上 下
21 / 22
二章 王都学院編

21話 世界

しおりを挟む
アランの魔力暴走による被害は奇跡と言えるほどに小さかった。暴走を起こした場所が王城の地下だということもあるだろう。

建造物  王城崩壊 貴族邸四戸半壊うち一戸全壊
     民家十戸破損

人的被害  王城常駐騎士五名魔力中毒に意識不明
      民間人は軽傷者が約五十名重傷者無し

これが被害結果だ。

そしてアランは一週間以上、病院のベッドで眠っている。エリスはアランが運び込まれてからずっとアランの側に居続けている。

「アラン…早く起きて…お願い……」

アランの手を握って祈る。すると病室の扉が開いた。

「エリス様…休まれた方が良いです。私が見てますから」

人間レベルの魔力に調整してきたフェトが病室に来た

「フェトこそ休まないと。最後の金色の魔力を始めから使わなかったのは負担が大きいからじゃないの?」
「負担はあります。でも普通の生活程度なら支障はありません。エリス様は休んでください」

フェトはエリスが一週間以上ほとんど休んでいないことを知っている。だから「休んでください」その言葉を掛ける。

「私…何もできなかった」
「ロイド様が本気で傷付けようとしても傷付かない程に強かったのです。あの魔力の化身の殺気を間近で受けて意識を保てるだけで並ではありません」

「そうかも知れない。けど嫌なの。そんなのは。アランに乗っかって助けてもらおうとするだけで…だからせめて横に居てあげたいの。私が横に居てもアランがいつ起きるかわからないのはわかってる。でも居たいの」

「わかりました。体調を壊さない程度に」

フェトはエリスに毛布を掛けて病院を出ていった。

エリスはアランの手を握りしばらく眠った。


⬛︎

「ここは何処だ?」

アランは見渡す限り真っ白な場所に居た。何もない場所だ。

「ここはあなたの精神の中です」

突然現れた女を警戒し、一歩下がる。

「警戒しなくて大丈夫です。私はあなたの味方です」
「あまり時間がありませんから本題に入ります。この世には三つの世界が隣り合って存在していることは知っていますか?」
「あぁ知っている」
「神の存在を知っていますか?」
「知っている。天界の長のことだろ?」
「はい。一週間前まではそうでした」
「でしたってどういうことだ?」
「あなたが魔力暴走を起こし、あなたから放たれた魔力が世界の歪みから無へと放出され、その無に新しい世界が生まれました」
「まさか、その世界って」
「はい、お察しの通り、神のみが住む世界。神界です」
「神って天使の長じゃなくて、天使の長より強い何かなのか?」
「恐らくはそうです。幸い、まだ人界、魔界、天界のどの世界にもゲートは開いておりません。があと二年以内にはどれかの世界に開くでしょう」
「恐らく神々はゲートが開いた世界を支配するつもりです。あなたには各世界に赴いてもらい、協力をお願いしてください。神に対抗するためには三つの世界が協力しなければなりません」
「わかった。俺がきっかけを作ったみたいだしな」
「ありがとうございます。では、また会う時まで」
「あ、ちょっ、待って」
「何か?」
「あんた誰なんだ?」


「私は世界です」


名乗ると同時に俺は目を覚ました。

「アラン!」

エリスが飛ぶように抱きついてきた。

「よかった…本当によかった…無事でよかった…」
「ごめんな。心配かけた」
「ゔん」

しばらくエリスは抱きついたまま離れようとしなかった。


後書き
月曜日まで忙しいので投稿の頻度を落とします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました

雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。 女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。 強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。 くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。

何者でもない僕は異世界で冒険者をはじめる

月風レイ
ファンタジー
 あらゆることを人より器用にこなす事ができても、何の長所にもなくただ日々を過ごす自分。  周りの友人は世界を羽ばたくスターになるのにも関わらず、自分はただのサラリーマン。  そんな平凡で退屈な日々に、革命が起こる。  それは突如現れた一枚の手紙だった。  その手紙の内容には、『異世界に行きますか?』と書かれていた。  どうせ、誰かの悪ふざけだろうと思い、適当に異世界にでもいけたら良いもんだよと、考えたところ。  突如、異世界の大草原に召喚される。  元の世界にも戻れ、無限の魔力と絶対不死身な体を手に入れた冒険が今始まる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界を【創造】【召喚】【付与】で無双します。

FREE
ファンタジー
ブラック企業へ就職して5年…今日も疲れ果て眠りにつく。 目が醒めるとそこは見慣れた部屋ではなかった。 ふと頭に直接聞こえる声。それに俺は火事で死んだことを伝えられ、異世界に転生できると言われる。 異世界、それは剣と魔法が存在するファンタジーな世界。 これは主人公、タイムが神様から選んだスキルで異世界を自由に生きる物語。 *リメイク作品です。

異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル
ファンタジー
 異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!  主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。  亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。  召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。  そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。  それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。  過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。 ――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。  カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

処理中です...