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七章 決戦

36話 死線を越えた先に 5

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邪神を倒しながらさらに奥へ進んでいくと、何処かの神殿の中のような場所に出てきた。
そして、その中央には上と下両方に行くことができる螺旋階段が設置されていた。
上へと繋がる螺旋階段は真っ白にたいして、下へと繋がる螺旋階段は真っ黒で少し不気味さを感じるものだった。

「よく来たね」

場の異様さに立ち止まっていると、上の階段の方から人の声が聞こえてきた。
その声の方に顔を向けると、真っ白のタキシードを着ている若干二十歳の青年が螺旋階段を降りていた。

「最初に遊。次に龍。ここへきて猫と風と氷か。なかなかの戦績だねアラストール君」
「何者だ貴様」
「僕はルーシー。ここで番をしているんだ。本当はもう1人いるんだけど……僕だけで事足りると思ってるんだろうね。ま、実際君は僕に勝てないんだけどね」
「そうか……ジーク、少し下がっててくれ」
「お、おう」

ジークが俺から距離をとったのを確認すると、得物に手を掛けいつでも戦闘態勢に入れるようにした。

「うーん、そんなに身構えてたら僕の攻撃なんて躱せないよ?」

男の言っていることがよくわからなかったが、ゴトッと何かが落ちた音を聞き音の発生源を見た次の瞬間でその言葉の意味を理解した。

俺の右腕は、不思議なほど自然に落ちたのだ。

俺はすぐさま腕を拾い上げその場からステップで距離をとった。

「距離をとっても無駄だよ?ここにきた時点で君は僕の手の平の上にいるんだから」

俺はすぐに腕をくっつけて再生をしたが、その瞬間には左足が床に転がっていた。

「これは……糸か?」

傷口の断面と足が転がる瞬間に見えた反射光で相手の武器が糸であると判断できた。

「ふーん、ま、これぐらい見えないとここまで来れないか。動体視力はいいみたいだね。だけど、君が僕の攻撃を糸だと認識しただけじゃ、僕には勝てないよ?」

意味深のようにそう言って奴が右手を握ると、俺の転がっていた足がサイコロのように細切りと化した。
だが、俺もやられっぱなしじゃない。
再生の能力を発動してすぐに足を直した後、遠くからでも扱える風刃を放った。

「距離をとってから遠距離攻撃。僕と対峙する人は大体そうするよ。でもね……それは何にも意味がないんだよ」

奴はそう言って、つま先をコンコンと地面に鳴らした。
すると、一直線に奴へ向かっていた風刃は空中で時間が止まったように停止し、そのままただの風へと戻ってしまった。

「こっちにばかり意識を割いてちゃ、ダメだよ?」

奴がウインクすると、50メートルは距離があるはずなのに俺の足が両方とも切断されていた。

「……厄介だな」

愚痴をこぼしながら足を一瞬で再生する。
奴の恐ろしいところは、殺気が全く感じられないというところだ。
殺気があれば感覚で避けることができるが、自然と化した奴の糸は不思議なほどになにも感じないのだ。

「なら、糸の意味がない空間にすればいい」

俺はすぐに魔力を練り、イメージしている魔法を詠唱した。

「『灼熱の空間フラムマ・スパティウム』」

俺がそう詠唱すると、辺り一面から蒸気が噴き出て神殿の一部が融解し始めるほどの高温の空間になった。

「なるほど、僕の攻撃手段が糸だと認識した上でその糸を無効化できる熱で対抗しようってわけだね?」
「だとしたらなんだ」

俺がそう聞き返すと、奴は高らかに笑った後不気味に口角を上げた。

「君は一つ勘違いをしているよ。糸が熱に弱いというのは合っている。でも、僕がいつ使言ったかな?最初の方に言ったよね?僕の攻撃手段が糸だと認識してるだけじゃ僕には勝てないってさ」

奴がそう言った瞬間、俺は身体で寒気を感じた。
確かにこいつは俺が糸だと言っても『君が僕の攻撃を糸だと認識した』としか言っていない。
仮に今、あいつが糸じゃないもので俺に攻撃していたのだとするなら、『糸じゃない』という選択肢を一番最初に言っていたということになる。

普段の俺ならこんなミスはしなかっただろう。奴はもしかしたら精神干渉の固有能力があるかもしれない。

「ははっ、考えるのがめんどくさくなるな。だから、結構本気ガチめでいってやるよ」

俺も奴と同じように口角を上げた。この世界に来てで殺りあえそうな奴と始めて出会ったことにわずかながら興奮しているのかもしれない。

ーーーーーーーー
作者より。
久しぶりの更新でーす!
久しぶりすぎるので、文がおかしくなってたらすいません。
最近は書くより読むの方が先行してしまって…申し訳ないです。
なるべく短い期間で更新するつもりですが、できなかったらすいません。
この調子ですが、最後までアストを導けるように頑張っていきますので、どうか長い目で応援の方をよろしくお願いします。
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