16 / 23
16
しおりを挟む
車は夜の闇を切り裂くように進み、そのエンジン音は前方に待ち受ける道への警告のように響いた。しかし、その一方で、ヘッドライトが暗闇を照らす光は、希望の道しるべのようにも見えた。漆黒の夜の中で、私たちは未知の運命に向かって突き進んでいた。
母様の選んだ道が正しいと信じるならば、私はその遺志を引き継ぎ、正しい道を進みたいと強く願った。未来の行方は不明だったが、どこかに安心感が宿っているような気がした。
突然、車は急激にスピードを上げ始めた。前橋の声が冷たく響く。
「よし、これから奴らの陣地に入るぞ。気づかれる前に一気に突っ切って、研究所の建物まで行く。後部座席に戻って、戦う準備をしろ」
その命令に従い、私はすぐに後部座席へと移動し、戦闘の準備を整えた。敷地内に入ると、遮断機を装甲車が粉砕し、敵の兵士たちが姿を現した。でも、前橋はスピードを緩めることなく、容赦なく突き進んだ。
瞬時に警戒のアラームが響き渡り、兵士たちは混乱の中で装甲車を止めようと試みたけど、その行動は遅すぎた。彼らは状況に対応しきれず、効果的な攻撃ができないでいる。やがて、銃弾が装甲車の外壁に当たって跳ね返るのが聞こえたけれど、車体は強く、ほとんど無傷だった。
前橋が言う通り、この車は複雑な地形をものともせず、凄まじいスピードで駆け抜けていった。兵士たちはまるで取り残されたように見えた。多目的に設計されたこの最新鋭の装甲車両に対抗できる手段を持たないばかりか、敵の侵入を防ぐための複雑な地形がかえって防御を難しくしてることで、彼らはただ圧倒されるばかりだった。
敵との距離は次第に広がり、私たちはその差を利用して、さらに前進していった。
研究所の門が視界に入ると、前橋の声が緊張を断ち切るように響いた。
「心の準備をしておけ」
その言葉は、これから始まる戦いの予感を確かなものにした。車は最後の遮断機を一気に破壊し、研究所の敷地内へと突入した。警報が鋭く鳴り響く中、私は不思議な静けさに包まれ、心の奥底で悟った。これは私の戦いであり、私が果たすべき任務なのだと。そして、自分が今まさにその瞬間を迎えたことを確信した。
車が建物の前で停車すると、守衛兵たちが一斉に発砲を開始はじめた。弾丸が車体に当たる音が響く中、前橋は助手席のハッチを素早く開け、天井に設置された機関銃に手をかけた。私は銃器には正直詳しくなかったけど、私はそれがM2機関銃であることは知っていた。前橋は冷静かつ的確に兵士たちに銃火を浴びせ、私たちが車外に出るための道を切り開いた。
外では混乱が渦巻いていたけれど、私の心には不思議なほどの静寂が広がっていた。車を降りると、警報音が空気を切り裂くように鳴り続けていた一方で、私の意識は研ぎ澄まされ、手に握る薙刀の重さが確かな現実感をもたらしてくれた。この瞬間に全てがかかっている。そう自分に言い聞かせた。
研究施設の建物は、科学研究の場というよりも、まるで要塞のように厳めしく、私たちを迎え撃つかのように立ちはだかっていた。薄暗い道を慎重に進むと、ひっそりと隠れた小さな目立たない扉が目に入った。その存在感のなさが、かえって不気味さを増していた。
前橋は迷わず扉の横にあるボタンを押し、扉は静かに開いた。
「内通者の協力がうまくいっているようだ」
前橋は淡々と言いながら、エレベーターの中を一瞥し、細かく確認した。彼の冷静さが、この危険なミッションにおいての経験と覚悟を物語っていた。
「このエレベーターなら、特定の器具やIDカードも必要なく中に入ることができる」
その言葉に、私は計画が順調に進んでいることへの自信を少しずつ深めることができた。これまでの不安が霧散し、心の中で最後の決意が固まっていくのを感じた。
「さあ、中に入りましょう」
抑えきれない興奮が私の声に滲んだ。
でも、前橋の次の言葉が私の胸に突き刺さった。
「これでお別れだ」
その言葉は、私の心に冷たい波を立て、思わず声を上げた。
「何を言っているの?」
混乱と驚きが私の声に現れていた。
「お前、本当にバカなんだな」
彼は続けた。
「今のは最新鋭の装甲車の力を借りて、相手が追い付けないうちに一時的に振り切っただけだ。あの兵士たちが追いつかないとでも思ってたのか?俺たちがしたのは、ただの時間稼ぎにすぎない」
「言っただろう」
前橋は冷静に言葉を続けた。
「お前の殺傷能力にはおそらく限界がある――500人程度が限界だ。伝承によれば、かつては千以上の敵を倒したとも言うが、それは容赦ない戦場での訓練を経て、限界を伸ばしたにすぎない。実際、お前の母親も、500足らずの大隊相手に瀕死の重傷を負ったわけだ。今、内部の200人の警備兵に対処することはできるかもしれないが、外に待ち構えている兵士たちが加われば、お前の勝算は大幅に減るだろう。だから、俺が外にいる大隊からお前を守らなければならない」
彼の言葉に、私は息を呑んだ。
「さらに、最後の手段として、この車内には高性能の爆薬を隠してある。それを爆発させれば、多くの敵を排除し、この小さな入り口をも吹き飛ばして、奴らが研究所内に進入するのを阻止できる。だから、中にはお前は一人で入れ」
私は愕然とした。自分の先見性の欠如が、私たちをこの危険な瞬間に追い込んでしまったことを痛感した。
母様の選んだ道が正しいと信じるならば、私はその遺志を引き継ぎ、正しい道を進みたいと強く願った。未来の行方は不明だったが、どこかに安心感が宿っているような気がした。
突然、車は急激にスピードを上げ始めた。前橋の声が冷たく響く。
「よし、これから奴らの陣地に入るぞ。気づかれる前に一気に突っ切って、研究所の建物まで行く。後部座席に戻って、戦う準備をしろ」
その命令に従い、私はすぐに後部座席へと移動し、戦闘の準備を整えた。敷地内に入ると、遮断機を装甲車が粉砕し、敵の兵士たちが姿を現した。でも、前橋はスピードを緩めることなく、容赦なく突き進んだ。
瞬時に警戒のアラームが響き渡り、兵士たちは混乱の中で装甲車を止めようと試みたけど、その行動は遅すぎた。彼らは状況に対応しきれず、効果的な攻撃ができないでいる。やがて、銃弾が装甲車の外壁に当たって跳ね返るのが聞こえたけれど、車体は強く、ほとんど無傷だった。
前橋が言う通り、この車は複雑な地形をものともせず、凄まじいスピードで駆け抜けていった。兵士たちはまるで取り残されたように見えた。多目的に設計されたこの最新鋭の装甲車両に対抗できる手段を持たないばかりか、敵の侵入を防ぐための複雑な地形がかえって防御を難しくしてることで、彼らはただ圧倒されるばかりだった。
敵との距離は次第に広がり、私たちはその差を利用して、さらに前進していった。
研究所の門が視界に入ると、前橋の声が緊張を断ち切るように響いた。
「心の準備をしておけ」
その言葉は、これから始まる戦いの予感を確かなものにした。車は最後の遮断機を一気に破壊し、研究所の敷地内へと突入した。警報が鋭く鳴り響く中、私は不思議な静けさに包まれ、心の奥底で悟った。これは私の戦いであり、私が果たすべき任務なのだと。そして、自分が今まさにその瞬間を迎えたことを確信した。
車が建物の前で停車すると、守衛兵たちが一斉に発砲を開始はじめた。弾丸が車体に当たる音が響く中、前橋は助手席のハッチを素早く開け、天井に設置された機関銃に手をかけた。私は銃器には正直詳しくなかったけど、私はそれがM2機関銃であることは知っていた。前橋は冷静かつ的確に兵士たちに銃火を浴びせ、私たちが車外に出るための道を切り開いた。
外では混乱が渦巻いていたけれど、私の心には不思議なほどの静寂が広がっていた。車を降りると、警報音が空気を切り裂くように鳴り続けていた一方で、私の意識は研ぎ澄まされ、手に握る薙刀の重さが確かな現実感をもたらしてくれた。この瞬間に全てがかかっている。そう自分に言い聞かせた。
研究施設の建物は、科学研究の場というよりも、まるで要塞のように厳めしく、私たちを迎え撃つかのように立ちはだかっていた。薄暗い道を慎重に進むと、ひっそりと隠れた小さな目立たない扉が目に入った。その存在感のなさが、かえって不気味さを増していた。
前橋は迷わず扉の横にあるボタンを押し、扉は静かに開いた。
「内通者の協力がうまくいっているようだ」
前橋は淡々と言いながら、エレベーターの中を一瞥し、細かく確認した。彼の冷静さが、この危険なミッションにおいての経験と覚悟を物語っていた。
「このエレベーターなら、特定の器具やIDカードも必要なく中に入ることができる」
その言葉に、私は計画が順調に進んでいることへの自信を少しずつ深めることができた。これまでの不安が霧散し、心の中で最後の決意が固まっていくのを感じた。
「さあ、中に入りましょう」
抑えきれない興奮が私の声に滲んだ。
でも、前橋の次の言葉が私の胸に突き刺さった。
「これでお別れだ」
その言葉は、私の心に冷たい波を立て、思わず声を上げた。
「何を言っているの?」
混乱と驚きが私の声に現れていた。
「お前、本当にバカなんだな」
彼は続けた。
「今のは最新鋭の装甲車の力を借りて、相手が追い付けないうちに一時的に振り切っただけだ。あの兵士たちが追いつかないとでも思ってたのか?俺たちがしたのは、ただの時間稼ぎにすぎない」
「言っただろう」
前橋は冷静に言葉を続けた。
「お前の殺傷能力にはおそらく限界がある――500人程度が限界だ。伝承によれば、かつては千以上の敵を倒したとも言うが、それは容赦ない戦場での訓練を経て、限界を伸ばしたにすぎない。実際、お前の母親も、500足らずの大隊相手に瀕死の重傷を負ったわけだ。今、内部の200人の警備兵に対処することはできるかもしれないが、外に待ち構えている兵士たちが加われば、お前の勝算は大幅に減るだろう。だから、俺が外にいる大隊からお前を守らなければならない」
彼の言葉に、私は息を呑んだ。
「さらに、最後の手段として、この車内には高性能の爆薬を隠してある。それを爆発させれば、多くの敵を排除し、この小さな入り口をも吹き飛ばして、奴らが研究所内に進入するのを阻止できる。だから、中にはお前は一人で入れ」
私は愕然とした。自分の先見性の欠如が、私たちをこの危険な瞬間に追い込んでしまったことを痛感した。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる