1 / 1
未だ晴れぬ思い
しおりを挟む
パシッ
私の頬に一筋の痛みが走る
ハインツァ学園の中庭の昼下がり
私の目の前にいるサモエンド侯爵のご令嬢
ミュリエル様の扇子からもたらされたものだった
「……っあなたが悪いのよ!」
そうミュリエル様が叫んだ時
ミュリエル様の婚約者ーーこの国の王太子ケニス・フォン・ソルモエス殿下と
殿下の側近候補と噂される方々が近づいていらっしゃいました
「ミュリエル……まさかあの噂は本当だったのか」
「わっ、私がこの者に何をしても構わないでしょう?」
ミュリエル様が意を決したかの様におっしゃいましたが
「違うんです!」
お二方の話を遮る事は不敬なのにもかかわらず私は叫んだ
私、エルマは平民ですが、領主様に才能を見出されて
ここハインツァ学園に特待生として入学することができました
領主様の期待に応えれる様研鑽に励もうと
奮起したのはいいのですが
私が平民であるのが気に入らない方々がいらっしゃるそうで
物がなくなったり、領主様に頂いた大事なドレスを破られて
精神的に辛く苦しい毎日を送っていました
しかしそんな毎日をミュリエル様が変えてしまわれたのです
ミュリエル様は「いじめ」と称されていましたが
私の苦手分野を即座に見抜き解くヒントを下さったり
破れたドレスは確かにミュリエル様に奪われましたが
一週間後破れた所がわからなくなる程直されて返して頂きました
それだけでなく、「昼間の呼び出し」とおっしゃって
私には馴染みのない貴族のマナーを教えて頂きました
おかげで先生方から上出来とお褒めの言葉を頂け
クラスの方々とも仲良くなり嫌がらせも無くなりました
噂は上辺だけ見た方のただの妄想
本当は強く優しく素晴らしい淑女であるミュリエル様に
感謝の念しかございません
私は出回っている噂の真相と感謝の言葉を言い
ミュリエル様に教えて頂いたカーテシーをした
なのになぜミュリエル様は青ざめているのでしょう?
「エルマ嬢、先週君が階段から突き落とされた犯人はミュリエルだと
噂が出始めているんだけど本当かい?」
「……え、ええそうよ、あれも私がっ」
「違います!ミュリエル様は階段から落ちた私を
介抱していただけに過ぎません。犯人は別にいます。
それと頬のキズですが、涙を浮かべ扇子を振り上げたまま
固まっていらしたミュリエル様に近づいて驚かせてしまいまして
そのとき偶々扇子が当たっただけです」
「成る程。では君は犯人を知っているんだね?」
「………はい。ジェニス・ハンプトン様です
落ちる時この目でしっかり見ました」
ミュリエル様の名誉の為、私は意を決して侯爵令嬢名を口にした
「違うの、違うのよ、わ、私が、私が全て悪いの
噂は本当なのよ!だからケニス様の婚約者にはふさ……」
ミュリエル様が言い終わらない内に殿下に向かって倒れられました
一瞬、本当に一瞬。殿下がミュリエル様の顔に何かかけたような…
「おっと、どうやらミュリエルは体調が悪いみたいだ
仕方ない、今日はもう欠席にして送っていこう」
そう言って殿下はミュリエル様を横抱きにしました
きっと青ざめていたのは具合が悪かったからなのですね
「突き落とした犯人については学園に報告しておくから
すぐに解決するから、身の危険の心配はしなくていい
ミュリエルの不名誉な噂もこれでなくなるだろう
エルマ嬢本当の事を言ってくれてありがとう
ミュリエルを送るからこれで失礼するよ」
そう殿下がおっしゃった笑顔を見て私はなぜあの時
本当の事を正直に言ったはずなのに
間違った事をしてしまった感覚に陥ったのだろう
あれから10年
私は学園を首席で卒業し、領主様の下で働いています
殿下は王位を継ぎ国王として
ミュリエル様は王妃としてこの国を導いていらっしゃいます
ですが、領主様が言うには
いつもパーティーに王妃様が参加されてないと言うのです
確かに体調不良で倒れられたあの日から
ミュリエル様をお見かけしませんでした
学園が平等と謳っていますが平民である私が
王族である殿下に話しかける非常識な事ができるはずもなく
ミュリエル様について聞くことはできませんでした
そして、あの日のわだかまりを
未だ解消されないままでいるのです
私の頬に一筋の痛みが走る
ハインツァ学園の中庭の昼下がり
私の目の前にいるサモエンド侯爵のご令嬢
ミュリエル様の扇子からもたらされたものだった
「……っあなたが悪いのよ!」
そうミュリエル様が叫んだ時
ミュリエル様の婚約者ーーこの国の王太子ケニス・フォン・ソルモエス殿下と
殿下の側近候補と噂される方々が近づいていらっしゃいました
「ミュリエル……まさかあの噂は本当だったのか」
「わっ、私がこの者に何をしても構わないでしょう?」
ミュリエル様が意を決したかの様におっしゃいましたが
「違うんです!」
お二方の話を遮る事は不敬なのにもかかわらず私は叫んだ
私、エルマは平民ですが、領主様に才能を見出されて
ここハインツァ学園に特待生として入学することができました
領主様の期待に応えれる様研鑽に励もうと
奮起したのはいいのですが
私が平民であるのが気に入らない方々がいらっしゃるそうで
物がなくなったり、領主様に頂いた大事なドレスを破られて
精神的に辛く苦しい毎日を送っていました
しかしそんな毎日をミュリエル様が変えてしまわれたのです
ミュリエル様は「いじめ」と称されていましたが
私の苦手分野を即座に見抜き解くヒントを下さったり
破れたドレスは確かにミュリエル様に奪われましたが
一週間後破れた所がわからなくなる程直されて返して頂きました
それだけでなく、「昼間の呼び出し」とおっしゃって
私には馴染みのない貴族のマナーを教えて頂きました
おかげで先生方から上出来とお褒めの言葉を頂け
クラスの方々とも仲良くなり嫌がらせも無くなりました
噂は上辺だけ見た方のただの妄想
本当は強く優しく素晴らしい淑女であるミュリエル様に
感謝の念しかございません
私は出回っている噂の真相と感謝の言葉を言い
ミュリエル様に教えて頂いたカーテシーをした
なのになぜミュリエル様は青ざめているのでしょう?
「エルマ嬢、先週君が階段から突き落とされた犯人はミュリエルだと
噂が出始めているんだけど本当かい?」
「……え、ええそうよ、あれも私がっ」
「違います!ミュリエル様は階段から落ちた私を
介抱していただけに過ぎません。犯人は別にいます。
それと頬のキズですが、涙を浮かべ扇子を振り上げたまま
固まっていらしたミュリエル様に近づいて驚かせてしまいまして
そのとき偶々扇子が当たっただけです」
「成る程。では君は犯人を知っているんだね?」
「………はい。ジェニス・ハンプトン様です
落ちる時この目でしっかり見ました」
ミュリエル様の名誉の為、私は意を決して侯爵令嬢名を口にした
「違うの、違うのよ、わ、私が、私が全て悪いの
噂は本当なのよ!だからケニス様の婚約者にはふさ……」
ミュリエル様が言い終わらない内に殿下に向かって倒れられました
一瞬、本当に一瞬。殿下がミュリエル様の顔に何かかけたような…
「おっと、どうやらミュリエルは体調が悪いみたいだ
仕方ない、今日はもう欠席にして送っていこう」
そう言って殿下はミュリエル様を横抱きにしました
きっと青ざめていたのは具合が悪かったからなのですね
「突き落とした犯人については学園に報告しておくから
すぐに解決するから、身の危険の心配はしなくていい
ミュリエルの不名誉な噂もこれでなくなるだろう
エルマ嬢本当の事を言ってくれてありがとう
ミュリエルを送るからこれで失礼するよ」
そう殿下がおっしゃった笑顔を見て私はなぜあの時
本当の事を正直に言ったはずなのに
間違った事をしてしまった感覚に陥ったのだろう
あれから10年
私は学園を首席で卒業し、領主様の下で働いています
殿下は王位を継ぎ国王として
ミュリエル様は王妃としてこの国を導いていらっしゃいます
ですが、領主様が言うには
いつもパーティーに王妃様が参加されてないと言うのです
確かに体調不良で倒れられたあの日から
ミュリエル様をお見かけしませんでした
学園が平等と謳っていますが平民である私が
王族である殿下に話しかける非常識な事ができるはずもなく
ミュリエル様について聞くことはできませんでした
そして、あの日のわだかまりを
未だ解消されないままでいるのです
0
お気に入りに追加
5
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

私、今から婚約破棄されるらしいですよ!お茶会で噂の的です。
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
初夏、麗かな王宮でのガーデンパーティー。その場では、とある令嬢の婚約破棄されるであろう話しが盛り上がっていた。ユリア・シャトレーゼ伯爵令嬢は普段引き篭もりであるが、父親により強制的にガーデンパーティーに参加させられていた。そんな最中の噂話し。え?婚約破棄される令嬢は私ですか?よく分からないので、とりあえず盗み聞きしておこうかしら?私、引き篭もり令嬢と言われているけど、意思は強い方なのよ?

好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み

転生した乙女ゲームの悪役令嬢の様子がおかしい!
公爵 麗子
恋愛
転生して、見事にヒロインになることができたミア。
平民でありながら魔力適性を持っていて、途中で貴族に引き取られ令嬢として生きてきた。
悪役令嬢のエリザベート様に目をつけられないように、学園入学まで鍛えてきましたの。
実際に学園に入学して見ると、悪役令嬢の様子がおかしい…?

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる