異世界執事

伊簑木サイ

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第八章 そして二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ。(R18バージョン)

隠しようがなくて

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 涙を吸い取られていたはずだった。それがいつの間にか抱き込まれて、深く口づけられていた。
 貪るように舌を絡められ、啜られて、食べられてしまいそうだって思う。舌でこすられるたびに痺れみたいな快感がどんどん体中に広がっていく。快楽にあおられて、くらくらして、しがみついた。
 唇が離れ、はあはあと荒げた息をしたら、頭の後ろを支えている手にのけぞるように傾げられて、顎に沿って耳の下まで舐めあげられた。

「あぁん」

 自分があげた鼻にかかった甘い声を、霞がかった頭で、どこか遠くに聞く。
 八島さんの唾液で濡れたところをひんやりと風が吹き抜けていき、……って、風? 私は、パチッと目を開けた。
 彼の背後に青い空。視界の端には緑の草原。
 わああ!! ここ、外だったー!!
 あわてて顔をそむけ、彼の胸を押しながら叫ぶ。

「やややや八島さんっ、こここじゃ、だめですっ」
「そうでございますね。ここでは、可愛らしい千世様のお声を、何ぞに聞かれてしまうやもしれませんね」

 ぬああっ!? なんでそれを言うのかなあっ!? つい流された私も悪いけど、場所も考えずにディープなのはじめた八島さんも、どうかと思うんですがー!!

「では、お屋敷に戻ってもよろしいですか?」

 熱の宿ったまなざしで、ツツ、と、さっき舐めたところを撫でられた。……誘われてるのが、わかる。はやく、誰の邪魔も入らない場所で、同じように、いや、それ以上をしたいと。
 ぞくりと肌の下がざわめいて、胸の先にも下腹部にも、じわって熱に似た快感が生まれる。
 八島さんの笑みが深まった。……伝わってる。隠しようがない。私もさっきの続きを彼に触れてほしくてたまらないって。
 そう。隠しても、嘘ついても、意地を張っても無駄なのだ。その奥にあるものが何か、八島さんはもう知っているんだから。
 彼の胸についていた手を、その首にまわした。無駄とわかっていても、したいなんて思ってるのが伝わっているのはやっぱり恥ずかしいから、胸に顔を伏せて言う。

「そうですね。もう、おうちに帰りましょう。……でも、また、デートに連れてきてくださいね。今日はとても楽しかったです。連れてきてくれて、ありがとう、八島さん」

 高天原たかまがはらは美しいところだし、ずっとお姫様抱っこでくっついたまま空を歩いてくれたのも素敵だった。
 二人きりで、彼で心も体もいっぱいにされてしまうのもいいけれど、二人で、同じ風景を見て言葉を交わすのもいい。だって、何よりも一番惹かれてやまない、彼の心が垣間見えるから。

「楽しんでいただけたのなら、私も嬉しゅうございます。ぜひまた参りましょう、千世様」

 八島さんが私を抱えあげる。体の奥底から、力を抜かれていく感じがしはじめた。どのくらいたったのか、遠のいていた意識がはっきりしてきて目を開ければ、もうそこはお屋敷の寝室だった。
 ベッドの上にゆっくり下ろされる。足を支えていた手が、ふくらはぎをなでおろしていくくすぐったさに身を竦ませていたら、靴のストラップを外された。ベッドの下へ、ぽとりと音を立てて靴が落ちた。

「あ。……ああんっ」

 畳が汚れてしまう。そう思って起こしかけた体は、スカートの中に入ってきた手に腿の後ろを撫でられ、布団の上に崩れ落ちた。ぱちん、とかすかな音がして、ガーターの留め具がはずされる。あたたかく大きな手が、腿の弱いところを滑っていき、反対の足の留め具もはずされた。
 ただそれだけのことなのに、きゅっとお腹の奥が締まり、足の間にあたたかいものがしみだしてくる。
 手が前にまわってきて、足の付け根のきわどいところをかすめて、後ろと同じく留め具をはずした。するするとストッキングが抜き取られていって。

「んんんーーっ」

 素肌になった腿に、スカートをめくりあげられて口を寄せられて、たまらずに突っ伏してシーツを強くつかんだ。舌がぬるぬるとゆっくりと膝に向かって這っていき、膝の後ろからふくらはぎを嘗められて、快感とくすぐったさに悶える。
 けれど舌は足首で止まらず、足の裏におよんで、親指から順に指先をしゃぶられはじめた。
 私はあわてて足を引っ込めようとした。八島さんに足を舐められるなんて、どうにもいたたまれない。なのに、足は真綿を締めるように押さえつけられていて、ピクリとも動かなかった。

「んんあっ、だめ、……だめっ、やん、あああんっ、そんなところ、だめっ」
「汚れていると気にしていらっしゃるのですか? 湯から上がった体を服で包み、しばし抱き上げて外にお連れしただけのこと。どこも汚れてなどいらっしゃいませんよ。
 もちろん、お望みならば、これからもう一度、すみずみまでお体をお洗いしてもよろしいですが。いかがいたしましょうか、千世様?」

 もう一本の足からも、さっきと同じようにストッキングを脱がされながら聞かれて、私は答えることもままならないまま息を詰まらせ、途切れ途切れに高い声を漏らした。
 ……八島さんは律儀なのだ。洗うと言ったら、きっちり洗う。洗い終わるまで、その先はおあずけになる。私がどんなに喘いでいても、石鹸がお体に入ったらいけませんからと、決して手抜きしないでしっかり洗い流す。その水流でさえ、感じすぎておかしくなりそうだというのに。
 足の小指の先に、チュッと音を立てて吸い付かれた。体が震え、腰が熱く蕩けていく。
 ……そんなの、考えただけで気が狂いそうだった。
 私は小刻みに首を横に振った。

「お風呂は、いいです。今は、いりません」
「では、お洋服を脱ぐのをお手伝いいたしますね」

 ニコリと綺麗に笑った八島さんは、しゅるりとネクタイを引き抜きぬいた。上着とベストを優雅に脱ぎ捨て、ワイシャツのボタンを片手で器用に外しながら、私に覆いかぶさるようにして頭の横に手をつく。そうして、ボタンをはずし終わった手で、ワンピースの背中のファスナーを、ジジジジジ、と下げはじめた。
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