地獄門前のお宿で女将修行はじめます

吉沢 月見

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戻ってきました

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 次の日は金縛りの副作用で筋肉痛だった。久々のこの感覚、懐かしいけどやはり嫌い。
 その体のまま神社の掃除をした。
 澪さんは今里ちゃんの歩き方がなってないと叱ったけれど、ヒトキさんは静かに歩く。畳も目に沿って掃いてから乾拭き。そういうことを習わなくても身につけている人もいる。
 地獄のほうが体に合っていると話したら家族は悲しむのだろうか。母のごはんは好きだし、祈祷する父を見ているのも好き。姉と並んでお守りを並べるのも嫌いじゃない。
 祖父のことも近所で探してみたけれど、みんな母と同じ反応。
 毎年、筍を送ってくれる親戚がいて、母と米のとぎ汁であく抜きをしてから皮を剥く。筍ご飯と煮物に天ぷら。
「おいしい」
「そうでしょう? 家族で食べるとおいしいわよね」
 いや、地獄でもおいしかったけどね。料理長は私がこっちに来る前日の夜、私の好物の煮魚と豆腐の卵とじを作ってくれた。地獄なのに中華風。うどんでパスタもどきを作ってくれたこともあったな。
 私が戻っても祖父とは連絡が取れずに困っていた。
 手紙をくれた姉も探してはいるようだが、もうなしのつぶて。

 半月ほどが経ち、満月になった。新月で力が弱くなるなら満月は逆なのだろうか。私の中の血も?
 一心さんは大丈夫だろうか。私がいなくてもきっと誰かが寄り添ってくれているはず。そういえば、モテるのだ。
「半分人間で珍しいからな」
 と本人は言っていたけれど、たぶん優しいからだ。
 私は私の力にまだ怯えている。強くなったかもしれないが、まだコントロールできるようなものじゃない。気分屋の自覚はある。しかし、それと霊力は別問題。すこぶる体調がいい日だけはわかる。
 創ちゃんの家に足を運んだらお団子屋さんはしまっていた。お花屋さんは開いていたけれど入れないよ。
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