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赤い液-2-
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翌日 某所
朝日はとっくに昇りきっているのに、カーテンが閉まったままの部屋はまだ薄暗く、少年はベッドの上ですやすやとリズムのいい寝息を立てていた。
しかし、ドアをぶち破る勢いで部屋に乱入してきた兄によってそれを妨害される。
少年は眠たそうに眼を擦り身体を起こしながら、開いた扉の方へ視線を向けた。
「ごめん、まだ寝てたんだな」
謝罪はしたものの、あまり悪びれている様子のない兄に少年は小さく舌打ちをする。
「謝るなら起こすなよ」
兄によって睡眠を妨害されてしまったことで少年は酷く不機嫌になったが、「でも、もう10時過ぎてるぞ」と言われてしまえば少年とて返す言葉はない。
黙り込んでしまった弟のベッドに歩み寄りながら、兄は静かに微笑んだ。
「なあ、隆志は自殺系サイトって知ってるか」
少年は眉頭をピクリと動かした。
「知らない」
少年の言葉に兄は少し疑り深い目をしていたが、弟を信じることにしたのか「そうか」と言った。
「色々学校で噂が飛び交ってるんだ。そのサイトの掲示板に何か書いたら殺されるとか。だから、中学でも何か噂されてるかと思って」
少年は馬鹿らしいと笑った。
そのサイトは少年自身が作ったものなのだ。
悪戯で書き込んだとしても殺されることなんてあるはずがない。
時々、暇つぶしの為に少年自らが志願者に会いに行くとしても、その後どうこうなるということは一切なかった。
殺人はもちろんのこと、本当に命を絶つ者さえもいなかったのだ。
そもそも、検索ワードにすぐに引っかかってしまう自殺サイトなんてただのお飾りということは本当の人ならわかっているはずだ。
「そこの管理人のこととか知ってんの?」
少年の質問に、兄は首を横に振る。
流石に自分の兄にバレて気持ちのいいものでもない。
表情には現さないものの、少年はホッと胸をなで下ろした。
「けど、不思議なもんだな。こんなサイトとかみんなどっから引っ張ってくるんだろう」
兄が少年のベッドに腰を下ろしながらポツリと言った。
「知らねーよ…」
眉間に皺を寄せながら目を細めて睨んでくる弟に、兄は肩を落とした。
「お前、今日は一段と機嫌が悪いのな」
「あのなあ、休みの日に無理矢理起こされて機嫌が悪くならないヤツがどこにいるんだよ」
「あーあ、お前も生意気になったもんだな。小さい頃は『お兄ちゃんお兄ちゃん』で可愛かったのに」
4,5歳の頃、兄が手を引っ張って歩いてくれた思い出が脳裏を過る。
あの頃は、泣き虫でいつも兄に着いて回ってばかりだったなと、少年は目を細めた。
「この歳になってそんな呼び方してたらキモイだろ…」
少年は頭を掻きながら、ベッドから立ち上がる。
「いいじゃんか。仲がいい兄弟だと思われて」
「ブラコンか。弟大好きか」
「否定はしない」
「いや…、否定しろよ」
心底蔑んだ顔を向けてくる弟の背中をポンポンと撫でると、兄もベッドから立ち上がる。
目線を見る限り弟との身長差は5センチ程になっており、既に身長が止まってしまっている兄は複雑な思いで苦笑を浮かべた。
「あ、そうそう、お前に食ってほしいものがあんだけど」
思い出したように兄が言うと、少年は首を傾げた。
「…真っ赤な料理」
兄は不敵に笑いながらそう言うと、部屋を出て行った。
「真っ赤な料理…ねえ」
兄がそれをキムチの汁だとか言っていたことを思い出して、少年は失笑した―――。
朝日はとっくに昇りきっているのに、カーテンが閉まったままの部屋はまだ薄暗く、少年はベッドの上ですやすやとリズムのいい寝息を立てていた。
しかし、ドアをぶち破る勢いで部屋に乱入してきた兄によってそれを妨害される。
少年は眠たそうに眼を擦り身体を起こしながら、開いた扉の方へ視線を向けた。
「ごめん、まだ寝てたんだな」
謝罪はしたものの、あまり悪びれている様子のない兄に少年は小さく舌打ちをする。
「謝るなら起こすなよ」
兄によって睡眠を妨害されてしまったことで少年は酷く不機嫌になったが、「でも、もう10時過ぎてるぞ」と言われてしまえば少年とて返す言葉はない。
黙り込んでしまった弟のベッドに歩み寄りながら、兄は静かに微笑んだ。
「なあ、隆志は自殺系サイトって知ってるか」
少年は眉頭をピクリと動かした。
「知らない」
少年の言葉に兄は少し疑り深い目をしていたが、弟を信じることにしたのか「そうか」と言った。
「色々学校で噂が飛び交ってるんだ。そのサイトの掲示板に何か書いたら殺されるとか。だから、中学でも何か噂されてるかと思って」
少年は馬鹿らしいと笑った。
そのサイトは少年自身が作ったものなのだ。
悪戯で書き込んだとしても殺されることなんてあるはずがない。
時々、暇つぶしの為に少年自らが志願者に会いに行くとしても、その後どうこうなるということは一切なかった。
殺人はもちろんのこと、本当に命を絶つ者さえもいなかったのだ。
そもそも、検索ワードにすぐに引っかかってしまう自殺サイトなんてただのお飾りということは本当の人ならわかっているはずだ。
「そこの管理人のこととか知ってんの?」
少年の質問に、兄は首を横に振る。
流石に自分の兄にバレて気持ちのいいものでもない。
表情には現さないものの、少年はホッと胸をなで下ろした。
「けど、不思議なもんだな。こんなサイトとかみんなどっから引っ張ってくるんだろう」
兄が少年のベッドに腰を下ろしながらポツリと言った。
「知らねーよ…」
眉間に皺を寄せながら目を細めて睨んでくる弟に、兄は肩を落とした。
「お前、今日は一段と機嫌が悪いのな」
「あのなあ、休みの日に無理矢理起こされて機嫌が悪くならないヤツがどこにいるんだよ」
「あーあ、お前も生意気になったもんだな。小さい頃は『お兄ちゃんお兄ちゃん』で可愛かったのに」
4,5歳の頃、兄が手を引っ張って歩いてくれた思い出が脳裏を過る。
あの頃は、泣き虫でいつも兄に着いて回ってばかりだったなと、少年は目を細めた。
「この歳になってそんな呼び方してたらキモイだろ…」
少年は頭を掻きながら、ベッドから立ち上がる。
「いいじゃんか。仲がいい兄弟だと思われて」
「ブラコンか。弟大好きか」
「否定はしない」
「いや…、否定しろよ」
心底蔑んだ顔を向けてくる弟の背中をポンポンと撫でると、兄もベッドから立ち上がる。
目線を見る限り弟との身長差は5センチ程になっており、既に身長が止まってしまっている兄は複雑な思いで苦笑を浮かべた。
「あ、そうそう、お前に食ってほしいものがあんだけど」
思い出したように兄が言うと、少年は首を傾げた。
「…真っ赤な料理」
兄は不敵に笑いながらそう言うと、部屋を出て行った。
「真っ赤な料理…ねえ」
兄がそれをキムチの汁だとか言っていたことを思い出して、少年は失笑した―――。
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