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デート その2
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数日が経った頃、
「犯人が見つかりました」
と閻魔様の従者が迎えに来てくれてほっとした。何日ほったらかされていたのかはわからない。
「犯人とは?」
一心さんが聞く。
「今頃、閻魔様が捕えておりますから」
花を枯らした犯人は清しん亭の女将だったらしい。
それを閻魔様が捕まえ、芯しん亭の前でうちの大女将が諫めている。
「私とは関わり合いがないのにどうして?」
紐縄で捉えられている姿か可哀想だった。
「うちとはずっと揉めているからな」
見た目は大女将とそっくりだ。お酢を垂らして花の一部を枯れさせたらしい。
「養分もわからないのにそんなので枯れるんだ」
不思議を通り越して奇妙に思えてきた。
「すごかったわよ。大立ち回りみたいで」
と麻美さんが私に耳打ちする。
「逃げようがないじゃない」
ここは門と門の間だ。壁ぬけの術でも使うのだろうか。あれは忍者か。
「そうなんだけどね」
「どうなるんだろう?」
閻魔様が刀に手をかける。まさか打ち首?
「この者の処分、そなたが決めよ」
と閻魔様が私を指さす。
「殺せー」
と周囲からは声が聞こえる。殺したって、無駄だ。ここはもう、地獄みたいなもの。それに、力のない彼女が大女将を妬む気持ちは少しわかる。そして、力のある大女将がそのせいで苦しい思いをしているのはもっと理解できる。
「釈放します。ほらみんな、仕事の時間ですよ。あなたも、立って」
私は女将さんの細腕を握って清しん亭に連れ帰った。怖くてうちの大女将の顔は見れなかった。憤慨しているだろうか。
水に流したわけじゃない。でも向かいだから知っている。彼女は毎日、客が来る前に打ち水をして、地獄なのに盛り塩までして、厚化粧をほどこし汗水たらして働いている。
「犯人が見つかりました」
と閻魔様の従者が迎えに来てくれてほっとした。何日ほったらかされていたのかはわからない。
「犯人とは?」
一心さんが聞く。
「今頃、閻魔様が捕えておりますから」
花を枯らした犯人は清しん亭の女将だったらしい。
それを閻魔様が捕まえ、芯しん亭の前でうちの大女将が諫めている。
「私とは関わり合いがないのにどうして?」
紐縄で捉えられている姿か可哀想だった。
「うちとはずっと揉めているからな」
見た目は大女将とそっくりだ。お酢を垂らして花の一部を枯れさせたらしい。
「養分もわからないのにそんなので枯れるんだ」
不思議を通り越して奇妙に思えてきた。
「すごかったわよ。大立ち回りみたいで」
と麻美さんが私に耳打ちする。
「逃げようがないじゃない」
ここは門と門の間だ。壁ぬけの術でも使うのだろうか。あれは忍者か。
「そうなんだけどね」
「どうなるんだろう?」
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「この者の処分、そなたが決めよ」
と閻魔様が私を指さす。
「殺せー」
と周囲からは声が聞こえる。殺したって、無駄だ。ここはもう、地獄みたいなもの。それに、力のない彼女が大女将を妬む気持ちは少しわかる。そして、力のある大女将がそのせいで苦しい思いをしているのはもっと理解できる。
「釈放します。ほらみんな、仕事の時間ですよ。あなたも、立って」
私は女将さんの細腕を握って清しん亭に連れ帰った。怖くてうちの大女将の顔は見れなかった。憤慨しているだろうか。
水に流したわけじゃない。でも向かいだから知っている。彼女は毎日、客が来る前に打ち水をして、地獄なのに盛り塩までして、厚化粧をほどこし汗水たらして働いている。
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