3 / 5
質問と答えが合っているか自信がない
しおりを挟むまず今回の受診理由と美沙の環境について詳しく聞き、その資料をもとに医師が診察するのだという。
「では、おはなしを聞かせていただきますね。まずは、どんな状態なのかお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか」
医師が直接じっくり話を聞いてくれるわけではないのか、とがっかりしたが、あの待合室の混み具合から考えて、とてもそんな時間はとれないかと納得した。
「……あの、とにかく背中とか首が痛くて……身体がだるくて動かなくって。朝がとにかくひどくて、起きられない日もあるんです」
質問と答えは、きちんと合っているだろうか。不安に瞳を少し揺らして、美沙は答えた。最近、相手の言葉がきちんと捕らえられているかどうか自信がなかった。
「それはいつごろからですか?」
美沙は首をかしげた。
いつごろからだろう。ぼんやりと霞がかった思考の中で、なんかと回答を出そうとする。
健忘症かと思うくらい一瞬前になにをしていたのか思い出せないし、思い出そうとしていたことすら、まるでスマホの画面が突然落ちるときのように、ストンと頭から抜け落ちてなにを思い出そうとしていたのかわからなくなってしまう。
浮かんできた答えをとりあえず口に出してみる。
「えっと……最初は、身体の調子が悪くて、いろいろ医者に行ったんです。一年くらい前からだったかな。まぶたが腫れたり、下痢と便秘を繰り返したり、ひどい頭痛があったり、生理がすごく重かったり……眼科、胃腸科、内科、産婦人科、いろいろ行きました。胃カメラしたり、脳のCT撮ったり。でも検査しても特に原因はわからなくて、ストレスが原因っていうこともあるから、ゆっくり休んでくださいって言われるんです。休み、たくさんとってるし、これ以上休めないくらい休んでるんですけど」
検査の結果、特に病名のつかない胃腸の荒れやなんでもない細菌の感染と言われて、途方に暮れてしまった。
異常がないということは、治療法もないということだ。
本音を言えば、いますぐ身体に効く特効薬が欲しいくらいだ。どうやって、この痛みとだるさの中で、明日からも暮らしていけばいいのだろう。
三日のうち二日は頭痛薬を飲んでしのいでいる状態。あまり薬を飲みすぎてはいけないと思い我慢しているが、仕事中も頭や背中、肩、首が痛くて痛くて……痛みに心を支配されてしまい、仕事が手につかない。
「そのうち、毎月風邪を引くようになって、しかもなかなか治らなかったり、胃腸風邪になったり、そうしたら体力がどんどん落ちていって……このままどうにかなっちゃうんじゃないかと思ってたときに、内科の先生が心療内科に行ってみたらどうかって、紹介状を書いてくれたんです」
実際には「異常なし」という診察の結果を聞いた途端、泣き出してしまったのだ。
なんとかしてほしいとすがるような気持ちで受診したのに、また空振り。心当たりはもうすべて当たってきた。けれどどれも違ったのだ。これからどうしたら……。
立ち上がれなくなってしまった美沙に、内科の先生が「僕も心療内科の薬飲んでるんだけどねえ」とのんびりと切り出してくれたのだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる