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七章 決戦

3話 守るための準備をします

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雫たちが帰ってきたのは、ミリーナがくねくねし始めてから10分ほどであった。

「お兄!!」

雫はドアを開けるなり、視界に入った俺へと急接近し抱きついてきた。

「お帰り雫、橙里たちも、お帰り」
「お帰り。みんな」
「「「「「ただいま!」」」」」

橙里たちは、袋にパンパンに入って重そうな荷物を平然とした顔で両手に持ち、床に置くと中のものをミリーナと仕分けていった。
その隙に俺は、雫にこの5日間のことをこと細かく話した。
だって、言わないと殺すみたいな殺気を含んだ目で見てくるんだからしょうがないことだろ?

「へぇ~、お兄また強くなったんだ」
「まぁな。そういうお前らはどうなんだ?」
「まぁそれなりにだよ。ところで、工国にはいつ行くの?」
「そうだな。いつに行けそうだ?」
「1日もあったら準備できるよ」
「じゃあ出発明日だな。それでいいか?」
「早すぎない?もうちょっと休んでからでも……身体がもたないよ」

雫は俺の身体を心配してくれたが、この世界は今それどころじゃない。俺が寝ている間にだって邪神たちは着々と俺を殺す為の算段を立ててるんだ。油断をしていたら負けるのだってわかってるつもりだ。だから、休むことは絶対にしない。誰にも隙を見せちゃいけないんだ。

「大丈夫だ。明日の朝一番にここを発つ。みんな準備しておいてくれ」
「「「「わかった~」」」」
「……わかった」
「…………うん。わかった」

橙里たちは素直にすぐいい返事をしてくれたが、雫とミリーナは渋々と言った感じだった。特にミリーナは、雫以上に心配そうな顔で俺を見つめてきた。だから俺は雫とミリーナを抱き寄せ、強く抱きしめた。

「俺は大丈夫だ。……必ず生きて帰る。だから、そんなに心配しないでくれ」
「……うん。わかった」
「しょうがないお兄だね。わかったよ。ちゃんと生きて帰ろうね」

こうして二人を丸め込んだ俺は一度その場を離れ、地下室に向かった。

「絶対に、お前たちは死なせないからな」

俺はそう呟き、強く決心しながら、準備に取り掛かった。

「時空支配発動・指定した空間の流れる時間を本来より30倍早くする」

時空支配は固有総合スキルの『支配』に分類されたスキルで、指定した空間の中と外との時間軸をずらすことができるスキルだ。
まだまだ習得したばかりだからか、 3万㎥の空間で30倍が限界だった。

「とりあえず、必要なもんは片っ端から作ってくか」

そして空間の中で3ヶ月。俺は飲まず食わずであるものを完成させた。
飲まず食わせで動けたのは、多分神になったせいだろう。修行しててわかったんだが、神に休憩とかいらないみたいで、ご飯も要らなければ寝ることもないんだとか。でも、気晴らしだったり趣味だったりでそういったことをする神もいるんだとか。

「よし、できた」

俺はできたものを異次元倉庫にしまって、時空支配を解除した。 
地下室を出て、近場にあった時計を見ると俺が地下室にこもってからまだ30分程度しか経っていなかった。

リビングに向かうとミリーナが料理をしていて、あたりにはいい匂いが充満していた。

「あ、アスト。もう少しでできるからもう少し待っててね」
「分かった。あとでみんなに渡したいもんがあるから、晩飯が終わった後そのまんまでいてくれないか?」
「ん?別にいいけど……どしたの?」
「ちょっとな……それで、今日の晩飯は?」
「んっとね~。今日はオークジェネラルのステーキとオークロード汁だよ」
「わかった。じゃあちょっとソファでくつろいでる」
「うん。そうしてて」

なんというか……豚汁の文字に険悪感が湧くな。
豚汁ってのはわかるんだがな、オークロード汁って言われたらちょっと食べる気が失せるのは俺だけだろうか?
ここでちょっとオークロードの見た目について話すが、皮膚は赤黒く、下顎からは鋭利な牙が二本生えていて、体長は2メートルを超える。体表は小さく凹凸があり、緑や青などに変色しているところもあれば寄生虫らしきものがうようよしているところもある。腹が出ており、重そうな大斧を持っている。一見足が遅そうだが、脚力が異常であり、10メートルの距離を身体能力だけで一瞬で移動することができる。
ランクは個体だけでSとなっていて、群れを作った際はSS判定され即時に討伐隊が組まれる。

といったのが、オークロードの大まかな説明だ。体表に寄生虫とか言ったあたりから食う気が失せるだろ?
でもまぁ、美味いっちゃ美味いんだよな。
肉を売ったら白金貨100枚程度にはなるし。二度美味しいのだが、俺はあんまり食べることはない。

まぁ、ミリーナが作ってくれた料理は別で、毎回喜んで食べている。たとえどんなゲテモノ食材だったとしても、ミリーナは美味しくしてくれるからな。

しばらくすると、雫を始めとしてぞろぞろとリビングにやって来た。

「お兄~、さっきまでどこいたの~?」
「ん?、あーちょっとな。明日の準備をしてたんだよ」

急に雫がそんな質問をしてきたため、準備をしていたとだけ返した。

「ふーん、じゃあさ。あとで部屋に行ってもいい?」
「別にいいが……なんでだ?」
「ふふ~ん。それはお楽しみって事で」

そんな焦れったいセリフを吐いたところで、ミリーナから料理ができたと知らされ雫とともに向かい、椅子に座った。

「はい。おまたせ~」
「おお!、美味そうだな!」

目の前には、こんがり焼き目のついた大きめのステーキが湯気を出してジューといい音を奏でていた。
その横には、程よく脂が浮いている豚汁があった。

「美味そうじゃなくて美味しいの!」
「そ、そうだな……うん。ミリーナの料理は必ず美味しいもんな」
「そうだよ」

そう微笑んでミリーナはおれの隣の椅子に座った。
なんか威圧感が神様並みにあったんだが……おれの気のせいか?

「じゃあ、いただきます」
「「「「「「いただきます」」」」」」

そう言って、俺は一番最初にステーキを一口サイズにカットした。
カットすると、カットしたところから肉汁がこれでもかと溢れ出し、中はミディアムレアでほんのり赤く染まっていた。
一口頬張り一度噛むと、中で肉汁が弾け口いっぱいに旨味が充満した。
肉は柔らかく、噛めば噛むほど旨味が出てきて、気づけば半分以上も食べていた。

次におれは豚汁へと手を伸ばした。

ズズーっと啜ると、汁の暖かさが身体に沁みわたり少しずつポカポカとしてきた。

気づけば俺は、豚汁を全て飲み干しステーキも平らげていた。

「ふぅ美味かった。ご馳走様」
「あれアスト。もういいの?」
「ああ。先に風呂貰うな」
「「「「「いいよ~」」」」」
「うん。ゆっくり浸かってきてね」
「ありがとう」

俺は席を外れ、浴場に向かった。

風呂から上がり、俺はリビングに戻ってきた。
そこではみんなが笑顔で会話をしていて邪魔をするのも悪いなと思いながらも声をかけた。

「みんな。ちょっといいか?」
「あー、さっき言ってた奴だね。私はいいよ」
「えーなにそれ。私聞いてないよー」
「悪いな。ちょっと間が悪くて言い出せなかった」
「むぅ。まぁ今は特にすることもないからいいけど。みんなは?」
「僕は大丈夫」
「私も」
「僕も」
「首里も大丈夫」
「だって。それで、何かあるの?」
「ああ、みんなにこれを渡そうと思ってな」

そう言って俺は、机の上にブレスレットと指輪を置いた。

「これなに?」
「これはおれが作った神製具アーティファクトだ」
「あーてぃふぁくと?」
「ああ、今から説明する」

神製具アーティファクト。それは、限られた神のみが製造することができ、神に装備することを許されたものだけが所有し装備することができる秘宝。
あらゆる奇跡を具現化するとされる代物だが、並大抵のものでは身につけてもなんの効果も発揮されない。そればかりか死の呪いを受けるほど。
しかし、神に許されたものであれば、新たな生命を生み出すことや、あらゆる欠損や病を治すことや、不死身の肉体にすることなどとあらゆる奇跡を起こすことができる。

と言うのが、神製具アーティファクトの大まかな説明だ。
次に、俺が渡した神製具アーティファクトだが、詳細は以下の通りだ。

ーーーーーーーーー
腕(指)輪の神製具
至高神・コウキ・ハシマによって作られた神製具アーティファクト
『至高神・コウキ・ハシマの加護』を持っている者のみが所有し、装備することができる。
既にリンク済み。
能力
・ステータスを3倍にする。
・ステータスの大幅な上昇にする不具合を瞬時に解析し、身体に適合させる。
・欠損した箇所から瞬時に肉体を再構築し再生する。
・リンクしているアーティファクトの場所が感覚で分かる。
・即死の攻撃を受けたとしても、3度だけこの腕輪が身代わりになってくれる。
・3度目の身代わりが終わると、強制的にリンク先の至高神・コウキ・ハシマが作った異空間へ転移させられそこでこのアーティファクトは消滅する。
ーーーーーーーーー

その効果を聞き、その場にいた全員が口を開きただ呆然としていた。

ーーーーーーーーー
作者より。
遅くなりましたが、明けましておめでとう御座います!
今年度も精進して参りますので、応援よろしくお願いします!
近況ボードではアンケートを実施しているのでぜひぜひご参加ください。
本編の感想も承っているので、よかったらコメントください。3日以内には返信します。
まだまだ未熟者ですので、アドバイス等いただけたら嬉しいです。
学生の身ですので、更新できない日が度々あるかもしれないです。その時は追って連絡しますので更新を楽しみにされている方には恐縮ですが次回の更新を楽しみにしていてください。
では改めて、今年度もよろしくお願いします!
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