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七章 決戦
42話 死線を超えた先に11
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「ハァハァ」
「よく粘るな」
「あ、当たり前でしょ!」
アストによく似た化け物と対峙して約6分。お父様を伴いながら帝国と王国の間あたりまで逃げてきた。お父様はなんとかかすり傷程度で済んでいるが、私は片耳を斬られていて止血程度の治癒しかできていない。それに至る所に切り傷ができて血を結構流している。
アストから貰った指輪のアーティファクトは何故か男の剣によって傷ついた箇所には機能していない。それにもし体は再生できても血までは回復しないからこのままだと動けなくなってしまう。
(もってあと10分……これ以上傷が増えたらダメかも……)
そこで一瞬、お父様を置いていけば私だけでも助かるのでは?と一瞬考えてしまったがすぐにそれを拒絶した。
(お父様を置いて逃げる事だけはしたくない!アストならきっと見捨てない。何か策は…何かないの?!)
必死に頭を働かせるが決定打になるような策は出てこない。この間にもアストのような男は攻撃の手を休めることはなく、ついに私は片足を切られてしまい倒れてしまった。その拍子にお父様が吹き飛んでしまったが致命的な事にはならなかった。
ホッと息をしたのも束の間、男はいつのまにか私を見下すような位置におり手に持つ大剣を振り下ろそうとしていた。
私は咄嗟に体に風魔法を当てて攻撃を躱しながら距離を取ったが、男は嘲笑うかのようにお父様の方に近づいていった。
「やめっ、お父様逃げて!」
片足で立ち上がり男に向かって魔法を唱えながら肉迫して斬りつけたり魔法を打ったりしたがその全てを男は笑って受け、それでもお父様の方へ歩んだ。
(ダメッこのままじゃ二人とも死んじゃうっ!)
足をなくしてから治癒に時間がかかり血が全く足りていない。今立っているのも限界なのにこのままお父様を守りながら逃げるなんて無理。
剣を一振りしたが、ついに粉々に砕けてしまった。
すかさず、アストから貰った蒼龍を構えた。
「展開!!」
魔力を全て捧げて蒼龍の必殺技を準備する。
靄のかかった細剣が3つに分かれながら開いた。
そして、開いたところには10個の青い玉が一列に並んで浮かぶ。その浮いている球が私の魔力に反応して宙に浮かび私の体の周りに浮遊し始めた。
(アストから貰った当初はまだ力を制御しきれなかったけど…今の私ならやれる!)
「穿て、蒼龍!!」
一つ一つの球体から稲妻が迸り光線が放たれた。その一筋一筋が流れ星のように飛んでいく。全魔力を注いだその光線は的確に男を捉えた。余波で私もお父様も吹き飛んでしまったが、光線が晴れたところには男の姿はもちろん草木も全て消滅していた。
「良かった……これで終わり、だよね」
魔力を失った私はそのまま天を仰いだ。今までよく見てこなかったが天気は曇天だった。でも隙間から覗く太陽が眩しく感じた。
「妙なエンディングだな」
「っ!?」
血が足りないのか疲れているのか、目を閉ざそうとしたその刻、ありえない声が耳に届いた。
声の方へ向くと、男もろとも消滅していた箇所に男が一人だけ立っていたからだ。
「なっ、どうして」
「どうしても何も、あんな攻撃で俺が死ぬわけないだろ」
アストは言っていた。蒼龍の攻撃なら中級神ぐらいなら殺せると。なら目の前にいるのはその中級神よりも上位な存在。しかも私は蒼龍の必殺技で魔力を全部捧げて攻撃をした。殺せないまでも上級神なら手傷を負わせるぐらいできるだろうと思っていた。
それが無傷。
「あれ~?絶望しちゃった?」
「っ、まだ…終わってない!」
私は寿命を引き換えに魔力を少し増やして蒼龍の球体で生み出せる結界をお父様に使い帝国の方面にひたすら飛ばした。きっと帝国にたどり着く前に結界は消えるだろうがそうなっても帝国の人がきっと見つけてくれるだろう。
「これで終わりか……もっとアストどういっしょにいたかったな」
「どうせあの世で会えるんだ。気楽に待ってろよ」
もう目の前に男がいた。どうしようもできない。魔力もないし血を流しすぎたからか体が動いてくれない。
「さっさと殺してやるよ」
「あんたに殺されるぐらいなら!自分で死んだ方がマシ!」
男をにらめ付けて私は手に持った蒼龍を首に当てた。その瞬間、色々な記憶が蘇ってきた。アストと初めて会った時から今日まで色々なことがあった。アストと関われたその全てが幸せな時間で大切な思い出だった。
「アスト。ありがとう」
私に出会ってくれて。
心の中で最後にそう呟いた。
「あーあ。死んじゃったか」
ーーーーーーーー
遅くなりましたが投稿です。
誤字脱字があったら報告してくださると嬉しいです。
「よく粘るな」
「あ、当たり前でしょ!」
アストによく似た化け物と対峙して約6分。お父様を伴いながら帝国と王国の間あたりまで逃げてきた。お父様はなんとかかすり傷程度で済んでいるが、私は片耳を斬られていて止血程度の治癒しかできていない。それに至る所に切り傷ができて血を結構流している。
アストから貰った指輪のアーティファクトは何故か男の剣によって傷ついた箇所には機能していない。それにもし体は再生できても血までは回復しないからこのままだと動けなくなってしまう。
(もってあと10分……これ以上傷が増えたらダメかも……)
そこで一瞬、お父様を置いていけば私だけでも助かるのでは?と一瞬考えてしまったがすぐにそれを拒絶した。
(お父様を置いて逃げる事だけはしたくない!アストならきっと見捨てない。何か策は…何かないの?!)
必死に頭を働かせるが決定打になるような策は出てこない。この間にもアストのような男は攻撃の手を休めることはなく、ついに私は片足を切られてしまい倒れてしまった。その拍子にお父様が吹き飛んでしまったが致命的な事にはならなかった。
ホッと息をしたのも束の間、男はいつのまにか私を見下すような位置におり手に持つ大剣を振り下ろそうとしていた。
私は咄嗟に体に風魔法を当てて攻撃を躱しながら距離を取ったが、男は嘲笑うかのようにお父様の方に近づいていった。
「やめっ、お父様逃げて!」
片足で立ち上がり男に向かって魔法を唱えながら肉迫して斬りつけたり魔法を打ったりしたがその全てを男は笑って受け、それでもお父様の方へ歩んだ。
(ダメッこのままじゃ二人とも死んじゃうっ!)
足をなくしてから治癒に時間がかかり血が全く足りていない。今立っているのも限界なのにこのままお父様を守りながら逃げるなんて無理。
剣を一振りしたが、ついに粉々に砕けてしまった。
すかさず、アストから貰った蒼龍を構えた。
「展開!!」
魔力を全て捧げて蒼龍の必殺技を準備する。
靄のかかった細剣が3つに分かれながら開いた。
そして、開いたところには10個の青い玉が一列に並んで浮かぶ。その浮いている球が私の魔力に反応して宙に浮かび私の体の周りに浮遊し始めた。
(アストから貰った当初はまだ力を制御しきれなかったけど…今の私ならやれる!)
「穿て、蒼龍!!」
一つ一つの球体から稲妻が迸り光線が放たれた。その一筋一筋が流れ星のように飛んでいく。全魔力を注いだその光線は的確に男を捉えた。余波で私もお父様も吹き飛んでしまったが、光線が晴れたところには男の姿はもちろん草木も全て消滅していた。
「良かった……これで終わり、だよね」
魔力を失った私はそのまま天を仰いだ。今までよく見てこなかったが天気は曇天だった。でも隙間から覗く太陽が眩しく感じた。
「妙なエンディングだな」
「っ!?」
血が足りないのか疲れているのか、目を閉ざそうとしたその刻、ありえない声が耳に届いた。
声の方へ向くと、男もろとも消滅していた箇所に男が一人だけ立っていたからだ。
「なっ、どうして」
「どうしても何も、あんな攻撃で俺が死ぬわけないだろ」
アストは言っていた。蒼龍の攻撃なら中級神ぐらいなら殺せると。なら目の前にいるのはその中級神よりも上位な存在。しかも私は蒼龍の必殺技で魔力を全部捧げて攻撃をした。殺せないまでも上級神なら手傷を負わせるぐらいできるだろうと思っていた。
それが無傷。
「あれ~?絶望しちゃった?」
「っ、まだ…終わってない!」
私は寿命を引き換えに魔力を少し増やして蒼龍の球体で生み出せる結界をお父様に使い帝国の方面にひたすら飛ばした。きっと帝国にたどり着く前に結界は消えるだろうがそうなっても帝国の人がきっと見つけてくれるだろう。
「これで終わりか……もっとアストどういっしょにいたかったな」
「どうせあの世で会えるんだ。気楽に待ってろよ」
もう目の前に男がいた。どうしようもできない。魔力もないし血を流しすぎたからか体が動いてくれない。
「さっさと殺してやるよ」
「あんたに殺されるぐらいなら!自分で死んだ方がマシ!」
男をにらめ付けて私は手に持った蒼龍を首に当てた。その瞬間、色々な記憶が蘇ってきた。アストと初めて会った時から今日まで色々なことがあった。アストと関われたその全てが幸せな時間で大切な思い出だった。
「アスト。ありがとう」
私に出会ってくれて。
心の中で最後にそう呟いた。
「あーあ。死んじゃったか」
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