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レオポルド、後悔する
しおりを挟むモニカを抱き上げた瞬間、その軽さに心がざわついた。
……こんなに、軽かったか?
細い腕、裸足の足、薄い体。普段、防護服で覆われているせいか、こんなにも小柄だったのかと改めて思い知る。
靴は、どこかに放り投げられたのか、見当たらない。裸足のまま、こんな場所を歩かせるわけにはいかなかった。
レオポルドは、モニカをしっかりと抱きかかえたまま自分の上着を頭から被せる。
「……すぐに行くぞ。」
モニカは、無言で頷いた。
周囲の視線から、彼女を隠さなければならない。何も言わずに、レオポルドは駆け出した。
詰め所の扉を蹴り開けるように入る。一斉にこちらを向く団員達の視線。抱えたモニカの小さな足が、上着から覗いていた。
――女だ。
一瞬で、騎士団員たちは事態を理解した。険しい顔をしたレオポルドが、乱れた衣服の女性を抱えている。言葉にせずとも、何があったか分かる。
すぐさま、団員たちが動いた。
女性団員を呼びに行く者。部屋を準備する者。治療院へ走る者。
全て、無言のうちに迅速に動いた。
「隊長、暴漢の捕縛は――」
「路地裏に捨ててきた。すぐに連行しろ。」
「了解!」
部下たちがすぐさま動く中、レオポルドは一度もモニカを降ろさなかった。
たまに、上着の中を覗き込んでは、優しく背をさする。
「大丈夫だ。もう、終わった。」
低く、静かな声で告げる。
モニカは無言のまま、目を閉じていた。
詰め所内に準備された部屋。到着した治癒師と女性団員が、レオポルドからモニカを受け取る。
彼は、そこでようやく手を離した。
「後は、頼む。」
静かにそう言うと、レオポルドは部屋を出た。
扉が閉じる音。
そして、彼は深く息を吐き出す。
「……遅かった。」
苦々しく、そう呟いた。
モニカが抵抗していたのは分かる。
あの男たちがモニカの身体をどう扱ったのかも、容易に想像がついた。
……くそ。
拳を握る。
俺が、もう少し早く気づいていれば……。
レオポルドが視線を上げた時、周囲の団員は震え上がった。後に彼らは語る。
「あの時の団長の顔は、古龍より恐ろしかった。」
レオポルド・エアハルトは、冷酷な騎士団長ではない。己の守るべきものを傷つけられた時、どれほど恐ろしいか――それを目の当たりにした瞬間だった。
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