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ざまぁされたらやり返す編

50話 おわりのおわり、からの始まり イラストあり

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「さあ~、まず紹介するのは、階段の上に飾ってある、あの絵! 見えます? あのでっかい抽象画です! ねえ、なにが描いてあるか分からないですよね~。
でもあれ……なんとなんとォ、新進気鋭の前衛芸術家、ドルベオの作品なんですね~! サザリーピークのオークションで一目惚れしちゃってね、買っちゃいました~! お値段なんと……102億ルードで~す!! はいっ、すご~い! サザリーピークのオークションレコード更新しちゃいました~!
 あ、サザリーピークといえばね、そこで買ったこんなのもありますよ! この灰皿とか宝剣とかはね、初代勇者の銀武(ぎんぶ)が使ってたやつで~……」

 彼はその後もエントランスホール内を歩き回り、調度品や家具などを紹介して回った。
 そのいずれも高価のもので、庶民に手が出るものではなかった。
 もちろん、調度品はここにあるものだけではない。
 この屋敷のところどころに、高価な品々が点在しているのだ。
 ユーリに買えないものなど、この世にないのだ。

「いやあ~、もうほんとそうなんですよぉ~。確かにガイムさん倒すのにかなりお金使っちゃいましたけどね、それでも1000億ルード以上持ってますから、僕。『アンペルマン』の子会社でねえ、株を半数以上所有してるところがいっぱいあるんでね、もうなんもしなくてもお金が集まっちゃって集まっちゃって……。困っちゃうなあ、もぉ~!」

 再びエントランスホールの中心へとやって来たユーリは、入り口に背を向け、

「……だか、ら……だからぁ!
 僕が! この世で! 手に入らないものなんて……グスッ! ひとつも! ないんだよお!!」

 調度品に……いや、屋敷全体に向けて、叫ぶようにしてそう言った。
 すべてを持っている男は、なにひとつ持っていないかのように。
 豪奢な屋敷の中心で、泣きわめいていたのだった。

「一等地のでっかい家! たっかいお酒に食べ物、あと変な絵! 一生遊んで暮らせるお金! かわいい女の子!!
 僕は全部持ってる! この世の全部を持ってるんだ! 好きなときに寝て! 好きなときに好きなもの食べて! 好きなときに好きな女の子とエッチする! そういうことができるんだよ!
 なんの不満もない! なんの不自由もないぞ! 僕はこれから好きに生きるんだ!
 どうだあぁ!? 参ったかあああぁぁ!?」

 そうとだけ叫ぶと、ユーリはヨロヨロと壁際のソファへと向かい、倒れ込むように座り込んだ。
 肩で荒い呼吸を繰り返し、それが落ち着いてきたころ、ケータイを取り出してとある相手へと念話をかけた。

『……もしもし、どうしたんですか、先輩?』

 念話の相手──ヒィロに向けて、ユーリはボロボロと泣きながら情けない声で告げる。

「どうしよう、ヒィちゃん。やっぱ勇者辞めんの死ぬほどしんどい。元老院ぶっ潰すから、そっち戻ってもいい?」
『なにがしたいんですか、あなたは……』

 呆れ半分、そして『やはりこうなったか……』という思い半分で、ヒィロは言葉を返した。
 何度も論じたように、ユーリのメンタルはそこまで強くない。
 ガイムを倒すという大きな目標があるうちは良かった。
 メンケア担であるセイラたちが周りにいるときも、まだ大丈夫だった。

 しかし目標が達成され、独りぼっちになった瞬間、この通り。
 よわよわなメンタルが顔を覗かせ、ひとりで立てなくなるほど凹んでしまっているようだった。

『自分も戻って欲しいのは山々ですが……さすがにもうどうしようもありません。新体制で動き始めてしまっているし、本当に元老院を敵に回すようなことも、その……』
「うん、分かってる、分かってる。あのときはちょっとテンションバグっちゃって、わあああってなっちゃって、思わずそう言っちゃっただけ」

 ファイフに気絶させられ、馬車の中で目を覚ましたユーリは、その発言に対して大いに反省した。自分のやりたいことを通すために、国にいる何千万人もの命を犠牲にするなど、それはもうどっちかっていうと魔王のメンタリティである。

「全部わかってる。分かってるんだよ……でもやっぱ、いざそうなってみると、やっぱり寂しくなっちゃってさ……」
『……先輩、まさか変なこと考えていないでしょうね?』
「さすがにそこまでじゃないけど……なんか、もう、なにしていいか分からなくてさ」

 生まれたときから勇者として生きてきたので、他の生き方が分からない。
 趣味らしい趣味もない。どころか、休日を取るなど久々過ぎて、その過ごし方すら分からない。
 勇者を辞めると決めた瞬間から、こうなることは分かっていた。
 しかし、思ったよりもヤバいメンタルになってしまったようだ。

 ──と。
 ユーリが更なる泣き言を吐こうとした、そのとき、

「……それを一緒に考えるために、私たちがいるのでしょう?」

 視界の端から、セイラの優しい声が鳴り響いた。
 反射的に首を巡らせると、

「……え?」

 そこには案の定、聖母のような笑顔を浮かべたセイラが、他のメンバーとともに屹立していた。
 が、その手に持たれているのは……。

「……えっと、なんでセイラさん、ウォーハンマーなんて持ってんの? 他のみんなも、ゴリゴリに武装して……」

 セイラはウォーハンマーを、ブレイダは剣を、カリナとハンナはリボルバーを。
 各々の獲物を手に、彼女らはユーリへと歩み寄ってきているのだった。

『どうしたんですか、先輩? え、武装って……き、聞き間違いですよね?』

 と、ヒィロの心配そうな声が響くケータイを、セイラがそっと取り上げる。そして『大丈夫ですよ。また掛けなおします』と言って念話を切り、ユーリへと返した。
 そうしてから、再びユーリに向けて優しく笑いかけ、

「ユーリ・ザッカ―フィールド。あなたに決闘を申し込みます」
「……は?」

 と、二秒ほど時間を空けて頓狂な声を返す。
 決闘とは、メンバー間でどうしても折り合いがつかないとき、最終的な交渉手段として使われる、『アンペルマン』の裏ルールともいえる解決策だ。
 文字通り、対立する意見を持つ者同士が、話し合いによって決闘方法を決め、ガチンコでやり合うのだ。
 以前ファイフが、理不尽な理由でユーリに挑んだアレである。
 そのときも唐突だったが、それ以上にわけの分からないタイミングで発動されたため、ユーリは大きく眉をひそめながら、

「えっと……な、なんで? 別に僕たち、戦う理由なんて……」
「ありますよ。勇者様。私が勝ったら……」

 そこでセイラは大きく息を吸い込み──やがて覚悟を固めるようにして……。
 その言葉を、言った。

「──私たちを、あなたのハーレムに入れていただきます」

「……………………は?」

 ガチャンッ! と、一同の持つ武器が、物騒な音を打ち鳴らした。









※※以下筆者後書き※※

今回もご覧いただきありがとうございます!!

これにて三編は終了となります! 
ここからがようやく、ようやく筆者が本当にやりたかった展開となります……長かった……!!

そしてそして、本日は14時に登場人物紹介②も投稿させていただきますので、よろしければそちらのほうもご一読ください!

ご意見ご指摘、ブックマーク登録やいいね、大会ポイントの投票など、よろしかったらお願いいたします!!
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