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二章 王都学院編
21話 世界
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アランの魔力暴走による被害は奇跡と言えるほどに小さかった。暴走を起こした場所が王城の地下だということもあるだろう。
建造物 王城崩壊 貴族邸四戸半壊うち一戸全壊
民家十戸破損
人的被害 王城常駐騎士五名魔力中毒に意識不明
民間人は軽傷者が約五十名重傷者無し
これが被害結果だ。
そしてアランは一週間以上、病院のベッドで眠っている。エリスはアランが運び込まれてからずっとアランの側に居続けている。
「アラン…早く起きて…お願い……」
アランの手を握って祈る。すると病室の扉が開いた。
「エリス様…休まれた方が良いです。私が見てますから」
人間レベルの魔力に調整してきたフェトが病室に来た
「フェトこそ休まないと。最後の金色の魔力を始めから使わなかったのは負担が大きいからじゃないの?」
「負担はあります。でも普通の生活程度なら支障はありません。エリス様は休んでください」
フェトはエリスが一週間以上ほとんど休んでいないことを知っている。だから「休んでください」その言葉を掛ける。
「私…何もできなかった」
「ロイド様が本気で傷付けようとしても傷付かない程に強かったのです。あの魔力の化身の殺気を間近で受けて意識を保てるだけで並ではありません」
「そうかも知れない。けど嫌なの。そんなのは。アランに乗っかって助けてもらおうとするだけで…だからせめて横に居てあげたいの。私が横に居てもアランがいつ起きるかわからないのはわかってる。でも居たいの」
「わかりました。体調を壊さない程度に」
フェトはエリスに毛布を掛けて病院を出ていった。
エリスはアランの手を握りしばらく眠った。
⬛︎
「ここは何処だ?」
アランは見渡す限り真っ白な場所に居た。何もない場所だ。
「ここはあなたの精神の中です」
突然現れた女を警戒し、一歩下がる。
「警戒しなくて大丈夫です。私はあなたの味方です」
「あまり時間がありませんから本題に入ります。この世には三つの世界が隣り合って存在していることは知っていますか?」
「あぁ知っている」
「神の存在を知っていますか?」
「知っている。天界の長のことだろ?」
「はい。一週間前まではそうでした」
「でしたってどういうことだ?」
「あなたが魔力暴走を起こし、あなたから放たれた魔力が世界の歪みから無へと放出され、その無に新しい世界が生まれました」
「まさか、その世界って」
「はい、お察しの通り、神のみが住む世界。神界です」
「神って天使の長じゃなくて、天使の長より強い何かなのか?」
「恐らくはそうです。幸い、まだ人界、魔界、天界のどの世界にもゲートは開いておりません。があと二年以内にはどれかの世界に開くでしょう」
「恐らく神々はゲートが開いた世界を支配するつもりです。あなたには各世界に赴いてもらい、協力をお願いしてください。神に対抗するためには三つの世界が協力しなければなりません」
「わかった。俺がきっかけを作ったみたいだしな」
「ありがとうございます。では、また会う時まで」
「あ、ちょっ、待って」
「何か?」
「あんた誰なんだ?」
「私は世界です」
名乗ると同時に俺は目を覚ました。
「アラン!」
エリスが飛ぶように抱きついてきた。
「よかった…本当によかった…無事でよかった…」
「ごめんな。心配かけた」
「ゔん」
しばらくエリスは抱きついたまま離れようとしなかった。
後書き
月曜日まで忙しいので投稿の頻度を落とします。
建造物 王城崩壊 貴族邸四戸半壊うち一戸全壊
民家十戸破損
人的被害 王城常駐騎士五名魔力中毒に意識不明
民間人は軽傷者が約五十名重傷者無し
これが被害結果だ。
そしてアランは一週間以上、病院のベッドで眠っている。エリスはアランが運び込まれてからずっとアランの側に居続けている。
「アラン…早く起きて…お願い……」
アランの手を握って祈る。すると病室の扉が開いた。
「エリス様…休まれた方が良いです。私が見てますから」
人間レベルの魔力に調整してきたフェトが病室に来た
「フェトこそ休まないと。最後の金色の魔力を始めから使わなかったのは負担が大きいからじゃないの?」
「負担はあります。でも普通の生活程度なら支障はありません。エリス様は休んでください」
フェトはエリスが一週間以上ほとんど休んでいないことを知っている。だから「休んでください」その言葉を掛ける。
「私…何もできなかった」
「ロイド様が本気で傷付けようとしても傷付かない程に強かったのです。あの魔力の化身の殺気を間近で受けて意識を保てるだけで並ではありません」
「そうかも知れない。けど嫌なの。そんなのは。アランに乗っかって助けてもらおうとするだけで…だからせめて横に居てあげたいの。私が横に居てもアランがいつ起きるかわからないのはわかってる。でも居たいの」
「わかりました。体調を壊さない程度に」
フェトはエリスに毛布を掛けて病院を出ていった。
エリスはアランの手を握りしばらく眠った。
⬛︎
「ここは何処だ?」
アランは見渡す限り真っ白な場所に居た。何もない場所だ。
「ここはあなたの精神の中です」
突然現れた女を警戒し、一歩下がる。
「警戒しなくて大丈夫です。私はあなたの味方です」
「あまり時間がありませんから本題に入ります。この世には三つの世界が隣り合って存在していることは知っていますか?」
「あぁ知っている」
「神の存在を知っていますか?」
「知っている。天界の長のことだろ?」
「はい。一週間前まではそうでした」
「でしたってどういうことだ?」
「あなたが魔力暴走を起こし、あなたから放たれた魔力が世界の歪みから無へと放出され、その無に新しい世界が生まれました」
「まさか、その世界って」
「はい、お察しの通り、神のみが住む世界。神界です」
「神って天使の長じゃなくて、天使の長より強い何かなのか?」
「恐らくはそうです。幸い、まだ人界、魔界、天界のどの世界にもゲートは開いておりません。があと二年以内にはどれかの世界に開くでしょう」
「恐らく神々はゲートが開いた世界を支配するつもりです。あなたには各世界に赴いてもらい、協力をお願いしてください。神に対抗するためには三つの世界が協力しなければなりません」
「わかった。俺がきっかけを作ったみたいだしな」
「ありがとうございます。では、また会う時まで」
「あ、ちょっ、待って」
「何か?」
「あんた誰なんだ?」
「私は世界です」
名乗ると同時に俺は目を覚ました。
「アラン!」
エリスが飛ぶように抱きついてきた。
「よかった…本当によかった…無事でよかった…」
「ごめんな。心配かけた」
「ゔん」
しばらくエリスは抱きついたまま離れようとしなかった。
後書き
月曜日まで忙しいので投稿の頻度を落とします。
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