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美しい花束
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調理グッズよりも掃除道具をたくさん買う。衛生面はどこでも重要だ。
「よし、帰ろうか」
ほうら、逃亡を考えない。死人の体ではこっちにいられるのは数時間らしい。朽ちたらまた地獄に収容されるだけ。うまく逃げ切っているモノもいる。それが悪霊になったりするのだろう。
すれ違った人が姉に似ていた。その人は姉と同じちょっと内股で、創ちゃんとは似ても似つかない男性と歩いていた。
はて?
地獄に戻って、深めのお皿にオイルを垂らしてみたり、燭台を飾ってみた。
お皿を選んでいるとき凌平くんは楽しそうだった。私にとっては自分の納屋を整えることが心を保つことに似ている。DIYが得意なら床を打ち窓もつけるのに。
あっちでもこうしていたらいいのだろう。そうしたらおかしな力も発揮せずにすむのかもしれない。こうやって自分が生きやすい方法を身につけられるようになっている。
「おかえり」
と言われると、
「ただいま」
と答えてしまう。
「今日の分がまだたった」
いつになったら一心さんとこうしてキスをしないで済むのだろう。そもそも霊力が上がるとか安定するってどうやって計るの?
「人に紛れた匂いがする」
一心さんが言った。
「紛れましたから」
飼い猫を抱き締めるようにぎゅっとされた。これは好き。それが一心さんを好きということに直結しない。
お団子は好きだけど上新粉が好きという人は少ないだろう。それと同じ。
抱き締められると、抱き締めてしまう。体がそういう造りになっている。男の人って体の奥行きがある。腰上あたりに腕を回すとちょうどいい。
一心さんもそうなのだろうか。言葉を発するとこの時間が終わってしまいそうなので何も言わなかった。
ずるいな、私。このぬくもりだけ好きだからじっくりと堪能。
「よし、帰ろうか」
ほうら、逃亡を考えない。死人の体ではこっちにいられるのは数時間らしい。朽ちたらまた地獄に収容されるだけ。うまく逃げ切っているモノもいる。それが悪霊になったりするのだろう。
すれ違った人が姉に似ていた。その人は姉と同じちょっと内股で、創ちゃんとは似ても似つかない男性と歩いていた。
はて?
地獄に戻って、深めのお皿にオイルを垂らしてみたり、燭台を飾ってみた。
お皿を選んでいるとき凌平くんは楽しそうだった。私にとっては自分の納屋を整えることが心を保つことに似ている。DIYが得意なら床を打ち窓もつけるのに。
あっちでもこうしていたらいいのだろう。そうしたらおかしな力も発揮せずにすむのかもしれない。こうやって自分が生きやすい方法を身につけられるようになっている。
「おかえり」
と言われると、
「ただいま」
と答えてしまう。
「今日の分がまだたった」
いつになったら一心さんとこうしてキスをしないで済むのだろう。そもそも霊力が上がるとか安定するってどうやって計るの?
「人に紛れた匂いがする」
一心さんが言った。
「紛れましたから」
飼い猫を抱き締めるようにぎゅっとされた。これは好き。それが一心さんを好きということに直結しない。
お団子は好きだけど上新粉が好きという人は少ないだろう。それと同じ。
抱き締められると、抱き締めてしまう。体がそういう造りになっている。男の人って体の奥行きがある。腰上あたりに腕を回すとちょうどいい。
一心さんもそうなのだろうか。言葉を発するとこの時間が終わってしまいそうなので何も言わなかった。
ずるいな、私。このぬくもりだけ好きだからじっくりと堪能。
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