたがどこに向かってるかは知らないけれど、しばらくは旅をするんでしょ? 私もどこか一箇所にとどまるよりはあちこち回って手がかりを見つけた方が元の世界に戻れると思うの」
そこで顔を赤らめた少女は、俯きながら消え入りそうな声で言った。
「それにほら……フェイクラヴァーの問題もあるし」
先を歩いていたウルフィが尻尾をふりふり振り返る。その嬉しそうな笑顔の先には素朴な村が待ち構えていた。
木を組んだだけの簡素な柵、周囲に広がるささやかな畑、近くを流れるせせらぎの小川、実にのどかな村である。
だが食い意地の張ったオオカミには村が別の形に見えているらしい、ステップでも踏みそうな勢いで小走りになっていく。
「あぁなんて美味しそうな村! まっててねコロコロ鳥ちゃん!」
「言っとくがそんなものを喰う前に発つからな」
男のセリフにオオカミはカクンッとこけた。追い抜く男の足にすがりつき、聞いているこちらが哀れになるほど情けない声で泣きつく。
「なんでぇ!? なんでぇぇぇ!?」
「当たり前だ、この村に寄ったのはコイツを送るため。俺たちは長居する気はないんだ」
その言葉に少女がビクリと反応する。やはり自分はここに置いていかれるのだと悟った瞬間、気分がへこむ。
「ちょっとは気にかけてくれても――わぷっ!」
ブツブツと言っていたせいか、立ち止まった男に気づかずにその背中にドンとぶつかってしまった。赤くなった鼻をこすりながら文句を言う。
「いきなり立ち止まらないでよ。どうしたの?」
ところが二人からの反応はなく固められてしまったかのように静止している。何事かとその横から覗き込むと、とんでもない光景が広がった。
「いっ!? 魔女がいっぱい……」
今まさに向かおうとしていた村から、まるでコウモリのように黒服の集団がウワぁっ!と飛び立つ。それだけではない、地上にもたくさんの黒いローブを着た集団が見えてくる。村の人たちに話を聞いて、明らかに誰かを探しているようだった。
「アレってもしかして、魔女協会とか言う?」
振り返ってたずねると、はるか遠くに逃げていく男とオオカミの姿があった。見事なまでに美しいフォームを描きながら、その姿が見る間に小さくなっていく。
「何て分かりやすい反応ーっ!?」
「さらばだニチカ! 達者でやれよ!」
「送るならちゃんと村まで送ってよ!」
思わず叫んだのがまずかった。村にいた一人が気づいたのか、ざわめきが広がっていく。ひくりを頬を引きつらせるがもう遅い。
「……おい、あれひょっとして」
「間違いない! 異端魔女のオズワルドだ!」
「捕まえろ!」
「ひぃっ!?」
追いかけてくる黒服の集団に恐れをなして、ニチカも二人の後を追いかけ始める。すぐに追いかけっこが始まった。
「やっちまった感」を少しでも拭いたくて、少女はそもそもの元凶に向かって叩きつけるように叫ぶ。
「異端って、何したのよ!?」
「たいしたことじゃない! ……ただ、ちょっと実験にどうしても禁止されている材料があったから、色んなところから拝借したり」
「ただのドロボーじゃない!」
ツッコミを入れながら猛ダッシュを続けると、男がギョッとしたような顔で振り返った。
「なんで付いてきてるんだ!」
「あなたと一緒のところを見られて、あの村に入れるわけないでしょ!」
声はすぐ近くまで迫って来ていた。追えとか、殺せとか火あぶりにしろだの、なにやら物騒な声が聞こえてくる気がする。気のせいであってくれとニチカは心底祈った。
背の高い草の間を縫うようにして逃げること数分、しばらくは頑張っていた少女だったが、じきに体力の限界がきてへたりと座り込んでしまう。急ブレーキをかけたウルフィが振り返るが、もはや立ち上がる気力すら無くなっていた。
「ニチカ! 捕まっちゃうよ!」
「はぁ、はぁ、ちょっとだけ、休憩……」
元々運動神経がいいとは言えないのに、それをこんな長時間の全力疾走など無理があった。引き返してきたオズワルドが舌打ちをして片膝を着き、腰のポーチから何かを取り出す。
「商売道具だが仕方ない。後で返せよ」
「どうやって!?」
テープをぺたぺたと張り合わせたような小さなボールが三つほど。それを軽くつついた男は何かの呪文を唱えた。
『我、一時の休息を求める者なり、汝に命ず、色づく風となり我らの姿を覆い隠せ』
途端にボールから煙がブワッと噴き出し三人を覆い隠す。不思議な煙だった、何色にも見えるのにやけに透明感がある。
「これって――」
質問しかけた途端に口元をむぐっと掴まれる。ウルフィも同じように口を押さえられ目を白黒させていた。喋るなという事なのだろうか。
「居たか!?」
「確かにこっちに――」
草をかき分け、杖を持った黒服の男が飛び出してくる。彼はこちらが居る辺りにじっと目をこらし、油断なく視線を左右に振る。
飛び出しそうな心臓を押さえじっとしていると、しばらくして仲間に呼ばれたのか彼は行ってくれた。頭上を飛んでいく魔女たちが見えなくなった頃、ようやくオズワルドがつめていた息を吐く。
「とりあえずはまいたか」
「ねぇ、この煙って」
彼は手にしたままだったボールを振る。すると小さくカラコロと中から音がした。
「俺が作った魔女道具の一つ『隠れ玉』。これを発動させると特殊なガスが噴き出して極端に存在感を覆い隠してくれる」
なんて高機能なステルス道具なのだろう。感心していたニチカの横で、オズワルドが重いため息をついた。
「こんな早く魔女協会のヤツらが来てるとは思わなかった……捨て損ねた」
「悪かったですね、お荷物で」
ボソッと付け足されたセリフを聞き逃すほどニチカはマヌケではない。しばらくジト目で睨みつけていると彼は視線を逸らし、その黒髪をガシガシと豪快に掻きながら後ろを向いた。
「まぁ、なんだ、他にも街くらいある。ちゃんと送ってやるから安心しろ」
しばらくその背中を見つめていたニチカは、無意識の内に口を開いていた。
「ついてっちゃダメ?」
たっぷり風が流れるほど間が開いた後、振り返った男は口をひん曲げて眉を顰めるというひどい顔をしていた。
「はぁぁぁ? お前が? 俺に?」
「……私、あんまり頭はよくないけど、よく考えた上での発言だから」
だからそんな殴りたくなるような顔はやめてくれと言外に匂わす。惑わしの森を抜けた辺りからずっと考えていた事を打ち明けた。
「あなたがどこに向かってるかは知らないけれど、しばらくは旅をするんでしょ? 私もどこか一箇所にとどまるよりはあちこち回って手がかりを見つけた方が元の世界に戻れると思うの」
そこで顔を赤らめた少女は、俯きながら消え入りそうな声で言った。
「それにほら……フェイクラヴァーの問題もあるし」
0
お気に入りに追加
190
あなたにおすすめの小説
王太子さま、側室さまがご懐妊です
家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。
愛する彼女を妃としたい王太子。
本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。
そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。
あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。
【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜
七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。
ある日突然、兄がそう言った。
魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。
しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。
そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。
ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。
前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。
これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。
※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
【完結】初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
ご愛妾様は今日も無口。
ましろ
恋愛
「セレスティーヌ、お願いだ。一言でいい。私に声を聞かせてくれ」
今日もアロイス陛下が懇願している。
「……ご愛妾様、陛下がお呼びです」
「ご愛妾様?」
「……セレスティーヌ様」
名前で呼ぶとようやく俺の方を見た。
彼女が反応するのは俺だけ。陛下の護衛である俺だけなのだ。
軽く手で招かれ、耳元で囁かれる。
後ろからは陛下の殺気がだだ漏れしている。
死にたくないから止めてくれ!
「……セレスティーヌは何と?」
「あのですね、何の為に?と申されております。これ以上何を搾取するのですか、と」
ビキッ!と音がしそうなほど陛下の表情が引き攣った。
違うんだ。本当に彼女がそう言っているんです!
国王陛下と愛妾と、その二人に巻きこまれた護衛のお話。
設定緩めのご都合主義です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる