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Scene 13-3
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考えたくなかったが、由依はあの青年と寝たみたいだ。どうせ、好きな男とはセックスできない、そんな考えが俺を安心させていた。普通に付き合っていて、肉体関係が一度もない。そんな関係が永遠に続くはずがない、いつかあの青年とも別れることになる。でも、あの青年が死ななかったら?、何事もなかったように生き続けたら?、俺は一体全体、なんのために犯罪にまで手を染めて、彼女のそばにいようとしたんだ?。男女の中で、肉体的な結びつきより精神的な結びつきの方が優れてるという考えを否定したあの男の言葉を、俺は聞こうとしなかった。そうだよ、所詮、恋愛なんて性欲を美化した表現にすぎないよ。俺は、ずっと彼女の仕事をそばで支えていたら、いつか俺に振り向いて、自分の体を差し出してくれるとでも思っていたのか?。
そんなくだらないことを考えながら、自分の住んでいるマンションに到着する。玄関を開けると、カレンの靴が、俺の普段ばきのスニーカーに寄り添うように綺麗に並べられている。キッチンに行き、鍋の蓋を開けてみると、また何か新しい料理を覚えたのか、見たこともないおしゃれな料理のいい香りが空腹の俺の胃を刺激した。部屋は真っ暗でよく見えないが、きっと綺麗に片付けられているのだろう。寝室に行くと、カレンが疲れて寝息を立てて俺のベッドで寝ている。物音で目が覚めたのか、俺に、おかえり、とカレンは言った。俺は何を思ったのか、そんな気持ちよさそうにしているカレンの、パンツを強引に脱がし、服の上から胸を揉みしだきながら、カレンのマンコを思い切り舐めてやった。カレンは急な俺の行動に、不快感を表し、手で俺の頭を自分の股からどかそうとしてくるが、俺はそんなことなんて気にぜず、彼女の服を全部脱がした。初めは嫌がっていたが、くるぶしから順番に顔までキスしてやると、彼女も本気になってきた。カレンは、俺の顔をよく見ようとしているのか、サイドテーブルのランプの照明のスイッチに手を伸ばす。俺はそんな彼女の行動に気が付き、手首を掴むと、どうしたの?、と訊いてくるので、明かりをつけるな、と命令して、ズボンを脱いで、脚本家とセックスしていた由依の姿を頭の中に浮かべながら真っ暗な部屋の中で思い切りカレンを犯した。俺は目の前に由依の幻影が現れることを祈る。由依の白い肌は朧げながら輪郭を形成したと思うと、霧が晴れるように由依の姿は消えていき、代わりにカレンの姿が克明に闇の中に現れる。俺は抱いている女がカレンであることを否定し、由依の姿が頭の中に思い浮かぶように、目を瞑って、彼女を犯す。目を瞑ると、カレンの五月蝿い喘ぎ声で不快な気分になる。由依はそんな汚い声をしていない。黙らせるためにキスしてやる。唇の感触が全然違う。強く抱きしめると、白人特有の骨格の良さが俺の腕に伝わる。そして、何より肉臭い。この女は由依じゃない。声も、匂いも、息遣いも、体温も、体つきも何もかもが違う、俺はこんな女と一緒にいるために人を殺したんじゃない。
撮影初日、由依の演技は、以前の魅力を取り戻していた。取り戻すと言うより、以前の観客の心を鷲掴みにするような迫力に加えて、半年間で培った美しさが加わった由依の演技は、今まで見たことがないほど素晴らしかった。初日の撮影を見ただけで、スタッフや監督たちは、この作品が確実に日本映画史に残ると確信したに違いない。作品を完璧なものにするために、他の俳優陣もやる気が湧いているようだった。初日の撮影を終えた次の日、俺はなぜか由依の買い物に付き合わされた。
「明日一ヶ月記念なんだ」
「復縁してから?」
「まあ、復縁してからというかねー」
「ヤったんだろ?」
「そんなストレートに訊く?。私、女の子だよ」
「セックスした後に台本届けさせた上に、キメセクしたいとか言ってた女が、よく言うよ」
「あー、確かに。それよりさ、プレゼント何が良いと思う?」
「なんでも良いだろ。玉城由依のプレゼントなんて、何だって喜ぶだろ、男なら。そんなことより、大丈夫なのかよ?、あの青年。ヤったら死ぬんだろ?」
「なんかね、今回は大丈夫な気がするの。それよりプレゼント。どうしようかな?リュウたちみたいにネックレスにしようかな?」
「ネックレスなんてやめとけよ。私はこの人に首ったけって感じで、正直男からしたら重いぜ。それに、あの青年がネックレスなんてするタイプかよ?」
「確かに、ネックレスなんてするタイプじゃないね。それより、重いって酷くない?」
「消耗品で良いんだよ。別れても後腐れないし」
「別れないから。何ならね、プロポーズされちゃうかも」
「プロポーズ?、そんな訳ないだろ?どうしてそう思ったんだよ」
「なんか、電話越しで、明日話したいことがあるんだって。絶対プロポーズでしょ」
「早すぎるだろ」
「早いも何も、こう言うのはタイミングでしょ。大丈夫よ、私お金ならたくさん持ってるし」
「そういう問題じゃなくて。それに、由依の稼ぎに頼った結婚生活なんて、あの青年は嫌がるんじゃないの?。なんか常識人っぽいし」
「大丈夫よ。彼は売れっ子小説家になるの。私と約束したから」
「へーへーそうですか」
「信じてないでしょ。まあ良いけど。そうだ、明日の深夜から撮影だけど、明日は、夜まで喫茶店にいると思うから、夜の八時ごろになったら迎えに来て」
「へいへい、わかりましたよ」
今晩、いつもの丘の上で、由依は青年と会うらしい。由依は、今回は大丈夫だ、と言った。この口ぶりの時はほとんど確信に近い。もう彼女を諦めなければならない。由依は俺の考えなんて知る由もなく、銀座で俺と楽しそうに青年へのプレゼントを選んでいる。俺は結局彼女に何も与えることができなかった。人は自分を変えてくれた人を好きになる。青年は彼女を変えてしまった。由依の瞳の先にはあの青年しか存在していないみたいだ。幸せそうに俺が欲しいものを訊いてくるが、知りたいのは、俺を通してあの青年が何をもらったら喜ぶかなのだろう。初めて喫茶店に行った時と同じだ。俺の後ろの席で夢中で執筆している青年の姿しか見えていない。透明人間になりたい。最初から透明ならキッパリ諦められただろうに。彼女は今まで会った中で、一番幸せそうに見えた。しかしながら、そんな由依の期待は裏切られ、青年は約束の場所にやって来なかった。その日、青年は住んでいるアパートの火事に巻き込まれて、焼死した。
そんなくだらないことを考えながら、自分の住んでいるマンションに到着する。玄関を開けると、カレンの靴が、俺の普段ばきのスニーカーに寄り添うように綺麗に並べられている。キッチンに行き、鍋の蓋を開けてみると、また何か新しい料理を覚えたのか、見たこともないおしゃれな料理のいい香りが空腹の俺の胃を刺激した。部屋は真っ暗でよく見えないが、きっと綺麗に片付けられているのだろう。寝室に行くと、カレンが疲れて寝息を立てて俺のベッドで寝ている。物音で目が覚めたのか、俺に、おかえり、とカレンは言った。俺は何を思ったのか、そんな気持ちよさそうにしているカレンの、パンツを強引に脱がし、服の上から胸を揉みしだきながら、カレンのマンコを思い切り舐めてやった。カレンは急な俺の行動に、不快感を表し、手で俺の頭を自分の股からどかそうとしてくるが、俺はそんなことなんて気にぜず、彼女の服を全部脱がした。初めは嫌がっていたが、くるぶしから順番に顔までキスしてやると、彼女も本気になってきた。カレンは、俺の顔をよく見ようとしているのか、サイドテーブルのランプの照明のスイッチに手を伸ばす。俺はそんな彼女の行動に気が付き、手首を掴むと、どうしたの?、と訊いてくるので、明かりをつけるな、と命令して、ズボンを脱いで、脚本家とセックスしていた由依の姿を頭の中に浮かべながら真っ暗な部屋の中で思い切りカレンを犯した。俺は目の前に由依の幻影が現れることを祈る。由依の白い肌は朧げながら輪郭を形成したと思うと、霧が晴れるように由依の姿は消えていき、代わりにカレンの姿が克明に闇の中に現れる。俺は抱いている女がカレンであることを否定し、由依の姿が頭の中に思い浮かぶように、目を瞑って、彼女を犯す。目を瞑ると、カレンの五月蝿い喘ぎ声で不快な気分になる。由依はそんな汚い声をしていない。黙らせるためにキスしてやる。唇の感触が全然違う。強く抱きしめると、白人特有の骨格の良さが俺の腕に伝わる。そして、何より肉臭い。この女は由依じゃない。声も、匂いも、息遣いも、体温も、体つきも何もかもが違う、俺はこんな女と一緒にいるために人を殺したんじゃない。
撮影初日、由依の演技は、以前の魅力を取り戻していた。取り戻すと言うより、以前の観客の心を鷲掴みにするような迫力に加えて、半年間で培った美しさが加わった由依の演技は、今まで見たことがないほど素晴らしかった。初日の撮影を見ただけで、スタッフや監督たちは、この作品が確実に日本映画史に残ると確信したに違いない。作品を完璧なものにするために、他の俳優陣もやる気が湧いているようだった。初日の撮影を終えた次の日、俺はなぜか由依の買い物に付き合わされた。
「明日一ヶ月記念なんだ」
「復縁してから?」
「まあ、復縁してからというかねー」
「ヤったんだろ?」
「そんなストレートに訊く?。私、女の子だよ」
「セックスした後に台本届けさせた上に、キメセクしたいとか言ってた女が、よく言うよ」
「あー、確かに。それよりさ、プレゼント何が良いと思う?」
「なんでも良いだろ。玉城由依のプレゼントなんて、何だって喜ぶだろ、男なら。そんなことより、大丈夫なのかよ?、あの青年。ヤったら死ぬんだろ?」
「なんかね、今回は大丈夫な気がするの。それよりプレゼント。どうしようかな?リュウたちみたいにネックレスにしようかな?」
「ネックレスなんてやめとけよ。私はこの人に首ったけって感じで、正直男からしたら重いぜ。それに、あの青年がネックレスなんてするタイプかよ?」
「確かに、ネックレスなんてするタイプじゃないね。それより、重いって酷くない?」
「消耗品で良いんだよ。別れても後腐れないし」
「別れないから。何ならね、プロポーズされちゃうかも」
「プロポーズ?、そんな訳ないだろ?どうしてそう思ったんだよ」
「なんか、電話越しで、明日話したいことがあるんだって。絶対プロポーズでしょ」
「早すぎるだろ」
「早いも何も、こう言うのはタイミングでしょ。大丈夫よ、私お金ならたくさん持ってるし」
「そういう問題じゃなくて。それに、由依の稼ぎに頼った結婚生活なんて、あの青年は嫌がるんじゃないの?。なんか常識人っぽいし」
「大丈夫よ。彼は売れっ子小説家になるの。私と約束したから」
「へーへーそうですか」
「信じてないでしょ。まあ良いけど。そうだ、明日の深夜から撮影だけど、明日は、夜まで喫茶店にいると思うから、夜の八時ごろになったら迎えに来て」
「へいへい、わかりましたよ」
今晩、いつもの丘の上で、由依は青年と会うらしい。由依は、今回は大丈夫だ、と言った。この口ぶりの時はほとんど確信に近い。もう彼女を諦めなければならない。由依は俺の考えなんて知る由もなく、銀座で俺と楽しそうに青年へのプレゼントを選んでいる。俺は結局彼女に何も与えることができなかった。人は自分を変えてくれた人を好きになる。青年は彼女を変えてしまった。由依の瞳の先にはあの青年しか存在していないみたいだ。幸せそうに俺が欲しいものを訊いてくるが、知りたいのは、俺を通してあの青年が何をもらったら喜ぶかなのだろう。初めて喫茶店に行った時と同じだ。俺の後ろの席で夢中で執筆している青年の姿しか見えていない。透明人間になりたい。最初から透明ならキッパリ諦められただろうに。彼女は今まで会った中で、一番幸せそうに見えた。しかしながら、そんな由依の期待は裏切られ、青年は約束の場所にやって来なかった。その日、青年は住んでいるアパートの火事に巻き込まれて、焼死した。
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