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第一章

7:魔道具

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「この魔道具は僕が創りました。現在ある遠く離れた場所と連絡を取る魔道具の改良型で映像を含めた遣り取りが出来る様になっています。勿論、改竄は出来なくしてあります」

現在ギルドでも使われている連絡用の魔道具は昔、大魔法師セギヌスが創った物でそれ以降改良型は出ているがいずれも手紙を送るのが精一杯で映像を相手に送る事は出来なかった。それをリアルタイムで映像を送受信出来るようにした物がこの魔道具だ。

所謂テレビ電話の様な物。

転移魔法を組み込んで相互に手紙を送り合う魔道具だが、急を要する事案では特に重宝されていて世界各国の王宮やギルド、商人達が利用している無くてはならない魔道具にもなっている。

その魔道具の改良型で、更に映像までリアルタイムで送れるとなればより一層重宝されるのはわかりきっている。重要な会議等、態々その場所に行かずともこの魔道具があればその場で顔を突き合わせて会議が出来るのだから。

「それは本当ですか!?本当なら凄い事ですよ!!」
「勿論本当です。登録に当たって暫く此方を1組お貸ししますのでお試しの上、ご検討下さい。あ、言っておきますが分解しようとしたら使えなくなるように設計してますのでご注意下さいね」

ニッコリと笑みを浮かべた僕にギルド長は顔を青くする。ギルド長がそんな事をするようには見えないが、他はどうかはわからない。

「も、勿論です!!そ....それでこの魔道具を当ギルドで登録したいと言う事でお間違いはないですか?」
「はい。そのつもりですし、今後僕が創る魔道具に関してもこのイプシロンの街の商業ギルドでお願いしたいと思ってます。ですがひとつだけ条件があります」

そう.....魔道具を僕が製作する上でどうしても必要な条件。

「条件....ですか?」
「はい。それは製作者が僕である事を知られない事、です。僕が製作者だとわかれば王宮が横槍を入れてくる可能性が高い。僕は王妃様筆頭に今の王族に貢献するつもりはないんですよ」

母上を殺され、理不尽に追い出された僕が王族に必要以上の富を与えてやる義理はない。

「....それは.....はい....殿下のお気持ちはわかります」

沈痛な面持ちで頷くギルド長に僕は笑みを浮かべる。

「ですから、僕が製作者だと言う秘密を必ず守れる相手との交渉をお願いしたいのです」
「.....そう、ですね....それならば殿下、前公爵閣下にお話を通しても良いでしょうか?」
「前公爵に?」

ギルド長が恐る恐る僕へと提案をしてくるのを、じっと見つめる。

「はい。この魔道具はこれまでの改良型とは比べようもないぐらい画期的な物です。これが世に出れば必ず前公爵閣下の耳にも近い内に必ず入ります。それならば事前に前公爵閣下に話を通しておけば余計な詮索をされる事を防ぐ事が出来ます」
「....それは前公爵に僕の後ろ楯になって貰うと言う事かな?それをしたら必然的に僕が魔道具の製作者だって事が露呈するんじゃないかな?」
「後ろ楯....とはまた違います。前公爵閣下が製作者探しに動けば騒ぎになります。ですが、最初からその存在を知っておけば前公爵閣下が動く事もなく、騒ぎが起こる事もないのです」
「....ふむ」

確かにそれは一理ある.....が、ここまで予想通りにギルド長が提案をしてくるとは思っても見なかった。それだけこのギルド長が馬鹿ではなかったと言うことかな。

「わかった、良いよ。登録が正式に決まったら離宮の方へ連絡をくれるかな?ああ、勿論商人と使用人の件が先に決まればそちらも連絡してくれて良いからね」
「わかりました。早急にご連絡出来るかと思いますので」


僕は頷き魔道具の簡単な説明書を手渡し、商業ギルドを後にする。思ったよりも時間が掛かってしまい既に約束した時間ギリギリで、少しマリーを待たせてしまったかなと思いながら待ち合わせの場所へと向かった。




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