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11.密漁船にかける容赦はありません。
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「……オスカル。あれを見てくれ」
ふと、ネロさんがオスカルさんの肩を叩いた。ネロさんが差し出した望遠鏡を受け取ったオスカルさんは、ネロさんが指さした方向に望遠鏡を向けて覗き込むと、険しい顔になる。
異変を感じ取ったのか、近くにいたディエゴさんも先程までの飄々とした雰囲気が消え、真剣な表情を浮かべた。
「ギルドから発行された紋章入りの旗がない。密漁船だな」
漁をする際、自分が使う船にはギルドに登録してあることが分かるように、ギルドから貰う旗を掲げる必要がある。
その旗を掲げていないということは、ギルドに登録していない人間が、許可なく漁をしている可能性があるということだ。
「どうする?オレ、様子見てこようか?」
ディエゴさんがそう言うと、オスカルさんは首を横に振った。
「……いや、下手に近づけば逃げられる。それに、敵の素性が分からない以上、お前だけで行くのは危険だ」
「だけど、見逃す訳にもいかないでしょう。密漁は立派な犯罪だし」
「問題ない。既に手は売ってある。……ちょうど戻ってきたな」
視線を上空へと移したオスカルさんにつられて、私も上空へ視線を向ける。彼の視線の先にはこちらに飛んでくる大きな鳥の影があった。
ピュー
ふとオスカルさんが上空の鳥に向かって指笛を吹いた。すると上空にいた鳥は、大きな翼を広げてこちらに下降してくる。スッと綺麗な曲線を描きながら、オスカルさんの肩に着地する鳥。イヌワシのような大きなそれは、口をパカリと開けると脳に響く低音で鳴いた。
「ジュンビ デキタ。イマ ムカッテル」
「と、鳥がしゃべった!?」
一部始終を眺めていたレナートさんが驚きの声をあげる。私も声こそ出さなかったが、衝撃のあまり空いた口が塞がらなかった。
「ご苦労だった」
オスカルさんは鳥の頭を優しく撫でると、懐から取り出した餌らしきものを与えた。
「念のため、海軍に出動の要請をかけていたんだ。そう遅くないうちにあいつらがこっちに来てくれるはずだ」
「何もなければ職権濫用だと怒られるところだが、今回は功を奏したな」
ふっと口角を上げてそう述べるオスカルさんに、ネロさんは全く……と呆れたような、でもなんか関心も含まれているような視線を向けた。
「とりあえず、逃走できないようにしておくか」
「だな。準備してくる」
オスカルさんの言葉に賛同するように頷いたネロさんは、甲板下の倉庫へと向かっていった。
「あの、一体どうやって逃げないようにするんですか?」
私がそう尋ねるとオスカルさんは、船の縁に移動しながら答えた。
「この船はもともと軍船だった。つまり、戦闘用の船だった」
……軍船、戦闘用。……もしや
「だから、こういう機能も備わっているわけだ」
私は恐る恐るオスカルさんの近くまでいくと、オスカルさんの視線の先にあるものを見るために手すりから身を乗り出す。
そして、視界に入ったものに背筋を凍らせた。
先ほどまでは何もなかった船の側面に、なぜか大砲が備わっている。恐らく、普段は開閉式の扉で隠されていて、扉が開くと大砲が出てくる仕組みなのだろう。
「あの船の機動力は帆だ。マストを破壊し、風を受け止められなくすれば動けなくなる」
ひえっ!想像以上にバイオレンスな策だった!確かにそのとおりだけど、大砲って。……この世界ってそれが常識なの!?普通の漁師が、密漁船に大砲ぶっぱなすとかしちゃう世界なの……!?
ちなみに一緒に船に乗っているレナートさんも、一部始終を聞いて青い顔で震えている。この状況に戦慄しているのが私だけじゃないことが救いだった。
「オスカル、準備できたって」
いつの間にかネロさんの元に確認に行っていたディエゴさんが、倉庫に繋がる扉から顔を出す。それに頷いたオスカルさんは何やら周囲を見渡し確認を済ませると、大声で言った。
「放て!」
ドンッ
物凄い発砲音が鼓膜を揺らす。あまりの衝撃に私は思わず目を瞑り耳を抑えた。
ドカーン
明らかに何かが破壊された音が周囲に響く。恐る恐る目を開けると、見事なまでに相手の船のマストは倒れていた。……というか、下手すれば船が半壊する大砲でマストだけ壊せるコントロール力ってえげつない気がする。
きっと向こうはいきなりの攻撃に慌てているのだろう。かなり距離はあるが騒がしい声が聞こえてくる。そんな密漁船に対し、オスカルさんはしたり顔で見ていた。
「さて、海軍も来たことだし後は奴らに任せて俺たちは帰るぞ。ヴィシュートが腐ると困るしな」
密漁船のさらに向こうに何隻かの船が物凄い速さでやって来るのが見えた。どうやらあれが海軍の船らしい。遠目からでもかなり立派な船であることが分かる。この船の比じゃない。
こうして私たちはギルドに戻り、今日の仕事を終えた。自分たちが食べる分のヴィシュートを捕獲できなかったのは残念だったが、まともにお昼が食べられなかった詫びにとオスカルさん達が食堂でご飯を奢ってくれた。とれたての魚のアラがふんだんに使われたパスタは非常に美味であった。ただし魚が用意できなかったために夕飯が海藻だらけだったのは非常に残念だった。
ふと、ネロさんがオスカルさんの肩を叩いた。ネロさんが差し出した望遠鏡を受け取ったオスカルさんは、ネロさんが指さした方向に望遠鏡を向けて覗き込むと、険しい顔になる。
異変を感じ取ったのか、近くにいたディエゴさんも先程までの飄々とした雰囲気が消え、真剣な表情を浮かべた。
「ギルドから発行された紋章入りの旗がない。密漁船だな」
漁をする際、自分が使う船にはギルドに登録してあることが分かるように、ギルドから貰う旗を掲げる必要がある。
その旗を掲げていないということは、ギルドに登録していない人間が、許可なく漁をしている可能性があるということだ。
「どうする?オレ、様子見てこようか?」
ディエゴさんがそう言うと、オスカルさんは首を横に振った。
「……いや、下手に近づけば逃げられる。それに、敵の素性が分からない以上、お前だけで行くのは危険だ」
「だけど、見逃す訳にもいかないでしょう。密漁は立派な犯罪だし」
「問題ない。既に手は売ってある。……ちょうど戻ってきたな」
視線を上空へと移したオスカルさんにつられて、私も上空へ視線を向ける。彼の視線の先にはこちらに飛んでくる大きな鳥の影があった。
ピュー
ふとオスカルさんが上空の鳥に向かって指笛を吹いた。すると上空にいた鳥は、大きな翼を広げてこちらに下降してくる。スッと綺麗な曲線を描きながら、オスカルさんの肩に着地する鳥。イヌワシのような大きなそれは、口をパカリと開けると脳に響く低音で鳴いた。
「ジュンビ デキタ。イマ ムカッテル」
「と、鳥がしゃべった!?」
一部始終を眺めていたレナートさんが驚きの声をあげる。私も声こそ出さなかったが、衝撃のあまり空いた口が塞がらなかった。
「ご苦労だった」
オスカルさんは鳥の頭を優しく撫でると、懐から取り出した餌らしきものを与えた。
「念のため、海軍に出動の要請をかけていたんだ。そう遅くないうちにあいつらがこっちに来てくれるはずだ」
「何もなければ職権濫用だと怒られるところだが、今回は功を奏したな」
ふっと口角を上げてそう述べるオスカルさんに、ネロさんは全く……と呆れたような、でもなんか関心も含まれているような視線を向けた。
「とりあえず、逃走できないようにしておくか」
「だな。準備してくる」
オスカルさんの言葉に賛同するように頷いたネロさんは、甲板下の倉庫へと向かっていった。
「あの、一体どうやって逃げないようにするんですか?」
私がそう尋ねるとオスカルさんは、船の縁に移動しながら答えた。
「この船はもともと軍船だった。つまり、戦闘用の船だった」
……軍船、戦闘用。……もしや
「だから、こういう機能も備わっているわけだ」
私は恐る恐るオスカルさんの近くまでいくと、オスカルさんの視線の先にあるものを見るために手すりから身を乗り出す。
そして、視界に入ったものに背筋を凍らせた。
先ほどまでは何もなかった船の側面に、なぜか大砲が備わっている。恐らく、普段は開閉式の扉で隠されていて、扉が開くと大砲が出てくる仕組みなのだろう。
「あの船の機動力は帆だ。マストを破壊し、風を受け止められなくすれば動けなくなる」
ひえっ!想像以上にバイオレンスな策だった!確かにそのとおりだけど、大砲って。……この世界ってそれが常識なの!?普通の漁師が、密漁船に大砲ぶっぱなすとかしちゃう世界なの……!?
ちなみに一緒に船に乗っているレナートさんも、一部始終を聞いて青い顔で震えている。この状況に戦慄しているのが私だけじゃないことが救いだった。
「オスカル、準備できたって」
いつの間にかネロさんの元に確認に行っていたディエゴさんが、倉庫に繋がる扉から顔を出す。それに頷いたオスカルさんは何やら周囲を見渡し確認を済ませると、大声で言った。
「放て!」
ドンッ
物凄い発砲音が鼓膜を揺らす。あまりの衝撃に私は思わず目を瞑り耳を抑えた。
ドカーン
明らかに何かが破壊された音が周囲に響く。恐る恐る目を開けると、見事なまでに相手の船のマストは倒れていた。……というか、下手すれば船が半壊する大砲でマストだけ壊せるコントロール力ってえげつない気がする。
きっと向こうはいきなりの攻撃に慌てているのだろう。かなり距離はあるが騒がしい声が聞こえてくる。そんな密漁船に対し、オスカルさんはしたり顔で見ていた。
「さて、海軍も来たことだし後は奴らに任せて俺たちは帰るぞ。ヴィシュートが腐ると困るしな」
密漁船のさらに向こうに何隻かの船が物凄い速さでやって来るのが見えた。どうやらあれが海軍の船らしい。遠目からでもかなり立派な船であることが分かる。この船の比じゃない。
こうして私たちはギルドに戻り、今日の仕事を終えた。自分たちが食べる分のヴィシュートを捕獲できなかったのは残念だったが、まともにお昼が食べられなかった詫びにとオスカルさん達が食堂でご飯を奢ってくれた。とれたての魚のアラがふんだんに使われたパスタは非常に美味であった。ただし魚が用意できなかったために夕飯が海藻だらけだったのは非常に残念だった。
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