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 翌朝、創ちゃんのほうから会いに来てくれた。

「清しん亭の女将さんが瑠莉ちゃんのマッサージを絶賛していたよ」
 創ちゃんはフットマッサージを選んでくれた。
 温泉のお湯を桶で蕪木さんが持って来てくれる。
「まず足湯を10分。ぬるくなったら言ってください」
「はい」
 創ちゃんはこの類の施術を受けたことがないらしい。
「最初で最後が私でいいの?」
「いいよ」
 若い男の人は血流が凝り固まったりしないのかもしれない。ふくらはぎが大きいな。骨も太い。
「創ちゃん、もうお葬式は済んだの?」
「ああ。家族葬で」
「そうなんだ。お姉ちゃんは?」
「来なかったよ。まあ、死に方が死に方だし」
「そうなんだ」
 死んだから創ちゃんも真実を知っているが、向こうではタクシーの事故ということになっているのだろう。
「真緒さんにもう会えないんだな」
 創ちゃんが呟く。
「お姉ちゃんに伝えたいことある?」
「あるけど、言葉にしたらひどいこと言っちゃいそう」
「二人はうまくいくと思ったのに」
「無理だよ。真緒さんはモテるし」
 創ちゃんの脚を引き上げて、タオルで拭く。
「じゃあ横になってください。仰向けで」
「はい」
 創ちゃんの脚なんて久々に見る。毛が濃くて、すっかり男の人の足。
「創ちゃんち、花屋も団子屋もどうするの?」
 創ちゃんは一人っ子だ。両親はお花屋さんを、おばあちゃんがお団子屋さんを営んでいる。
「どうするんだろ? まさか、おばあちゃんより先に死ぬとは。ああ、だからこっちに来たのかもな」
 創ちゃんのおばあちゃんは小さくて、いつも髪をまとめている優しい人だった。お花屋さんと並んでいるお店でいつもにこやか。頼まれれば大福も作ってくれた。私の成人の内祝いも紅白餅をお願いした。甘すぎない餡で、私も好物。
「命日にはおばあちゃんの大福をお墓に持って行くわ」
 創ちゃんの息が一定。眠ってしまったのだろうか。
 足の親指の付け根は痛がる人も多いのに、すやすや。

 知り合いだから私も気を抜いていた。人間は悪いほうに流れることが楽である。
 私って誘拐され体質ではないはず。こっちに来てから、簡単に連れ回されている気がした。
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