11 / 78
勇者辞めます編
10話 勇者(後編) イラストあり
しおりを挟む
「……あー痛っ。いたたー……。あぁ~。またひどいこといっぱい言っちゃったよ~。めっちゃ病む~~~。
しかもさ~、シークエンスさんキレ芸うますぎなんだもん。こっちも思わず力は入っちゃって、ちょっと力込めて蹴っちゃったよぉ~……。マジ可哀そう。追加でボーナスあげよ……いたた」
大講堂から退出した一同は、長い廊下を歩き進み、裏口へと向かっていた。
その先頭を行くユーリに、マホはため息を吐きながら、
「……あそこまでする必要なかったと思うぜ? 確かにみんなブチ切れてはいたけどよ、ちょっと時間が経って冷静になれば、やっぱりアレなんかおかしくね? ってなるとも思うし」
「感情は時間の経過とともに消退する。でも事実はなにがあっても変わらないし、議事録も残る。ああいう公の場で、僕がひどいことしたって事実を作っておけば、あの場に居なかったみんなも、僕を嫌いになりやすいでしょ……いたた」
「……それで、この後はどうなさるのですか?」
感情を押し殺すようにセイラがそう訊ねると、ユーリはケータイに目を落とし、
「痛い、いたた……ん~。まあ特に問題なく辞められたから、予定通りかな。帝国のあの人に呼ばれてるから、みんなで行こう」
「帝国のあの人って……ああ、アイツか……!」
そう言うファイフの顔に怒りが浮かぶ。彼女ほどあからさまではないにしろ、一同の表情にも同じような感情が宿っていった。
帝国のあの人物。
彼の顔を思い浮かべるのに、怒りと殺意がセットにならないことはなかった。
ファイフは荒々しい口調で言う。
「毎回思うんだけどさ、なんであいつわざわざ勇者を呼びつけるわけ? 念話かリモートで済むような用件のときとかもあるしさ!」
「なんだかんだ臆病な人だからね。あの人にとっての大事な報告は、直接聞いておきたいんだよ。
あとは、王国最強の勇者が、帝国のいち大臣にわざわざ会いに来た……っていう事実が欲しいんだろうね。それだけで他の大臣や宰相からの見る目が変わってくるからさ……いたた」
「は、くだらなっ。そんなことのために利用すんなっつーの!」
「そーだそーだ! ねえ勇者様、別に行かなくても良くないですか? もう勇者も辞めたわけですし……」
と、エンリエッタも加わって不満を垂れるが、ユーリは苦笑しながら肩をすくめ、
「そういうわけにはいかないよ。勇者を辞めるって言ったって、きちんとやることはやらないといけない……。
じゃないと、残ったみんなに迷惑がかかっちゃうでしょ? いたた……」
「いやどんだけ痛がんだよお前。さっさとセイラに治癒魔法かけてもらっ……」
そう言いながらユーリの前に回り込んだマホは、「あっ……」と声を上げて目を逸らした。
……ユーリは、
「ぐす……ひく……あー……。痛い。痛くて涙……ひぐ。涙出てきた。あー、マジ痛い。ぐす、痛すぎ」
──ユーリは、泣いていた。
碧眼から大粒の波を流し、嗚咽をかみ殺すようにして、泣いていたのだ。
「違うよマホちゃん。ぐす……これ、痛くて泣いてるだけだから。別に、ひっく、悲しいとか、つ、辛いとかじゃないから……うぅ……すぐ、泣き止むから……」
「……バカ勇者」
マホは切ない表情を浮かべ、それが一同にも伝播していく。
ユーリのメンタルは、そこまで強くはない。
クランメンバーの前では優しく頼もしく振舞ってはいるものの、それは肩書通りの振る舞いをするため、背伸びしているだけに過ぎない。
ふざけて子供のような振る舞いをしているときのほうが、素の彼に近いのだ。
勇者で在り続けるため、皆の期待に応えるため、必死で大人の振りをしようとしている子ども。
クランメンバーはどうか知れないが、彼を良く知る元祖メンバーは、ユーリにそのような印象を抱いていた。
そして『アンペルマン』のことを誰よりも大事に思っているのは、ユーリだ。
ユーリが作った組織であり、大事な戦友たちの居場所であり、帰るべき家でもある。
それを、あんなひどい辞め方をすることになってしまったのだ。
その心中は、察するに余りあるものがあった。
子どもだったら、きっと泣いてしまうだろう。
「……偉いですよ、坊ちゃん。最後の最後まで皆のことを考えてあげられて、とても立派です」
しんみりとした空気の中、ブレイダがユーリへと歩み寄り、
「だからブレイダが、いっぱいいい子いい子してあげますね~♡」
と、いきなりユーリの顔をかき抱いて、自身の深い谷間へと押し付けた。
「ぶわっ! ちょ、いきなりなにす……ぐむぅ!?」
豊満で柔らかな乳房が顔全体に押し付けられ、喋ることすらままならない。そしてぶるぶると胸が揺れることで、その先端の見えてはいけないものがチラチラと視界に入ってしまう。
そして、そうこうしているうちに、
「……ブレイダさん。そういった役割は、第一秘書にして聖女である私がやるべきかと」
セイラがユーリの肩にぴたりと張り付き、同じように胸を押し当ててきたのだ。さらには左右に身体を揺らし、その膨らみをぐにぐにと押し付けてこられたので、着衣の上からでも柔らかさと温かさが生々しく伝わってきてしまう。
「ちょ、ちょっと! セイラさんまでなにして……おぉう!」
ドン! と勢いよく反対側の肩に抱き着いてきたのはファイフだ。彼女も弾力のある健康的な胸を押し付け、ユーリの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「勇者! あんた偉い、偉いよ! こんな状況になっても、部下をそんなに思ってあげてさ! 人の上に立つ人間ってのは、あんたみたいなことを言うんだよ!!」
いや違うもん勃ちそうなんだけど!? などと思っていると、今度は背後から温かな感触が押し当てられる。
「わ、わたし! 他の人ほど大きくないけど……こうやって、こぅ、寄せて上げればどうにかなるので! あとマホちゃんのよりはあるので!」
「殺すぞテメエ。ボクのほうがちったぁあるわ。なあ勇者、そうだよな!?」
そんな口論を繰り広げつつ、エンリエッタとマホも背中にぴっとりと引っ付いてきた。確かにふたりとも控えめな膨らみではあるのだが、それだけに形がはっきりと分かり、巨乳とは違った趣の興奮を誘う。
ともかくユーリは、超爆乳に顔を埋め、左右から巨乳に挟まれ、背後からはちっぱいを押し付けられるという、カオスな事態が巻き起こってしまったのだった。
「神様ありがとう……じゃなくて! みんな悪ノリが過ぎるて! こんなん誰かに見られたら……」
ブレイダの谷間から顔を上げて生還すると、ユーリはそう言いかけて……、
「いや、まあ、そっか……別にもう、誰に見られても困るわけじゃないのか」
「そうですよ~。坊ちゃんはもう、なにをするにも、どこに行くのも自由なんです♪ 周りに気兼ねなんてする必要ないんですよ~」
間髪入れずにそう返すと、ブレイダは鼻と鼻とが触れ合いそうなほどの距離で、
「……ただし、なにをするときも、どこに行くときも、私たちと一緒です。
坊ちゃんが楽しいときも、悲しいときも、つらいときも、えっとな気分でいるときだって、ずっと一緒に居させてください」
「………………っ」
優しく諭すような口調で、そう言った。
「私たちはそのために、あなたについてきたのですから、少しは頼ってくださいな」
「ブレイダさん……」
思わず彼女の名を呼ぶと、今度はマホは一層強くユーリを抱きしめ、
「バカ勇者がよ、ひとりで抱え込んでんじゃねえよ。
確かにお前さんは国内最強だし、世界でもトップランカーの勇者の張り合える程度には化け物だ。
でもな、化け物にだって心はある。
そんで、それを無くしちまったら、側(ガワ)だけじゃなくて中身まで化け物になっちまうんだよ。
そうならねえためにボクたちがいるんだ。忘れてんじゃねえよタコ」
するとエンリエッタとファイフも口々に告げる。
「ですです! 勇者様は一人で重いもの持ち過ぎ過ぎなんですよ! ちゃんと私たちにも分けてください!」
「そーだよ! あたし、重いもん持つのだけは得意だからさ! ベンチ1400kg分までなら余裕だよ!」
最後にセイラが優しく顔を包み込み、キスの距離感まで顔を近づけてくると、
「クランを辞めても、勇者を辞めても、たとえ人間を辞めたって、私たちは勇者様と一緒です。
勇者様がそう思ってくださっているのと同じように、私たちもそう思っています。
あなたをひとりには、絶対にさせません。
ですから──どこまででも、いつまででも、ずっと一緒に居させてください」
「……セイラさん、みんな」
ユーリが失ったものは、計り知れないほど大きなものだ。
その事実は揺るぎない。
変えることもできない。
──しかし。
「うん……うん。そうだね。いままでみたいに、そうさせてもらう!」
ユーリの手の中に残ったものも、確かにあるのだ。
そしてそれもまた、計り知れないほど大きなもの──。
勇者パーティの元祖メンバーたち。
数々の死線をともに潜り抜けてきた、これ以上ないほど信頼のおける、大事な仲間達だ。
その事実もまた、変わることはない。
──彼女らと、一緒になら、
「……うん……大丈夫。僕はもう、大丈夫だよ!
君たちと一緒なら……僕はなににだってなれるし、どにでも行けるし、なんだってできる!
勇者なんて肩書が無くても、最強でいられる!
僕たちの冒険は、これからだああぁぁぁ!」
その宣言に、マホとファイフ、そしてエンリエッタは「っしゃらあああい!」と拳を天に突き上げ、ブレイダは「男の子~」と小さく拍手をし、セイラは優しく頷きつつ、どさくさに紛れてちょっとキスをする。
いつも通りのやりとりと、いつも通りのスキンシップ。
勇者を辞めた前でも後でも変わらない、いつも通りの光景。
自分はすべてを失った……と、そんなふうに思っていたのが、バカみたいだ。
ユーリにはこんなに素晴らしい『いつも通り』があるのに。
そしてそれは、これからもずっとずっと続いていくというのに。
「よっしゃ! 気合入った! ちゃっちゃと帝国で用事済ませて、ちゃっちゃと帰ってきて、みんなで飲み会しよ~っ!」
「お、いいね~! でもその前に、汗流してえなあ~。
どうよ? 新アジトに着いたら、このメンツで仲良く風呂に入るってのは?」
と、マホが件の半眼上目遣いで悪戯っぽく提案する。常ならツッコミを入れるところなのだが、気分が良かったので、ついついその言葉に乗っかってしまった。
「いいねいいね~! 僕ん家のお風呂、防水のでっかいソープマットあるからさ、カリちゃむとハンナさんも呼んで、みんなで仲良くぬるぬるの8Pでも……!」
振り返りながらそう言ったユーリは、真っ青な顔をして押し黙る。
なぜなら、
「……ソ、ソープマット……ぬるぬる……は、はちぴー……!」
ユーリの視線の先──長い廊下の先には、ヒィロが佇んでいたのだ。
彼女は真っ赤な顔をしてフルフルと震えつつ、ユーリを見ていた。
──美女と美少女と美幼女五人に抱き着かれている、ユーリを。
ユーリは深く、深く深呼吸をしてから、努めて冷静な声で、
「や、やあ……ヒィロさん。えっと、まだなにか……」
「……た、退任式で渡そうと思っていた、お花と万年筆を持って、き、来たのですが……」
ヒィロはプルプルと震えつつ、持っていた万年筆を振りかぶり、
「け、汚らわしいもの見せるな! この変態がああぁぁァァッ!」
「痛あぁぁァッ!」
スコンッ! と、万年筆がユーリの額に突き刺さる。ヒィロはその姿にくるりと背を向けると、「やりたい放題かああァっ!」と吐き捨てながら逃げ去ってしまった。
ユーリは恐る恐る万年筆を引っこ抜き、ダラダラと血が流れる額を触りながら、
「お、おぉう……さ、最後の最後で、流血騒ぎに……!」
「お前が調子に乗るから悪い」
「それマホちゃんが言うの違くない!? ……まあ、とにかく、」
セイラに治癒魔法をかけてもらいつつ、ユーリは少しだけ目を細め、
「最後の一仕事で、会いに行きますか~。
……帝国の、ガイム大臣のところに」
非友好国の隣国・ルミエ帝国の大臣、ガイム。
彼がユーリを呼びつけた人物であり、彼の国の優秀な外務大臣であり……。
──そして、ユーリが引退することになった、真の理由を作り上げた張本人。
そんな男の元へと、一同は向かって行くのだった。
※※以下、筆者後書き※※
>>>「……た、退任式で渡そうと思っていた、お花と万年筆を持って、き、来たのですが……」
ぶん殴ってから蹴り倒し、罵声を浴びせながら踏みつけた相手に、ちゃんとお花と万年筆を持って来るヒィロさんのお話でした。
改めまして、こんにちは、夕凪五月雨影法師です! アルファポリス様は後書き機能が無さそうですので、こちらのスペースをお借りして後書きとさせていただきます。
今回もご覧いただきありがとうございました!
これにて一編は終了となります。
次の編から更に大きく話が進行し、俺TUEEEEや激アツ展開、そしてえちえちシーンも盛りだくさんでお送りできると思いますので、今後ともよろしくお願いいたします!!
また、ご意見ご指摘、お気に入り登録やいいね、大賞ポイントの投票などもいただけますと、創作をするうえでの非常に大きなモチベーションとなりますので、よろしかったらそちらのほうもお願いいたします……!
……そ、それはそうと、未だに背景と衣装が固定できない……。ブレイダの顔とか胸のサイズもブレブレ……誰か助けてください……(切実)
これが
こうなってしまう
しかもさ~、シークエンスさんキレ芸うますぎなんだもん。こっちも思わず力は入っちゃって、ちょっと力込めて蹴っちゃったよぉ~……。マジ可哀そう。追加でボーナスあげよ……いたた」
大講堂から退出した一同は、長い廊下を歩き進み、裏口へと向かっていた。
その先頭を行くユーリに、マホはため息を吐きながら、
「……あそこまでする必要なかったと思うぜ? 確かにみんなブチ切れてはいたけどよ、ちょっと時間が経って冷静になれば、やっぱりアレなんかおかしくね? ってなるとも思うし」
「感情は時間の経過とともに消退する。でも事実はなにがあっても変わらないし、議事録も残る。ああいう公の場で、僕がひどいことしたって事実を作っておけば、あの場に居なかったみんなも、僕を嫌いになりやすいでしょ……いたた」
「……それで、この後はどうなさるのですか?」
感情を押し殺すようにセイラがそう訊ねると、ユーリはケータイに目を落とし、
「痛い、いたた……ん~。まあ特に問題なく辞められたから、予定通りかな。帝国のあの人に呼ばれてるから、みんなで行こう」
「帝国のあの人って……ああ、アイツか……!」
そう言うファイフの顔に怒りが浮かぶ。彼女ほどあからさまではないにしろ、一同の表情にも同じような感情が宿っていった。
帝国のあの人物。
彼の顔を思い浮かべるのに、怒りと殺意がセットにならないことはなかった。
ファイフは荒々しい口調で言う。
「毎回思うんだけどさ、なんであいつわざわざ勇者を呼びつけるわけ? 念話かリモートで済むような用件のときとかもあるしさ!」
「なんだかんだ臆病な人だからね。あの人にとっての大事な報告は、直接聞いておきたいんだよ。
あとは、王国最強の勇者が、帝国のいち大臣にわざわざ会いに来た……っていう事実が欲しいんだろうね。それだけで他の大臣や宰相からの見る目が変わってくるからさ……いたた」
「は、くだらなっ。そんなことのために利用すんなっつーの!」
「そーだそーだ! ねえ勇者様、別に行かなくても良くないですか? もう勇者も辞めたわけですし……」
と、エンリエッタも加わって不満を垂れるが、ユーリは苦笑しながら肩をすくめ、
「そういうわけにはいかないよ。勇者を辞めるって言ったって、きちんとやることはやらないといけない……。
じゃないと、残ったみんなに迷惑がかかっちゃうでしょ? いたた……」
「いやどんだけ痛がんだよお前。さっさとセイラに治癒魔法かけてもらっ……」
そう言いながらユーリの前に回り込んだマホは、「あっ……」と声を上げて目を逸らした。
……ユーリは、
「ぐす……ひく……あー……。痛い。痛くて涙……ひぐ。涙出てきた。あー、マジ痛い。ぐす、痛すぎ」
──ユーリは、泣いていた。
碧眼から大粒の波を流し、嗚咽をかみ殺すようにして、泣いていたのだ。
「違うよマホちゃん。ぐす……これ、痛くて泣いてるだけだから。別に、ひっく、悲しいとか、つ、辛いとかじゃないから……うぅ……すぐ、泣き止むから……」
「……バカ勇者」
マホは切ない表情を浮かべ、それが一同にも伝播していく。
ユーリのメンタルは、そこまで強くはない。
クランメンバーの前では優しく頼もしく振舞ってはいるものの、それは肩書通りの振る舞いをするため、背伸びしているだけに過ぎない。
ふざけて子供のような振る舞いをしているときのほうが、素の彼に近いのだ。
勇者で在り続けるため、皆の期待に応えるため、必死で大人の振りをしようとしている子ども。
クランメンバーはどうか知れないが、彼を良く知る元祖メンバーは、ユーリにそのような印象を抱いていた。
そして『アンペルマン』のことを誰よりも大事に思っているのは、ユーリだ。
ユーリが作った組織であり、大事な戦友たちの居場所であり、帰るべき家でもある。
それを、あんなひどい辞め方をすることになってしまったのだ。
その心中は、察するに余りあるものがあった。
子どもだったら、きっと泣いてしまうだろう。
「……偉いですよ、坊ちゃん。最後の最後まで皆のことを考えてあげられて、とても立派です」
しんみりとした空気の中、ブレイダがユーリへと歩み寄り、
「だからブレイダが、いっぱいいい子いい子してあげますね~♡」
と、いきなりユーリの顔をかき抱いて、自身の深い谷間へと押し付けた。
「ぶわっ! ちょ、いきなりなにす……ぐむぅ!?」
豊満で柔らかな乳房が顔全体に押し付けられ、喋ることすらままならない。そしてぶるぶると胸が揺れることで、その先端の見えてはいけないものがチラチラと視界に入ってしまう。
そして、そうこうしているうちに、
「……ブレイダさん。そういった役割は、第一秘書にして聖女である私がやるべきかと」
セイラがユーリの肩にぴたりと張り付き、同じように胸を押し当ててきたのだ。さらには左右に身体を揺らし、その膨らみをぐにぐにと押し付けてこられたので、着衣の上からでも柔らかさと温かさが生々しく伝わってきてしまう。
「ちょ、ちょっと! セイラさんまでなにして……おぉう!」
ドン! と勢いよく反対側の肩に抱き着いてきたのはファイフだ。彼女も弾力のある健康的な胸を押し付け、ユーリの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「勇者! あんた偉い、偉いよ! こんな状況になっても、部下をそんなに思ってあげてさ! 人の上に立つ人間ってのは、あんたみたいなことを言うんだよ!!」
いや違うもん勃ちそうなんだけど!? などと思っていると、今度は背後から温かな感触が押し当てられる。
「わ、わたし! 他の人ほど大きくないけど……こうやって、こぅ、寄せて上げればどうにかなるので! あとマホちゃんのよりはあるので!」
「殺すぞテメエ。ボクのほうがちったぁあるわ。なあ勇者、そうだよな!?」
そんな口論を繰り広げつつ、エンリエッタとマホも背中にぴっとりと引っ付いてきた。確かにふたりとも控えめな膨らみではあるのだが、それだけに形がはっきりと分かり、巨乳とは違った趣の興奮を誘う。
ともかくユーリは、超爆乳に顔を埋め、左右から巨乳に挟まれ、背後からはちっぱいを押し付けられるという、カオスな事態が巻き起こってしまったのだった。
「神様ありがとう……じゃなくて! みんな悪ノリが過ぎるて! こんなん誰かに見られたら……」
ブレイダの谷間から顔を上げて生還すると、ユーリはそう言いかけて……、
「いや、まあ、そっか……別にもう、誰に見られても困るわけじゃないのか」
「そうですよ~。坊ちゃんはもう、なにをするにも、どこに行くのも自由なんです♪ 周りに気兼ねなんてする必要ないんですよ~」
間髪入れずにそう返すと、ブレイダは鼻と鼻とが触れ合いそうなほどの距離で、
「……ただし、なにをするときも、どこに行くときも、私たちと一緒です。
坊ちゃんが楽しいときも、悲しいときも、つらいときも、えっとな気分でいるときだって、ずっと一緒に居させてください」
「………………っ」
優しく諭すような口調で、そう言った。
「私たちはそのために、あなたについてきたのですから、少しは頼ってくださいな」
「ブレイダさん……」
思わず彼女の名を呼ぶと、今度はマホは一層強くユーリを抱きしめ、
「バカ勇者がよ、ひとりで抱え込んでんじゃねえよ。
確かにお前さんは国内最強だし、世界でもトップランカーの勇者の張り合える程度には化け物だ。
でもな、化け物にだって心はある。
そんで、それを無くしちまったら、側(ガワ)だけじゃなくて中身まで化け物になっちまうんだよ。
そうならねえためにボクたちがいるんだ。忘れてんじゃねえよタコ」
するとエンリエッタとファイフも口々に告げる。
「ですです! 勇者様は一人で重いもの持ち過ぎ過ぎなんですよ! ちゃんと私たちにも分けてください!」
「そーだよ! あたし、重いもん持つのだけは得意だからさ! ベンチ1400kg分までなら余裕だよ!」
最後にセイラが優しく顔を包み込み、キスの距離感まで顔を近づけてくると、
「クランを辞めても、勇者を辞めても、たとえ人間を辞めたって、私たちは勇者様と一緒です。
勇者様がそう思ってくださっているのと同じように、私たちもそう思っています。
あなたをひとりには、絶対にさせません。
ですから──どこまででも、いつまででも、ずっと一緒に居させてください」
「……セイラさん、みんな」
ユーリが失ったものは、計り知れないほど大きなものだ。
その事実は揺るぎない。
変えることもできない。
──しかし。
「うん……うん。そうだね。いままでみたいに、そうさせてもらう!」
ユーリの手の中に残ったものも、確かにあるのだ。
そしてそれもまた、計り知れないほど大きなもの──。
勇者パーティの元祖メンバーたち。
数々の死線をともに潜り抜けてきた、これ以上ないほど信頼のおける、大事な仲間達だ。
その事実もまた、変わることはない。
──彼女らと、一緒になら、
「……うん……大丈夫。僕はもう、大丈夫だよ!
君たちと一緒なら……僕はなににだってなれるし、どにでも行けるし、なんだってできる!
勇者なんて肩書が無くても、最強でいられる!
僕たちの冒険は、これからだああぁぁぁ!」
その宣言に、マホとファイフ、そしてエンリエッタは「っしゃらあああい!」と拳を天に突き上げ、ブレイダは「男の子~」と小さく拍手をし、セイラは優しく頷きつつ、どさくさに紛れてちょっとキスをする。
いつも通りのやりとりと、いつも通りのスキンシップ。
勇者を辞めた前でも後でも変わらない、いつも通りの光景。
自分はすべてを失った……と、そんなふうに思っていたのが、バカみたいだ。
ユーリにはこんなに素晴らしい『いつも通り』があるのに。
そしてそれは、これからもずっとずっと続いていくというのに。
「よっしゃ! 気合入った! ちゃっちゃと帝国で用事済ませて、ちゃっちゃと帰ってきて、みんなで飲み会しよ~っ!」
「お、いいね~! でもその前に、汗流してえなあ~。
どうよ? 新アジトに着いたら、このメンツで仲良く風呂に入るってのは?」
と、マホが件の半眼上目遣いで悪戯っぽく提案する。常ならツッコミを入れるところなのだが、気分が良かったので、ついついその言葉に乗っかってしまった。
「いいねいいね~! 僕ん家のお風呂、防水のでっかいソープマットあるからさ、カリちゃむとハンナさんも呼んで、みんなで仲良くぬるぬるの8Pでも……!」
振り返りながらそう言ったユーリは、真っ青な顔をして押し黙る。
なぜなら、
「……ソ、ソープマット……ぬるぬる……は、はちぴー……!」
ユーリの視線の先──長い廊下の先には、ヒィロが佇んでいたのだ。
彼女は真っ赤な顔をしてフルフルと震えつつ、ユーリを見ていた。
──美女と美少女と美幼女五人に抱き着かれている、ユーリを。
ユーリは深く、深く深呼吸をしてから、努めて冷静な声で、
「や、やあ……ヒィロさん。えっと、まだなにか……」
「……た、退任式で渡そうと思っていた、お花と万年筆を持って、き、来たのですが……」
ヒィロはプルプルと震えつつ、持っていた万年筆を振りかぶり、
「け、汚らわしいもの見せるな! この変態がああぁぁァァッ!」
「痛あぁぁァッ!」
スコンッ! と、万年筆がユーリの額に突き刺さる。ヒィロはその姿にくるりと背を向けると、「やりたい放題かああァっ!」と吐き捨てながら逃げ去ってしまった。
ユーリは恐る恐る万年筆を引っこ抜き、ダラダラと血が流れる額を触りながら、
「お、おぉう……さ、最後の最後で、流血騒ぎに……!」
「お前が調子に乗るから悪い」
「それマホちゃんが言うの違くない!? ……まあ、とにかく、」
セイラに治癒魔法をかけてもらいつつ、ユーリは少しだけ目を細め、
「最後の一仕事で、会いに行きますか~。
……帝国の、ガイム大臣のところに」
非友好国の隣国・ルミエ帝国の大臣、ガイム。
彼がユーリを呼びつけた人物であり、彼の国の優秀な外務大臣であり……。
──そして、ユーリが引退することになった、真の理由を作り上げた張本人。
そんな男の元へと、一同は向かって行くのだった。
※※以下、筆者後書き※※
>>>「……た、退任式で渡そうと思っていた、お花と万年筆を持って、き、来たのですが……」
ぶん殴ってから蹴り倒し、罵声を浴びせながら踏みつけた相手に、ちゃんとお花と万年筆を持って来るヒィロさんのお話でした。
改めまして、こんにちは、夕凪五月雨影法師です! アルファポリス様は後書き機能が無さそうですので、こちらのスペースをお借りして後書きとさせていただきます。
今回もご覧いただきありがとうございました!
これにて一編は終了となります。
次の編から更に大きく話が進行し、俺TUEEEEや激アツ展開、そしてえちえちシーンも盛りだくさんでお送りできると思いますので、今後ともよろしくお願いいたします!!
また、ご意見ご指摘、お気に入り登録やいいね、大賞ポイントの投票などもいただけますと、創作をするうえでの非常に大きなモチベーションとなりますので、よろしかったらそちらのほうもお願いいたします……!
……そ、それはそうと、未だに背景と衣装が固定できない……。ブレイダの顔とか胸のサイズもブレブレ……誰か助けてください……(切実)
これが
こうなってしまう
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~
きよらかなこころ
ファンタジー
シンゴはある日、事故で死んだ。
どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。
転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。
弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる






